■業績動向
1. 2022年3月期第2四半期累計業績の概要
デリカフーズホールディングス<3392>の2022年3月期第2四半期累計の連結業績は、売上高で前年同期比29.0%増の18,117百万円、営業損失で709百万円(前年同期は1,354百万円の損失)、経常損失で611百万円(同1,015百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純損失で768百万円(同776百万円の損失)となった。
外食業界向けは、コロナ禍による政府の緊急事態宣言の断続的な発出やまん延防止等重点措置により、店舗の営業自粛や営業時間の短縮が続いた影響で減収となったものの、コロナ禍に強い外食や給食、量販・小売業界での新規顧客開拓並びに既存顧客との取引深耕が図れたこと、また2021年3月期下期から開始したミールキット事業の貢献等により、売上高は2ケタ増収となった。ただ、コロナ禍前の水準(2020年3月期第2四半期累計)と比較するとまだ9割程度の水準にとどまっている。
売上原価率は前年同期の82.9%から81.9%と1.0ポイント低下した。商品の仕入率については前年同期が好天候に恵まれたのに対して、今年は夏の長雨や9月の日照不足により野菜の生育状況が遅れ、価格高騰や一部海外から高コストで空輸による調達を行った影響などにより0.4ポイント悪化したが、増収効果による固定費率の低下が改善要因となった。特に、人件費については各事業拠点で効率的なシフト体制を組めたことが改善要因となった。販管費率は前年同期の26.7%から22.1%と4.6ポイント低下した。増収効果による人件費を含めた固定費率の低下に加えて、物流費率もより一層の効率体制を推し進めた効果で0.2ポイント改善した。
営業外収支が前年同期比で239百万円悪化したが、このうち256百万円が雇用調整助成金収入の減少によるものとなっている。今回の収益悪化局面においても同社は雇用を維持しており、2021年9月末時点の従業員数は前年同期比50名増加の640名、臨時雇用者数は同159名増加の1,816名となっている。
(1) 部門別・業態別売上動向
部門別売上高を見ると、カット野菜は前年同期比32.6%増の8,644百万円、ホール野菜は同12.4%増の6,587百万円、その他(ミールキット含む)は同73.7%増の2,886百万円とすべての部門で2ケタ増収となった。カット野菜(真空加熱野菜含む)は、人手不足と簡便に調理できる利便性の高さを背景に外食業界で利用が広がっているほか、量販・小売店向けやコンビニエンスストア、コロナ禍に強い外食業界向けでの採用が進み、コロナ禍前の水準まで回復した。ホール野菜がコロナ禍前に対して7割程度の回復にとどまっているのとは対照的な動きとなっている。また、その他部門の増収のうち半分以上はミールキット事業の貢献によるものとなっている。
業態別売上高で見ると、主力の外食業界向けはコロナ禍の影響により前年同期比5.6%減の8,321百万円となった。ファストフード向けは新規顧客の貢献により増収となったものの、居酒屋、ファミリーレストラン向けの落ち込みが響いて業態別では唯一の減収となった。そのほかの業態についてはいずれも積極的な営業活動に取り組み、新規顧客の開拓や既存顧客向けの取引深耕が進んだことで大幅増収となった。また、これら業態については、コロナ禍前の売上水準に対して上回っている点も注目される。顧客側でもコスト削減のため、地域別で異なっていた取引業者を一本化する動きがあり、同社の顧客内シェアが上昇しているものと考えられる。当第2四半期累計における新規顧客及び既存顧客との取引深耕により獲得した売上高は1,815百万円となっており、前年同期の1,228百万円に対して約1.5倍となるペースとなっている。
ミールキット事業は、2020年11月にワタミ<7522>と業務提携し、ワタミの長崎工場を譲受して開始した事業となる。2021年3月より製造販売を開始し、売上高の大半は「ワタミの宅食」サービスを通じて消費者に販売しており、当第2四半期累計の売上高は736百万円となった。また、BtoC事業はコロナ禍で契約産地の支援と雇用を維持するため、またフードロスの削減に取り組むために2020年4月より開始した事業となる。当初はドライブスルー形式で野菜のBOX売りから開始し、同年7月には「ベジマルシェ」ブランドのECサイトをオープンして販売を開始した。また、同年9月には同業の(株)フードサプライ等と合弁で(株)青果日和研究所(同社出資比率は45%)を設立し、「青果日和」ブランドで「青果BOX」の定期購買サービスを開始した。そのほかにも大手百貨店のECサイトで「青果日和」ブランドのスムージーキットやカットフルーツ等を販売しており、当第2四半期累計の売上高は362百万円となった。
(2) 事業セグメント別業績
青果物事業の売上高は前年同期比28.3%増の17,906百万円、セグメント損失(経常損失)は667百万円(前年同期は1,009百万円の損失)となった。前述したように一定水準まで回復したものの、2022年3月期第2四半期累計期間はコロナ禍による緊急事態宣言発出の影響もあり、黒字化するまでには至らなかった。
物流事業の売上高は前年同期比23.5%増の1,623百万円、セグメント利益は1百万円(前年同期は67百万円の損失)と黒字に転じた。グループ内取引の拡大や、九州に配送エリアが拡大したことや単価アップの効果により損益が改善した。また同事業では、トラックの空きスペースを利用して他社商品の受託物流サービスなども行っている。これら外部顧客向けの売上高も前年同期比206.6%増の172百万円と順調に拡大し、利益改善要因となっている。従来は各種資材の受託物流からスタートしたが、弁当の受託物流も都内で新たにスタートするなど、取り扱う商材も年々増加している。
研究開発・分析事業の売上高は前年同期比47.3%増の49百万円、セグメント利益は同45.7%増の4百万円となった。外部向けセミナーや分析事業の受託件数はコロナ禍の影響で減少したものの、JAXA補助事業やスマート農業事業など国家プロジェクトによる研究費等の収入が増加し増収増益となった。JAXA補助事業とは、「資源循環社会に向けた自立循環型水耕栽培システム(地産地消型探査技術)共同研究事業」のことで、独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)産業技術総合研究所、千葉大学、菱熱工業(株)の産官学4機関と連携した共同研究プロジェクトとなる(事業実施期間は2020年11月~2022年10月)。同社グループでは、野菜残渣の提供、残渣分解装置の設置・稼働、野菜残渣や液化堆肥、環境浄化型植物等の評価・分析を行っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<EY>
1. 2022年3月期第2四半期累計業績の概要
デリカフーズホールディングス<3392>の2022年3月期第2四半期累計の連結業績は、売上高で前年同期比29.0%増の18,117百万円、営業損失で709百万円(前年同期は1,354百万円の損失)、経常損失で611百万円(同1,015百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純損失で768百万円(同776百万円の損失)となった。
外食業界向けは、コロナ禍による政府の緊急事態宣言の断続的な発出やまん延防止等重点措置により、店舗の営業自粛や営業時間の短縮が続いた影響で減収となったものの、コロナ禍に強い外食や給食、量販・小売業界での新規顧客開拓並びに既存顧客との取引深耕が図れたこと、また2021年3月期下期から開始したミールキット事業の貢献等により、売上高は2ケタ増収となった。ただ、コロナ禍前の水準(2020年3月期第2四半期累計)と比較するとまだ9割程度の水準にとどまっている。
売上原価率は前年同期の82.9%から81.9%と1.0ポイント低下した。商品の仕入率については前年同期が好天候に恵まれたのに対して、今年は夏の長雨や9月の日照不足により野菜の生育状況が遅れ、価格高騰や一部海外から高コストで空輸による調達を行った影響などにより0.4ポイント悪化したが、増収効果による固定費率の低下が改善要因となった。特に、人件費については各事業拠点で効率的なシフト体制を組めたことが改善要因となった。販管費率は前年同期の26.7%から22.1%と4.6ポイント低下した。増収効果による人件費を含めた固定費率の低下に加えて、物流費率もより一層の効率体制を推し進めた効果で0.2ポイント改善した。
営業外収支が前年同期比で239百万円悪化したが、このうち256百万円が雇用調整助成金収入の減少によるものとなっている。今回の収益悪化局面においても同社は雇用を維持しており、2021年9月末時点の従業員数は前年同期比50名増加の640名、臨時雇用者数は同159名増加の1,816名となっている。
(1) 部門別・業態別売上動向
部門別売上高を見ると、カット野菜は前年同期比32.6%増の8,644百万円、ホール野菜は同12.4%増の6,587百万円、その他(ミールキット含む)は同73.7%増の2,886百万円とすべての部門で2ケタ増収となった。カット野菜(真空加熱野菜含む)は、人手不足と簡便に調理できる利便性の高さを背景に外食業界で利用が広がっているほか、量販・小売店向けやコンビニエンスストア、コロナ禍に強い外食業界向けでの採用が進み、コロナ禍前の水準まで回復した。ホール野菜がコロナ禍前に対して7割程度の回復にとどまっているのとは対照的な動きとなっている。また、その他部門の増収のうち半分以上はミールキット事業の貢献によるものとなっている。
業態別売上高で見ると、主力の外食業界向けはコロナ禍の影響により前年同期比5.6%減の8,321百万円となった。ファストフード向けは新規顧客の貢献により増収となったものの、居酒屋、ファミリーレストラン向けの落ち込みが響いて業態別では唯一の減収となった。そのほかの業態についてはいずれも積極的な営業活動に取り組み、新規顧客の開拓や既存顧客向けの取引深耕が進んだことで大幅増収となった。また、これら業態については、コロナ禍前の売上水準に対して上回っている点も注目される。顧客側でもコスト削減のため、地域別で異なっていた取引業者を一本化する動きがあり、同社の顧客内シェアが上昇しているものと考えられる。当第2四半期累計における新規顧客及び既存顧客との取引深耕により獲得した売上高は1,815百万円となっており、前年同期の1,228百万円に対して約1.5倍となるペースとなっている。
ミールキット事業は、2020年11月にワタミ<7522>と業務提携し、ワタミの長崎工場を譲受して開始した事業となる。2021年3月より製造販売を開始し、売上高の大半は「ワタミの宅食」サービスを通じて消費者に販売しており、当第2四半期累計の売上高は736百万円となった。また、BtoC事業はコロナ禍で契約産地の支援と雇用を維持するため、またフードロスの削減に取り組むために2020年4月より開始した事業となる。当初はドライブスルー形式で野菜のBOX売りから開始し、同年7月には「ベジマルシェ」ブランドのECサイトをオープンして販売を開始した。また、同年9月には同業の(株)フードサプライ等と合弁で(株)青果日和研究所(同社出資比率は45%)を設立し、「青果日和」ブランドで「青果BOX」の定期購買サービスを開始した。そのほかにも大手百貨店のECサイトで「青果日和」ブランドのスムージーキットやカットフルーツ等を販売しており、当第2四半期累計の売上高は362百万円となった。
(2) 事業セグメント別業績
青果物事業の売上高は前年同期比28.3%増の17,906百万円、セグメント損失(経常損失)は667百万円(前年同期は1,009百万円の損失)となった。前述したように一定水準まで回復したものの、2022年3月期第2四半期累計期間はコロナ禍による緊急事態宣言発出の影響もあり、黒字化するまでには至らなかった。
物流事業の売上高は前年同期比23.5%増の1,623百万円、セグメント利益は1百万円(前年同期は67百万円の損失)と黒字に転じた。グループ内取引の拡大や、九州に配送エリアが拡大したことや単価アップの効果により損益が改善した。また同事業では、トラックの空きスペースを利用して他社商品の受託物流サービスなども行っている。これら外部顧客向けの売上高も前年同期比206.6%増の172百万円と順調に拡大し、利益改善要因となっている。従来は各種資材の受託物流からスタートしたが、弁当の受託物流も都内で新たにスタートするなど、取り扱う商材も年々増加している。
研究開発・分析事業の売上高は前年同期比47.3%増の49百万円、セグメント利益は同45.7%増の4百万円となった。外部向けセミナーや分析事業の受託件数はコロナ禍の影響で減少したものの、JAXA補助事業やスマート農業事業など国家プロジェクトによる研究費等の収入が増加し増収増益となった。JAXA補助事業とは、「資源循環社会に向けた自立循環型水耕栽培システム(地産地消型探査技術)共同研究事業」のことで、独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)産業技術総合研究所、千葉大学、菱熱工業(株)の産官学4機関と連携した共同研究プロジェクトとなる(事業実施期間は2020年11月~2022年10月)。同社グループでは、野菜残渣の提供、残渣分解装置の設置・稼働、野菜残渣や液化堆肥、環境浄化型植物等の評価・分析を行っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<EY>
関連銘柄
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3392
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501.0
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-1.0
(-0.19%)
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7522
|
1,040.0
(11/22)
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+10.0
(+0.97%)
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