ピー・ビーシステムズ 冨田和久社長インタビュー

システム開発のプロ集団としてデジタルワーク推進からDXの実現までを独自技術で社会貢献

 九州や北海道などの地方証券取引所が扱う上場銘柄は、東証銘柄の陰に隠れてしまいがちなため、全国的な「知名度」が低く、投資対象銘柄に選択される機会に恵まれない状況にある。しかしながら、福岡証券取引所の単独上場会社の会(通称:単場会)http://fse.irnavi.minkabu.jp/には、確かな実力と魅力溢れる銘柄が結集しており、一般投資家はその存在を知らないだけかも知れない。これまで複数年にわたって、単場会銘柄企業のトップインタビューを掲載してきているが、今回はコロナ禍という厳しい経営環境でも、独自の企業戦略により実力を発揮し、ビジネス展開する注目企業をピックアップした。トップ自らが語る持続成長可能性について、各社の意気込みと具体的な成長戦略をご覧いただき、ご自身の銘柄ポートフォリオの再検討にお役立ていただければ幸いである。

4447:ピー・ビーシステムズ
代表取締役社長 冨田和久氏


 
企業の業務システム、業務アプリケーションをクラウド化するセキュアクラウドシステム事業と、VR(バーチャルリアリティ)空間を映し出す装置「4DOH」を製造・販売するエモーショナルシステム事業の2本柱で事業展開するピー・ビーシステムズ <4447> [福証]は、コロナ禍においても増収増益と好調な業績を誇る。同社の冨田和久社長に経営理念に基づく同社の強みの理由を語っていただいた。

【1】貴社の事業の状況について伺います。
貴社の直近決算(9月期)では、コロナ禍において増収増益を達成されています。この業績をどう分析し、評価されていますか? また、2021年9月期の見通しについてはどのようにお考えですか?

 直近決算となりますと2020年9月期の決算を発表したのが去年の11月ですので、インタビューを受けている今からは半年以上前になってしまいますが、振り返りながらお話します。2020年9月期の業績は、ほぼ修正業績予想どおりの着地という結果でした。前年同期比では売上高3割増、営業利益4割増、経常利益7割増、と過去最高の数字を更新し大幅な増収増益でした。売上が初めて20億円を超え、当社にとって未知の世界に足を踏み入れたような実感がありました。営業利益、経常利益とも2億円台に乗ったということも、また一つ階段を上ったと感じました。先行投資、技術者の養成、利益水準の向上など、均衡を保ちながら推移した結果だと思います。

 2020年8月に開示した修正業績予想に対する比率は、売上0.8%減と見込みよりも若干少なく終わってしまいました。これはコロナ禍の影響を受け始めた結果です。売上のスリップはあったものの、生産性の向上によって、営業利益、経常利益は修正業績予想を超過しましたので、利益を生み出す力そのものは着実に成長しているというのが2020年9月期の評価です。

 今期2021年9月期はデジタルトランスフォーメーション(DX)をキーワードに戦略を推進し、連続最高益更新を目指しています。「不確実な時代」にどう立ち向かえるかが焦点です。セキュアクラウドシステム事業もエモーショナルシステム事業もコロナ禍の影響が顕在化してきたため、第1四半期は赤字でのスタートを覚悟し、DXをキーワードに各戦略を推進、第4四半期で増収増益確保というテールヘビーな計画を立てました。実際には新たに設置した東京営業部が素早く立ち上がったことで第1四半期を黒字でスタートし、第2四半期の売上高は計画に届かなかったものの、営業利益・経常利益は計画を上回ることができました。

 主力のセキュアクラウドシステム事業で現在取り組んでいることは、DX関連の需要を捉えるための体制づくりです。企業がデータ蓄積の効率化とデータ活用の高度化を求める「DX需要」、硬直した旧式・非効率な業務システムをクラウドに刷新すると同時に省資源化・省エネルギー化を図る「2025年の崖 克服 需要」、多様な働き方、安全なリモートワーク、事業継続危機に対する防御力と回復力を高めるシステムの障害/災害耐性強化「ディーセント・ワークとレジリエンス 需要」、これらのビジネスチャンスを捉えるため、内部人材の育成や、パートナーとの協業体制の拡充を積極的に進めています。

 市場の変化としてはSaaS事業者という潜在顧客層に注目しています。SaaS事業者や企業がパブリッククラウドからオンプレミス環境の有効利用へ軸足を移す「オンプレミス回帰」という動きが米国などの海外で鮮明化しているうえ、コロナ禍でSaaS利用が加速した結果、SaaS提供の土台となるクラウド基盤の利用コストはSaaS事業者の経営課題としても重みを増しています。こういった「ハイブリッドクラウド化とオンプレミス回帰 需要」に応えるクラウド基盤構築サービスは四半世紀のプライベートクラウド構築実績を誇る、当社だからこそ可能なサービスだと思います。

【2】貴社の事業展開についてお聞きします。
貴社では、デジタルワーク推進からDXの実現!を目指し、基幹システムのクラウド化・堅牢なサイバーセキュリティー・レジリエンス実装など、システム仮想化のプロ集団を標榜されています。
市場から信頼される貴社独自のビジネスの特徴やこだわりについてお話しください。

 主力のセキュアクラウドシステム事業では、デジタルワーク推進からDXの実現を旗印に、企業とSaaS事業者をクラウド技術力でトータルにサポートする事業を行っています。企業における「競争力の源泉」をいかにサポートするか、というところを重視しています。当社のクラウド基盤構築サービスが中堅企業やSaaS事業者になぜ受け入れられているのか。技術力など比較的目に見える部分の当社の強みは、新規のお客様にとって、当社とお取引を始めるきっかけになります。そこから顧客企業と長期的なお取引ができている根本の理由は、技術力だけでなく、外から見えにくい部分ですが、顧客企業における「競争力の源泉」を当社が理解してサポートするという当社のこだわりが、かなり関係していると感じています。

 顧客企業の持続的成長は「自社の競争力を具現化した強靭なシステム」なしには担保できません。その競争力は、企業独自の経営ノウハウ、独自の技術、生産手法や営業手法、経営管理手法、顧客サービス手法など企業独自の文化に宿っています。こういった部分を同業他社と同質化した仕組みに置き換えるのではなく、企業固有の競争力の源泉を活かし、効率的に処理できるように論理を組み上げ、最新のデジタル技術を咀嚼(そしゃく)しながらシステムを構築し運用していくことを必要としています。しかしそのニーズに応えていくことは、いつの時でも簡単でありません。

 その実現には、顧客の懐に飛び込み、その競争力の源泉を理解する賢さと人間性、そしてシステム構築に関わる様々な知識と経験が必要です。当社はそれができるように、いつの時でも、勇気をもって、その難しく泥臭い一歩を踏み出せるようになろう、一人一人が自分たちのできることを日々拡張していこうと努力しています。当社の持続的成長の可能性の源泉は、クラウド構築の圧倒的な技術力ですが、その根底にあるのは顧客に向き合い、顧客の「競争力の源泉」をサポートするという当社のこだわり、文化といってもいいかもしれません。

 「競争力の源泉」へのこだわりは、当社のSaaS事業者向けクラウド基盤構築ビジネスについても言えます。

 どの企業にも共通して必要とするようなシステムは、汎用パッケージシステムをSaaS型で利用する形態へと、利用が進んでいます。毎日の出勤ができない事情や状況に置かれた人材を企業が活用していくためにもインターネット経由でソフトウェアを利用できるSaaSは企業や個人にとって欠かせないものになりつつあります。SDGsの掲げる目標の一つにもなっている「生産的な完全雇用とディーセント・ワーク」の実現にもつながることですから、SaaSの利用拡大は一過性ではなく長期的な動きになるのも必然的な流れだと思います。

 ところが、SaaS事業者にとってSaaSを提供するためのクラウド基盤の選択肢は、世界的大手パブリッククラウド業者による寡占化の影響もあって、かなり狭まっています。SaaS事業者が「競争力の源泉」を守るためには、同業他社よりも優れたコスト構造や性能を持つクラウド基盤が必要になりますから、それを構築できる当社のような専門企業は短期的にも中長期的にも必要とされ続けるしかない存在と考えています。そういうポジションに当社は立とうと取り組んでいるところです。

【3】中長期における経営戦略について伺います。
現在の取り組みやビジネスにおける今後の持続成長可能性について具体的な説明をお願いいたします。また、目標達成のための重要課題など、現在展開されている経営戦略のポイントをお聞かせください。さらに、国連が提唱しているSDGsに絡めたお話をいただければ幸いです。

 中堅企業のDX需要、全国の自治体で検討が進みはじめている自治体システム次期強靭化などのレジリエンス需要、SaaS事業者のクラウド基盤の強化需要など旺盛な需要に応えていくために、当社自身の体制強化が欠かせない課題となっています。そのため今期は内部人材の育成と外部パートナーとの協業強化、この両輪で足場固めを行い、利益体質の強化を重視しています。これは当社自身のレジリエンスですが、2021年9月期はこういった戦略です。

 それから、SDGsについて。国連がSDGsの形で具体的目標を掲げる以前から、基本的な考えとして、社会に必要とされつづける存在であり続けたい、という強い思いを持っていました。SDGsが世界で目指す持続的社会に向けた17のゴールには、当社の理念や、事業に通ずるものを多く感じ、改めて、身の引き締まる思いがしています。セキュアクラウドシステム事業を通じたSDGsへの取り組みとしては、業務システムとビジネス上のデータをクラウド基盤に集約することで、電力など顧客企業の資源利用を効率化すること。また、顧客企業に安全なテレワークの環境を構築し、生産的な雇用や、働きがいのある人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)を顧客企業のビジネスモデルに組み込む後押しもしています。レジリエンスソリューションは信頼性の高い、持続可能かつ強靭(レジリエント)なITインフラを顧客企業に提供しています。危機的状況でも企業や公共機関が事業継続できる情報システムの防御と回復の仕組みづくりは、SDGsが目指す持続的な社会の実現に欠かせないサービスだと考えています。

 エモーショナルシステム事業も、VRを活用した防災教育や、リアルなシミュレーター映像によって資源の無駄を省く仕組みなど、持続的な社会の実現に不可欠かつ、当社独自のユニークな製品を提供しています。

【4】経営リスクについてお話をお願いします。
貴社のビジネス展開におけるリスクは何でしょうか? マーケット状況、新型コロナウイルス感染症の脅威など具体的に想定されるリスクがどのように業績に影響するとお考えでしょうか?

 新型コロナ感染症による影響は、セキュアクラウドシステム事業、エモーショナルシステム事業の両方に発生しました。セキュアクラウドシステム事業は個別顧客向けにシステム構築をする事業であり、顧客との信頼関係は何度もひざを突き合わせることで成立します。それゆえに行動制限は少なからず影響がありました。エモーショナルシステム事業は、アミューズメント、観光、イベント顧客に大きな影響を与えました。自治体についても、すべての予算が新型コロナ感染症対策優先となり苦戦しています。しかし、この1年以上にわたる期間の経験の中で、完全な収束とならない状況が続いても事業推進する工夫を行い対処しています。クラウドやSaaS、テレワークなどの情報通信技術の活用が多くの企業に浸透し、DXが国策としても推進されるようになり、企業のDXへの取り組みが活発化していることなどからも、セキュアクラウドシステム事業の需要は今後もますます増加していくと考えています。とすれば、セキュアクラウドシステム事業におけるリスクは、拡大する市場に対応する人材の確保が追いつかない場合です。その場合は売り上げの伸びが停滞する可能性があります。

 エモーショナルシステム事業は、主力事業であるセキュアクラウドシステム事業と互いに補完し合い、収益構造をより安定化させ、中長期的な企業価値向上に寄与することを期待している事業です。現在、エモーショナルシステム事業は社会に必要とされる防災や産業向けDXなど新たな市場の開拓に取り組んでいるところですが、VRは技術革新が急速に進んでいるため、当社が技術革新に追いつかない場合や、4DOHがニーズにうまく対応できない場合、同事業の進捗が遅れる可能性があります。

【5】最後に、投資家に向けてお話をお願いします。
さまざまなステークホルダーと関わりながら事業展開を推進されている貴社では、投資家に対してどのようなコミットが可能でしょうか? コーポレートガバナンスやコンプライアンス、経営理念に絡めた上でお話しください。
また、近年注目を集めるESG投資に対してのお考えをお聞かせいただければ幸いです。

 当社の経営理念は、『どんな時でも、「その一歩」が踏み出せるように。勇者たらんと。』というものです。

 問題点に誰よりも早く立ち向かい解決することで、いわゆる「動かないコンピューター」を作らないという強い思いが、当社を創業した理由です。

 現在のセキュアクラウドシステム事業、エモーショナルシステム事業ともに、非効率化している現状を改善することで環境問題に対応する事業ですし、この経営理念を実現するために、やる気や潜在能力を評価する、各自の持つ良さをどう生かして事業に貢献してもらうのか、これは創業時から変わらない文化です。コーポレートガバナンスの要である取締役会には取締役管理本部長として女性の取締役が2007年から参画しています。部長など社内の責任者ポジションにも、女性社員を登用しています。

 会社と投資家の皆様との対話、積極的なIRが当社の成長を促すことにつながると考え、投資家の皆様に有用と判断される情報を積極的に開示して、経営の透明性、企業情報伝達への配慮を常に心がけています。

 これからも、投資家の皆様がより投資しやすい環境を整え、流動性の向上及び投資家層の拡大を図りたいと思っています。そして、他市場への重複上場のステップアップも視野に入れています。

 昨年スタートした株主優待制度は、当社特製カレンダーを基本としています。株数に応じてプラスするプレミア商品について、このインタビューの時点では、まだ発表できないのが残念ですが、当社らしい内容に毎年アップデートしていく予定ですので、株主の皆様には楽しみにしていただければと思っています。

【自社アピール】
 当社は1997年に福岡県で創業したIT企業です。おかげさまで2019年9月に福岡証券取引所Q-Boardに上場しました。社名のピー・ビーシステムズはPowerful and BeautifulのPとBです。力強く、美しく「質実剛健で気の利いた、本当に顧客のためになるシステム」を構築するための会社でありたいという強い思いをこめています。

 20年以上前の創業直後に出会った優れたソフトウェアを中心にして、顧客企業の基幹業務システムを今でいうクラウドのような形で構築し提供してきました。

 現在当社の主力事業である「セキュアクラウドシステム事業」は、この長年培ってきた技術力とノウハウ蓄積量が強みです。全国の企業が直面する2025年の崖(※)を乗り越えるための業務システムのクラウド化や、SaaS事業者のオンラインサービス基盤の強化とレジリエンスを中心として、企業のデジタルワーク推進からDX実現をサポートしています。

 もう一つの事業である「エモーショナルシステム事業」は、360度スクリーンに3D映像を切れ目なく表示する、没入感の高いVR空間を生み出す「4DOH」を製造販売しています。エモーショナルシステム事業の主力製品である4DOHはHMDを装着せずにVR空間を実現し複数人で同時に体験できるVRシアターとして、国内外の多数の遊園地・テーマパークで利用されています。4DOHの普及によるSDGsの社会課題解決に取り組んでおり、科学館・博物館での4DOH利用(4.質の高い教育をみんなに)、防災や住環境シミュレーション(11.住み続けられるまちづくり)、企業のプラントや物流設備など作業施設のデジタルトランスフォーメーションへの4DOH活用(8.働きがいも経済成長も、9.産業と技術革新の基盤をつくろう)などを推進しています。(※カッコ内はSDGsの各目標)

 この2つの事業を柱に、福岡を拠点として全国をサポートしています。エンドユーザーに近いところでビジネスをする、というスタンスは変わっていません。良いと思ったものであれば即検証し、その情報を当社の中で噛み砕き、なるべく早くわかりやすくユーザーにフィードバックする。そして、顧客満足度を高めていくというような会社です。

●資料請求・問い合わせ先
株式会社ピー・ビーシステムズ IR担当
〒812-0007 福岡市博多区東比恵3丁目3-24
TEL:092-481-5669 / FAX:092-481-2286
https://www.pbsystems.co.jp/

配信元: みんかぶ株式コラム

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