今週は、米国の長期金利と株価の動きに注目しながら落ち着きどころを探る展開

著者:出島 昇
投稿:2022/01/11 17:29

先週は、週前半29388円まで上昇するも、米株急落を受け、一時28293円まで下げる

先週の株価の動きは、日経平均は昨年の8月20日の26954円を安値とし、9月14日の30795円を高値とする三角保ち合いを形成し、この中で28000~29000円のレンジの中で、29000円水準を上値にもみあい、上放れのタイミングをみはからっているところとしました。昨年12月28日の29121円を突破して、11月4日の29880円を超せば3万円台回復も期待できるとしました。

そのためには、米国株式の上昇が継続することが前提でしたが、1月5日(水)のFOMC議事録公開で、これまでより、よりは早い利上げ開始や、より早い時期のテーパリングがタカ派側より主張されていたのが分かると米国株式は、3指標そろって急落となりました。これを受けて5日(水)には29388円まで上昇し、終値29332円だったものが、6日(木)には、▲844円の28487円の急落となり、週末は28293円まで下げて終値は28478円となりました。

柴田罫線のチャート分析では、28000~29000円のレンジを想定していましたが、上限近辺から下限近辺まで下げています。

正月連休明けの4日(火)は、前日の米国市場で、NYダウ、S&Pが史上最高値を更新する上昇となったことで、日経平均は△306円の29098円で寄り付き、一時△532円の29323円まで上昇し、終値は△510円の29301円と3日ぶりに大幅反発し、29000円台を回復しました。昨年11月25日以来の高値水準となりました。

5日(水)は、前日のNYダウは△214ドルの36799ドルと連日の高値更新となったものの、ナスダックが大幅反落し、これを受けて日本市場は、ハイテク株が売られ、一時▲97円の29204円まで下げましたが、後場、後半強含み△30円の29332円の小幅続伸となりました。

6日(木)は、前日の米国市場では、FOMC議事録が公開されましたが、この中でタカ派姿勢がより一層鮮明となり、市場では、3月の利上げ開始を見込む動きや年内の利上げ回数も3~4回と多い観測があり、又、テーパリングの前倒しの見方もあり、3指標そろって大幅下落となりました。これを受けて日経平均は、▲195円の29136円で寄り付くと先物にまとまった売りが入って下げ幅を拡大し、さらにオミクロン株の感染拡大を嫌気し、さらに米利上げ観測の早まりを警戒して▲844円の28487円で引けました。

週末7日(金)は、前日の大幅安の反動から△223円の28711円で寄り付き△325円の28813円まで上昇するものの、その後は手仕舞い売り優勢となって一時▲194円の28293円まで下げましたが、その後は下げ渋り大引け近くに持ち直し▲9円の28478円で終わりました。

週末の米国市場では、注目の雇用統計の発表がありました。この中で、非農業部門雇用者数は市場予想の40.0万人増が19.9万人増と大きく下回ったものの、平均時給が予想以上に上昇し、失業率は2020年2月以来の低水準まで下げました。

結果的に賃金上昇や失業率の改善を受けてインフレ高進懸念を高め、10年債利回りが上昇し、ハイテク株主体のナスダックがS&Pとともに4日続落となりました。NYダウは一時△146ドル高となりましたが、終値では▲4.8ドルとほぼ前日と変わらずで引けました。シカゴの日経先物は▲45円の28405円でした。

今週は、米国の長期金利と株価の動きに注目しながら落ち着きどころを探る展開

新年相場は、好発進と思われましたが、FOMCの議事録にタカ派の利上げやテーパリングのより早い実行を求める主張があったことで、米国の金融引締めの不透明感が米国株の大幅下落となり、これを受けて日経平均も目先の下値を切って落ち着きどころを探る展開となってきています。

米国では、利上げについては、3月の開始が有力視され、年内の利上げ回数にしても、これまで想定されていた3回を上回る水準が予想されます。そのため長期金利の上昇で、ハイテク株が売られており、日本市場にも影響を与えていますので、米国市場の様子を見ながら日経平均の落ち着きどころを探る展開となります。

そのためにも、11日(火)のパウエル議長、13日(木)のブレイナード理事の指名承認公聴会が注目となります。又、12日には12月消費者物価指数の公表が控えており、これが予想以上の上昇や、また原油相場の高騰懸念もあります。

今週の日経平均は上記の米国市場の状況をみながら、引き続きオミクロン株の感染拡大も注視しながらの相場となります。

現在の柴田罫線の形では、先週、分析したように日経平均は昨年8月20日の26954円を安値とし、9月14日の30795円を高値とする三角保ち合いとなっており、先週5日(水)に29388円の高値をつけて上放れゾーンに入りました。本格的な上放れは、再び29388円をぬけた時ですが、ここをぬけるにはもう少し時間がかかるとしました。

結局、5日のNYダウの急落で、昨年8月の安値26954円からの三角保ち合いが続いていることになります。三角保ち合いの下値ポイントである12月1日の27594円、12月20日の27893円水準までは、三角保ち合いの中のもみあいゾーンとみることができます。予想レンジを27800~29000円とします。この中で安いところで買って2月以降の本格上昇を待つというシナリオです。

本日11日(火)は、寄り付きは、米金融引き締めへの警戒感や、国内での新型コロナウイルスの感染拡大が重しとなって売りが先行し、持ち直す場面もありましたが買いは続かず、株価指数先物売りを交えて下げ幅を拡大し、前場には28089円まで下落しました。その後は後場にかけて下げ渋りましたが戻りは限定的で、大引けにかけて28200円をはさんでもみあいました。今日はグロース(成長)株中心に軟調となり相場の重しとなった模様です。

(指標)日経平均

先週の予測では、28000~29000円のレンジの中で、上に行く場合は29500円をぬけて11月4日の29880円を試すことになりますが、それには時間がかかるとしました。
結局、1月5日に29388円まで上昇するものの、29500円を突破できずに米国株の急落に追随し、6日(木)は、▲844円の28487円で終わりました。

ここから戻すかどうかは米国の金融政策でFOMCの議事録にあるように、利上げを早めるか、テーパリングを早めるかどうかにかかります。早めるようだと織り込むためには12月1日の27594円をまず試しにいくことになります。

今週も引き続き、米金融政策を巡る動きとオミクロン株の感染拡大の動向に注目が集まります。

FRBの早期利上げに対する警戒感が高まり、米株式が下落すれば日経平均も連動することになります。その場合は、三角保ち合いの中で先週末に28293円まで下げており、次は28000円を守れるかどうかとなります。さらに下げても27800円水準までは三角保ち合いの中の動きとなります。


 

(指標)NYダウ

年始は順調にスタートしたNYダウは、3日(月)は△246ドル、4日(火)は△214ドルの36799ドルと2日連続の最高値更新でスタートするものの、5日(水)にFOMC議事録公開の中で、タカ派による早い時期の利上げ、テーパリングが主張されていたことで、米国3指標は急落となりました。

6日(木)にNYダウは36952ドルとザラ場で最高値をつけて▲392ドルの36407ドルでした。金融引締めの程度の不透明感が出て、いったんそれを織り込む動きとなっています。
週末の12月雇用統計での賃金上昇と失業率低下を受けてインフレ懸念が高まり、グローズ株中心のナスダックが下落しました。

今週は、米国では12月消費者物価指数や生産者物価指数が発表されます。又、今月の25~26日には今年、最初のFOMCも控えており、重要イベントが続いています。イベント前には積極的な売買は手掛けづらく全体的にこう着感の強い展開となりそうです。


 

(指標)ドル/円

先週の為替(ドル/円)の動きは、週前半は仕掛け期待でドルが買われ、1月4日は1ドル=116.20円まで上昇し、NYダウ、S&Pは連日の史上最高値更新となりました。週半ばまでは116円水準でもみあっていましたが、7日のNY為替市場では、115.93円まで上昇後、12月雇用統計で失業率がパンデミック前の2020年2月来の4%割れとなり、又、平均時給の伸びが予想を上回ったことで、インフレ懸念からドル買いが優勢となりましたが、非農業部門雇用者数の伸びが予想のほぼ半分となったことで、ドル売り優勢となり115.53円まで下落しました。

今週は基本的には、FOMC議事録の公開をきっかけに早期の金利引き上げと引き上げ回数の増加を織り込むため、ドル高方向にあるものの、インフレ懸念が高まって株価が下落すればドルが売られるという側面もあります。
当面は米金融当局の金融政策の方向をみながらもみあいとなりそうです。
 

 

配信元: みんかぶ株式コラム