「マーケットリーダー」強みにDX時代での飛躍目指す
3848:データ・アプリケーション
代表取締役社長 安原武志氏
データ・アプリケーション <3848> [JQ]が新たな成長路線に踏み出している。同社は大企業向けを中心に、契約や受発注などのデータを企業間でやり取りする際に使うEDI(電子データ交換)ソフトの開発を手掛け、この分野でマーケットリーダーとしての地位を築いている。今後いっそう加速していくことになるデジタルトランスフォーメーション(DX)の流れを捉えるべく、EDI事業を軸とした新たな市場開拓に乗り出しているほか、新製品開発にも取り組むなど更なる業容拡大に余念がない。安原武志社長に経営戦略を聞いた。(聞き手・井出勇斗)
安定成長モデルに転換
──まずは、改めて事業内容についての説明をお願いします
創業当初はシステムインテグレーター(SIer)として事業を展開し、その後EDIソフトの専業ベンダーとして今に至ります。個々の企業に寄り添ったカスタマイズ開発や、きめ細かなサポート対応を行うことで、これまで顧客からの支持を獲得してきました。また、販売パートナーからも厚い信頼を得ており、こうしたことが市場シェア獲得につながっているのだと思います。EDI市場はIT分野のなかでもかなりニッチで、大手企業が参入してこない領域だったということも有利に働いたと思います。
──直近の第3四半期累計業績(売上高16億9300万円、営業利益3億1500万円)はいかがでしたでしょうか
昨年11月に今22年3月期業績予想の上方修正を発表しており、この通期計画に向けて順調に推移しています。売り切り型からサブスクリプション型へとビジネスモデルの転換を進めており、安定的に売り上げ計上できる経営体質に変わってきました。
──サブスク推進に向けた取り組みについてお聞かせください
まずサブスク型のメリットとして初期費用が少なく始められる、そして追加料金なしで最新版に乗り換えられるという点が挙げられます。当社としてはこの点を強みにサブスク型を推進することが将来的な利益につながると考え、これについて販売パートナーと意思疎通を図るということを進めています。当社は国内大手ベンダーやSIerなど代理店を通じた販売施策を展開していることから、パートナー企業との連携は重要になります。
社内外のデータを一括管理、「ACMS Apex」で市場開拓加速へ
──ご自身のことについてお伺いしたいと思います。入社されたのが2009年ということで、そこに至った経緯についてお聞かせください
大学を出て、初めて入ったのが日商エレクトロニクスという商社系のIT企業でした。その後日本オラクルでの経験を経て、09年に当社に入社しました。入社した当時、既にEDIの需要は大きな伸びが見込めないものとなっていて、会社として次の成長の柱を打ち立てていかなければならないという時期にありました。そして、いま戦略製品として掲げている「ACMS Apex(エーシーエムエス エイペックス)」は、まさにそういったところを意識した製品になっています。
──「ACMS Apex」について、昨年に策定された中期経営計画ではデータ・インテグレーション市場の獲得に向けた製品として位置づけられています。具体的にどういったものなのでしょうか
これまでのEDI分野では企業間の情報のやり取りをつかさどっており、データを変換、編集・加工して最終的に社内の業務システムに連携する、というところまでを担っていました。これに対し、データ・インテグレーション分野では企業と企業がつながる部分だけではなく、その先に連なる企業内のさまざまな仕組みまでを一括で手掛けていくことになります。「ACMS Apex」を使えば社内外のデータのやり取りをワンストップで行うことができ、管理も容易です。他社製品と比べ価格優位性があるほか、24時間の保守サポートも行っており、これを強みに事業展開を加速させていきます。
──販売拡大に向けた取り組みについてお聞かせください
企業も一度導入したものをすぐに変えるということはしませんので、システム更改のタイミングを確実に捉えていくことが重要になります。そのためには製品の良さを訴求し続け、企業との関係性を深めていくことが大事で、これに向けて専門の営業部隊を設置しました。当社自身でまず製品の導入成功事例を出し、パートナー企業と販売ノウハウの共有を図っていきたいと考えています。
──中計ではこのほか提携施策についても触れられています
昨年、テクノスジャパン <3666> と業務提携しました。製品販売などで協業しているほか、両社で月1回会合を開いて提携のあり方について検討を進めています。今後、テクノスジャパンと似た業態を持つ企業と協業する可能性もあります。
──中計の業績目標では、24年3月期に売上高25億円、営業利益3億5000万円を掲げておられます
この中計3カ年は、中長期的な成長に向けたファーストステップと位置づけています。売り上げを伸ばしていくことはもちろん、そのための先行投資も増やしていこうと考えています。営業利益目標について今期予想(3億8000万円)のほうが上回っていますが、これはコロナ禍の長期化に伴う経費の未消化が要因としてあります。あまり利益が下がってはいけないものの今後前向きに投資を行っていくとの方針のもと、伸び幅を保守的に見積もって3億5000万円としています。
──株主還元方針についてお聞かせください
DOE(株主資本配当率)3.5%を目安に安定的な配当を実施していきます。収益の増減によって無配にするというようなことは考えていません。歴代の社長もこの方針でやってきているので、それを引き継ぎます。
相次ぐ追い風材料、新製品リリースも
──今年1月に改正電子帳簿保存法が施行されました。この法改正は事業環境に追い風となるのでしょうか
今年施行された改正電帳法をはじめ、23年10月から始まるインボイス制度はプラスの要素として働くと考えています。法律や制度の改正によるシステム更改はEDIの刷新ですとか、それに伴う社内連携の仕組みの変更などいろいろと付随してくるので、当社にとっては追い風です。実際、こうしたことに関する問い合わせも増えつつあります。
──24年の固定電話回線の提供終了に伴い、この回線を用いた従来型のEDIが使えなくなる「EDIの2024年問題」というのがあります。これについてはいかがでしょうか
従来型EDIからインターネットを使ったEDIへ置き換わっていくことになりますが、なかでも「Web-EDI」の需要がものすごく増えてくると思っています。Web-EDIは比較的操作が簡単で使いやすく、これまで従来型EDIを利用してきた多くの中小企業が導入しやすいためです。いま、新しいWeb-EDI製品の開発を行っています。大企業から中堅規模の企業までをカバーできる製品になっており、顧客層のすそ野が広がることになります。これに関して私自身は非常に期待しています。
◇安原武志(やすはら・たけし)
データ・アプリケーション代表取締役社長執行役員。兵庫県神戸市生まれ。大阪工業大学工学部卒。日商エレクトロニクスの営業職を経て、1995年に日本オラクル入社。2009年にデータ・アプリケーション入社後は、さまざまな営業・経営施策を立案・実行し、営業本部長や執行役員を歴任。15年取締役。20年4月から現職。
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