今週は、アフリカ発の新型コロナ変異株の影響を見極めるところです

著者:出島 昇
投稿:2021/11/29 18:47

先週は、週末に新型コロナの新たな変異株出現報道で暴落

先週の予測では、日経平均は引き続き「近くて遠い3万円」が続くとし、29200~30000円のボックス相場の中の動きを想定しました。日米ともに休日を挟んでおり、上昇のリズムがでるのは難しいとしました。
今年の2月16日に30714円の高値をつけてからは、8月20日の26954円を安値の底に、10月6日の27293円、11月11日の29040円と下値を切り上げてきました。それを考えると11月は高いというアノマリーだと29040円は切らずに先週末から12月にかけて3万円台を期待していました。

ところが、週末の26日(金)は、一時▲893円の28605円まで下げ、終値は▲747円の28751円となりました。誰もが予想しなかった大きな下げでした。

22日(月)は、前週のNYダウ安を受け、▲203円の29542円まで下落しましたが、売り一巡後はプラスに転換し、△28円の29774円でひけました。

23日(火)は、祝日で休場でしたが、休みのの間にナスダックが大きく下げたことで、ハイテク株中心に売られ、ハイテク株の下落要因である早期金融引締め懸念が日本のハイテク株にも広がり、24日(水)は、一時▲562円の29212円まで下げ、終値は▲471円の29302円となりました。

25日(木)は、ナスダックが3日ぶりに反発して、ハイテク株も戻したことで、日経平均は△196円の29499円と反発しました。この日はアメリカは感謝祭で休場でした。

26日(金)の日経平均は、一時▲893円の28605円まで下げ、終値は▲747円の28751円と暴落しました。10月25日の28472円の下値ポイントはかろうじて守りました。

この日の暴落の要因は、南アフリカで新型コロナの新たな変異株が検出されたと報道されたことでした。英国保健当局は、「最も懸念される変異」との見方を示したことでパニック状態となりました。ただし、この日は香港ハンセン指数の急落の他、原油や銅の先物も売られグローバルリスクが広がる兆しもみせています。

米国株式は、NYダウが調整的な動きをしていたことで、米国株全体も調整気味の動きが出てくるかもしれません。

26日(金)の米国市場は、感謝祭の翌日で午後1時までの短縮取引となりましたが、南アフリカで見つかった新しい新型コロナ変異株への懸念から全面安となり、NYダウは一時▲1054ドルまで下落し、終値は▲905ドルとなりました。

NYダウは3週続落となり、すでに調整に入っていたことを示しています。ナスダック▲353P、S&P▲106Pと3指標そろって大幅下落となりました。シカゴの日経先物は▲635円の28155円でした。為替はドルが売られ、円はリスク回避の円買いが強まり113.35円まで買われました。

今週は、アフリカ発の新型コロナ変異株の影響を見極めるところです

先週は、「近くて遠い日経平均3万円」が継続するとしましたが、26日(金)の南アフリカの変異株への警戒感から900円近い暴落となって3万円台回復が遠のいてしまいました。

今年は8月20日の安値26954円を底に、10月6日の27293円、10月25日の28472円、11月11日の29040円と下値を切り上げてきましたが、テクニカルでは75日移動平均線(26日時点28966円)、200日移動平均線(26日時点28947円)を割り込み、11月11日の29040円を下に切り、先週末の終値は28751円で、10月25日の28472円を切るところまで下げています。

前週までの下値切り上げの動きは明確に崩れましたので、これを早期に回復できない場合は、10月6日の27293円が意識されることになります。

世界的に感染者が増加している中で、日本の新型コロナの1日あたりの感染者数は8月の約2万5000人をピークに激減しており、足元では100人を下回る日もあります。政府はコロナ感染拡大の備えをしつつ経済活動の再開に着手しており、景況感も改善する方向にあります。

このような中でアフリカの新型コロナ変異株への警戒感から暴落が起こっているわけですが、株式に関していえば相関的に日本市場は優位性を持っていいところですが、そうはなっていません。

今週は9月中間決算配当の支払いが本格化しはじめたことで、再投資の買いが見込まれますが、とりあえず水準訂正への動きを待つところです。

基本的に、今週は変異株の動きが相場を左右しそうです。感染の広がりが確認されれば、買いが控えられ新たな悪材料がなければ買い戻しから29000円台回復は早いと思われますが、新型の変異株の全貌を解明するのに2~3週間かかるとの見方もありますので時間がかる場合もあります。

本日29日(月)は、寄り付きは、新型コロナの新変異株オミクロン型への警戒感で売りが先行し、また円高もあって、前場早い段階で28400円を割り込み、その後は、時間外取引の米株先物高を支えに上げに転じる場面もありましたが買いは続かず、後場は再び軟化し、また岸田首相は午後に、明日30日から全世界の外国人の新規入国を原則停止すると発表したことも重しとなって先物売りも加わり下げ幅を拡大して、▲467円の28283円で引けました。

(指標)日経平均

先週の日経平均は、23日(火)の休日をはさんでおり、米国株式がインフレ懸念から早期利上げ観測が広がったことで、ハイテク株中心に軟調な動きとなり、ナスダックが2日連続下落しました。

これを受けて日経平均も荒い動きとなり、週末の26日(金)は、南アフリカで新型コロナの新たな変異株が検出されたニュースを受け、ハンセン株の急落もあって、日経平均は一時▲893円の28605円まで下げ、終値は▲747円の28751円の暴落となりました。

25日(木)は、米国は感謝祭でクローズされていたことで、米国で出るはずの売りまで日本に集中し、投機筋の仕掛けも加わって暴落となりました。海外で感染が拡大している中で、日本の感染減少という状況は本来評価されて日本株が買われてもおかしくないのですがそうはなっていません。

今週は、どこかで日本株の相関的な優位性が見直されるかもしれません。9月中間決算配当の支払いが本格化しはじめたことで、今週は再投資の買いも見込まれています。

今週は、変異株への警戒感をみながら水準訂正が意識されるところです。しかし、先週まで続いていた下値切り上げの動きが崩れましたので、立ち直りに時間がかかるかもしれません。目先は10月25日の28472円を終値で切ると、次は28000円、ここを切ると10月6日の27293円となります。


 

(指標)NYダウ

先週の予測では、25日(木)は感謝祭で休日となり、翌日は短縮営業となるため、正味の営業日数は月、火、水の3日間となるため、大きな動きは出にくいとしました。その一方で、欧州の一部で新型コロナの感染再拡大でロックダウンが実施されるなど、株式市場にとってはマイナスとしました。

こういう動きの中で、26日(金)に南アフリカで新型コロナの変異株が発見され、警戒感が広がって世界的株価暴落となり、NYダウは一時1054ドルまで下げ、終値は▲905ドルとなりました。ナスダック、S&Pもともに2%以上の下落となり、これをきっかけに米国株式が調整入りとなる可能性が出てきました。

南アフリカで発見された変異株は、デルタ株よりも感染力が強く、ワクチンの効力も限定的と報じられていますが、実態は明確にされたわけではありません。

バイデン大統領がパウエル議長を再任したことで、FRBを巡る人事の不透明感はなくなり、年末に向けて上昇しやすい環境になりました。年末商戦は今のところ出だしは好調で、小売企業の決算も好調な結果となっていますが、サプライチェーンの混乱によりコストの上昇で利益を圧迫されています。

小売は先週のブラックフライデーに続き、29日のサイバーマンデーがブラックフライデーを上回る売上が続いており注目となります。チャートではNYダウが34000ドルを切ると調整が長引くことになります。


 

(指標)ドル/円

●先週の動き…新たな変異株出現で利上げ確率低下

ドル/円は、11月24日に2017年1月以来となる115.52円までドルが買われたが、南アフリカで検出された新たな変異株が世界の景気回復を脅かすとの見方が広がり、リスク回避の円買いが急拡大し、一時113円台前半まで円が買われました。

また米利上げが遅れるとの見方も広がりドルが売られました。26日には114.21円から113.05円まで下落しました。引け値は113.16円でした。


●今週の見通し…2022年の米利上げ確率低下でドル売り続く可能性

南アフリカの変異株による感染拡大が警戒されており、26日の欧米株式は大幅下落となりました。世界経済の持続的な成長は実現困難との見方が広がり、ドル買い・円売りはすぐに拡大する可能性は低いとみられています。欧州地域における新型コロナの感染拡大も警戒されており、リスク回避的な円買いはしばらく続くことになりそうです。
 

 

配信元: みんかぶ株式コラム