ティア Research Memo(7):出店拡大により2024年9月期に売上高147億円、経常利益10億円を目指す

配信元:フィスコ
投稿:2021/12/15 15:17
■今後の見通し

3.中期経営計画
ティア<2485>は新たに2022年9月期からスタートする3カ年の中期経営計画を発表した。スローガンとして「ティアを越える新生ティア!!」を掲げた。2024年9月期の業績目標は売上高で14,720百万円、営業利益で1,030百万円、経常利益で1,020百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で610百万円とした。葬儀件数は年率4%台の伸びを見込んでいる。既存店については横ばいとし、新店効果による増加分で拡大していく前提としている。また、葬儀単価についてはコロナ禍の影響が2023年9月期には緩和され、2023年9月期は前期比で5.5%増の888千円を見込んでいる。このため、2023年9月期については売上高で前期比10.8%増、営業利益で同37.0%増と成長が加速する計画だ。

業績目標を達成するための重点施策として以下の4点に取り組んでいく方針だ。

(1) 直営・FC会館の計画的な出店と既存会館の持続的な成長
出店計画について、直営店についてはドミナント戦略に基づき年間6~7店舗の出店とリロケーション・閉店1店舗を行い、2024年9月期末で94店舗を計画している。中核エリアとなる中部地区では多様な出店フォーマットによる出店継続(年間4~5店舗)と営業力強化により地域内シェアの拡大を進めていく。中部地区では葬儀会館と家族葬ホールの2形態で出店を進めているが、次世代型店舗の企画・開発も進めている。感染防止対策を徹底的に施し、安心安全に会葬者が参列できる施設や、先進技術を活用した施設など高付加価値サービス提供型の店舗を想定しており、葬儀単価の引き上げに向けた施策の一つともなる。

関東地区では今後3年間で埼玉県下に4店舗の出店を計画している。現在埼玉県下では越谷市、川口市に2店舗を出店し、いずれも稼働率は高水準で収益貢献している。2013年以来、地道に地域でのイベント活動などを行い会員獲得に努めてきた結果で、ドミナント出店によりさらなる売上拡大を目指す。一方、東京都下で進めてきた葬儀相談サロンについては、現在出店している9店舗の収益力向上に注力していく。売上規模は9店舗で約2.5億円と葬儀会館1店舗分の規模まで成長しており、利益も本社経費負担を除いたベースでは黒字化しているが、さらなる出店を進めていくには人的リソースの拡充が必要で、その体制が整うまでは新規出店は様子見とする。一方、関西地区では今後3年間で大阪府下に3店舗の出店を計画しており、事業基盤をさらに拡大していく方針だ。

FC事業においては業務支援体制の整備や人財育成などFC本部の機能を強化し、新規加盟企業の開拓を推進していく。FC店舗については年間6店舗ペースでの増加を見込み、2024年9月期末で73店舗を計画している。ただ、FC店舗数については、FC企業の意向次第となるため流動的となる。

(2) 中核エリアのシェア向上にこだわった営業促進の実施とマーケティング力の向上
中核エリアでのシェア向上にこだわった営業戦略やブランド戦略を積極的に展開していく。同社では名古屋市内の斎場シェアを約26%まで拡大してきたが、当面の目標として30%を目指している。また、その他の愛知県下でもシェアを拡大していくほか、三重県の一部エリアにも進出していく計画となっている(2021年10月にFC店舗を1店舗買取り、リニューアルオープンした)。

営業戦略としては、価格訴求力を高めたテレビCMや中吊り広告、折込チラシとWeb広告専用サイトのコンテンツを拡充、連携させることで葬儀受注の獲得導線を強化すると同時に、コンタクトセンターのオペレーションについても引き続き強化していくことによって、葬儀受注率のさらなる向上を図っていく。また、潜在顧客の取りこぼしをなくすため、会員の状況に合わせた最適なアプローチやスムーズな会館案内、最適なタイミングでのアフターフォロー(法要等の案内)等をコンタクトセンターで一括して行うための「顧客情報一元管理システム」を2022年9月期中に稼働する予定となっている。従来、各部署で個別に管理していた顧客情報をコンタクトセンターで一元管理することで顧客への最適なサービス提供が可能となるだけでなく、業務効率の一段の向上が期待される。システム投資額としては約1億円を予定している。

ブランド戦略ではWebマーケティングの強化によって、インターネットからの会員獲得や葬儀受注獲得を推進していくほかPR・IR活動の継続的な実施による日本全国を対象とした認知度向上を図っていく。また、新たにマーケティング企画室を設置し、ESGやSDGs経営に向けた具体的な取り組み内容や目標などについても今後策定していくことにしている。

(3) 葬儀付帯業務の内製化拡大と行動力と分析能力を高めたM&A
同社はここ数年、葬儀付帯業務の内製化を推進することで売上原価率の低減に取り組んできたが、内製化率の引き上げ余地はFC店舗も含めてまだあると見ており、今後も継続的に取り組んでいく方針となっている。具体的には、中部地区、関西地区において葬儀運営スタッフとなるセレモニーアシスタントやセレモニーガードの派遣エリアを拡大していくほか、生花事業の取り扱い店舗拡大、湯灌・エンバーミングの業務エリア拡大に取り組んでいく。また、葬儀後のアフターサービスとして墓石の販売にも注力していく考えだ。このため、内製化率の拡大にあたっては、人財の確保・教育が順調に進むかどうかが鍵を握ることになる。

葬儀業界の環境が変化するなかで、今後はM&Aの動きも活発化してくるものと予想される。このため、同社ではM&A戦略も成長戦略の一つとして位置付けている。従来、M&Aについてはティアサービスの1件のみにとどまっていたが、今後は能動的な情報収集を行い、M&A関連の情報に関する積極的な行動力と分析能力の向上を図ることで、適正な判断のもとM&Aを実行していく方針となっている。

(4) 計画に則した人財確保・育成と次世代基幹システムの構築
人財戦略のうち、新卒採用に関しては3年間で65名の採用を計画している。人財育成にあたって、新卒社員は早期育成を目的とした12ヵ月間の教育プログラムを実施しており、また、既存社員については施行品質の向上を目的とした研修に加えて、管理職候補育成のための研修を実施している。また、教育研修施設「THRC」では専門講師8名の稼働状況やリソースの配分状況を時間単位でデータ収集しており、これらデータを可視化し分析することで、教育研修に対する効率の向上にも取り組んでいく。

ICT戦略として、次世代基幹システムの構築を2023年9月期からスタートする予定となっている。ハード・ソフトの充実による多様な働き方への対応や、重大インシデントにつながりかねない出来事や状況を早期に発見できる検知システムの導入、情報セキュリティ対策の強化などに取り組んでいく。また、情報セキュリティに関する専門知識を有する人財の確保や、情報セキュリティ体制強化に向け、社員に対する教育なども実施していく。

(5) 事業リスク
事業リスクとしては、葬儀単価の動向が挙げられる。核家族化や少子化の進展により葬儀スタイルも家族葬など小規模に済ませるケースが今後も増加する可能性があり、こうした領域では顧客獲得競争も激しいため、葬儀単価が回復しないリスクも想定しておく必要がある。ただ、葬儀を単なる「哀悼の儀式」としてだけではなく、「哀悼と感動を与える儀式」として顧客に感謝される「究極のサービス」を提供していくことで他社との差別化は可能と弊社では考えており、今後も店舗数の拡大とサービス品質の維持向上を図りながらシェアを拡大していくことで、中長期的に業績は安定成長が続くものと予想している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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