■中長期の成長戦略
酒井重工業<6358>は2021年6月に、2026年3月期を最終年度とする「中期的な経営方針」を発表した。最終目標として「企業価値・株主価値の向上」を掲げ、これを達成するために「事業の成長戦略」と「効率的な資本戦略」を推進する方針である。また、定量的な目標としては、2026年3月期に売上高300億円、営業利益31億円、ROE8%を実現し、安定的に配当性向50%(DOE4%)を維持することを目指す。なお、2022年3月期第3四半期末現時点で、これらの数値目標を据え置いている。
1. 事業戦略
(1) 国内市場:安定化及び次世代事業開発による付加価値創造
ロードローラの国内市場は既に成熟期にあることに加えて同社のシェアも高いことから、既存製品に新たな付加価値(高機能等)を付けること、つまり次世代事業開発による成長を目指す。
(2) 海外市場:シェア拡大と事業領域の拡大
海外市場においては、需要が拡大している地域(国)も多いこと、また同社のシェアも低いことから成長の余地は大きい。このため、既存市場の深耕と事業領域の拡大の2つの戦略により成長を目指す。
(3) 定量的目標
中長期的な数値目標としては、2024年3月期に売上高265億円、営業利益20億円、ROE5.5%、2026年3月期に売上高300億円、営業利益31億円、ROE8%を目指す。
2. 資本戦略
資本政策の基本方針として同社は、ROE8%を目標としてそれを支えるための株主還元を実施するとし、株主価値の向上(資本効率の改善)を掲げている。2026年3月期の最終目標として、ROE8%かつ配当性向50%、すなわちDOE4%を掲げている。
一般的に、ROEの向上のためには2つの改善が必要である。1つは言うまでもなく親会社株主に帰属する当期純利益の改善(上昇)であるが、もう1つは株主資本の抑制(必要以上に株主資本を増加させない、あるいは減少させること)である。同社では、前者の事業利益向上のためには既述のような事業戦略を推進していく計画だが、同時に必要以上に株主資本を増加させないために、「ROE3%を下回る場合は配当性向100%の還元」「ROE3%~6%の間はDOE3%の還元」「ROE6%を超えた場合は配当性向50%の還元」とする配当政策を実行する方針である。
自己株式の取得については、2026年3月期までに5~20億円規模を上限とした機動的な自己株式の取得を行うとしている。また、投資有価証券についても、事業戦略観点からの見直しを進める方針だ。なお、成長投資については、資本収益性(ROIC)を重視し、レバレッジの活用も検討するとしている。
3. ESGへの取り組み
同社では、本業を通じたSDGsやESG、脱炭素など社会的課題に積極的に取り組んでいる。ESGに関する主な取り組みは以下のとおりである。
(1) E(環境)における取り組み:カーボンニュートラル(CN)に向けた取り組み
同社の国内生産工場のCO2排出量は年間約2,000トン(内訳は、化石燃料によるCO2排出量が約1,000トン、電力消費によるCO2排出量が約1,000トン)だが、このCO2排出量の50%削減を目指す。具体的には、電力使用による間接的なCO2排出について、再生可能エネルギーを導入することで削減する方針を決定している。
(2) S(社会)における取り組み:道づくりを通じて社会事業に貢献する経営方針
同社では、道づくりを通じて世界の国土開発という社会事業に貢献する経営方針を掲げ、「労働安全」「社会貢献活動」「人的資本開発」を推進している。「労働安全」としては、緊急ブレーキ搭載型ローラを普及させることで施工現場の安全性向上を目指し、「社会貢献活動」としては道路建設という国土開発に資する技術開発、「人的資本開発」としてはダイバーシティを推進している。
(3) G(ガバナンス)における取り組み:改訂コーポレートガバナンス・コードへの対応
今般のコーポレートガバナンス・コードの改訂を踏まえ、取締役及び執行役員によって構成される同社の取締役会が備えるべきスキルを、「経営」「道路機械」「グローバル」「資本市場」「ものづくり」「マーケティング」「管理」として決定し、取締役会のスキルマトリクスとして公表している。また、取締役の指名、報酬等に係る取締役会の機能の独立性、客観性、説明責任を強化することを目的に、取締役会の下に社外取締役が過半数を占める「指名・報酬委員会」の設置を決定している。今後は、ダイバーシティの確保、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に準じた気候変動リスク対応の実施なども予定している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
<YM>
酒井重工業<6358>は2021年6月に、2026年3月期を最終年度とする「中期的な経営方針」を発表した。最終目標として「企業価値・株主価値の向上」を掲げ、これを達成するために「事業の成長戦略」と「効率的な資本戦略」を推進する方針である。また、定量的な目標としては、2026年3月期に売上高300億円、営業利益31億円、ROE8%を実現し、安定的に配当性向50%(DOE4%)を維持することを目指す。なお、2022年3月期第3四半期末現時点で、これらの数値目標を据え置いている。
1. 事業戦略
(1) 国内市場:安定化及び次世代事業開発による付加価値創造
ロードローラの国内市場は既に成熟期にあることに加えて同社のシェアも高いことから、既存製品に新たな付加価値(高機能等)を付けること、つまり次世代事業開発による成長を目指す。
(2) 海外市場:シェア拡大と事業領域の拡大
海外市場においては、需要が拡大している地域(国)も多いこと、また同社のシェアも低いことから成長の余地は大きい。このため、既存市場の深耕と事業領域の拡大の2つの戦略により成長を目指す。
(3) 定量的目標
中長期的な数値目標としては、2024年3月期に売上高265億円、営業利益20億円、ROE5.5%、2026年3月期に売上高300億円、営業利益31億円、ROE8%を目指す。
2. 資本戦略
資本政策の基本方針として同社は、ROE8%を目標としてそれを支えるための株主還元を実施するとし、株主価値の向上(資本効率の改善)を掲げている。2026年3月期の最終目標として、ROE8%かつ配当性向50%、すなわちDOE4%を掲げている。
一般的に、ROEの向上のためには2つの改善が必要である。1つは言うまでもなく親会社株主に帰属する当期純利益の改善(上昇)であるが、もう1つは株主資本の抑制(必要以上に株主資本を増加させない、あるいは減少させること)である。同社では、前者の事業利益向上のためには既述のような事業戦略を推進していく計画だが、同時に必要以上に株主資本を増加させないために、「ROE3%を下回る場合は配当性向100%の還元」「ROE3%~6%の間はDOE3%の還元」「ROE6%を超えた場合は配当性向50%の還元」とする配当政策を実行する方針である。
自己株式の取得については、2026年3月期までに5~20億円規模を上限とした機動的な自己株式の取得を行うとしている。また、投資有価証券についても、事業戦略観点からの見直しを進める方針だ。なお、成長投資については、資本収益性(ROIC)を重視し、レバレッジの活用も検討するとしている。
3. ESGへの取り組み
同社では、本業を通じたSDGsやESG、脱炭素など社会的課題に積極的に取り組んでいる。ESGに関する主な取り組みは以下のとおりである。
(1) E(環境)における取り組み:カーボンニュートラル(CN)に向けた取り組み
同社の国内生産工場のCO2排出量は年間約2,000トン(内訳は、化石燃料によるCO2排出量が約1,000トン、電力消費によるCO2排出量が約1,000トン)だが、このCO2排出量の50%削減を目指す。具体的には、電力使用による間接的なCO2排出について、再生可能エネルギーを導入することで削減する方針を決定している。
(2) S(社会)における取り組み:道づくりを通じて社会事業に貢献する経営方針
同社では、道づくりを通じて世界の国土開発という社会事業に貢献する経営方針を掲げ、「労働安全」「社会貢献活動」「人的資本開発」を推進している。「労働安全」としては、緊急ブレーキ搭載型ローラを普及させることで施工現場の安全性向上を目指し、「社会貢献活動」としては道路建設という国土開発に資する技術開発、「人的資本開発」としてはダイバーシティを推進している。
(3) G(ガバナンス)における取り組み:改訂コーポレートガバナンス・コードへの対応
今般のコーポレートガバナンス・コードの改訂を踏まえ、取締役及び執行役員によって構成される同社の取締役会が備えるべきスキルを、「経営」「道路機械」「グローバル」「資本市場」「ものづくり」「マーケティング」「管理」として決定し、取締役会のスキルマトリクスとして公表している。また、取締役の指名、報酬等に係る取締役会の機能の独立性、客観性、説明責任を強化することを目的に、取締役会の下に社外取締役が過半数を占める「指名・報酬委員会」の設置を決定している。今後は、ダイバーシティの確保、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に準じた気候変動リスク対応の実施なども予定している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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