今週は、為替の動きに株価がどう反応するのは注目

著者:出島 昇
投稿:2021/08/16 17:14

先週は、ザラ場では28279円まで上昇するも終値では28000円割れ

 先週の予測では、前週の6日(金)の米7月雇用統計の改善を受けて、米国株の堅調さが継続すれば、日本株にとっても追い風になるかもしれないとしました。しかし、国内では新型コロナの感染拡大が止まらず、相場の上値は重くなるともしました。一方、企業決算は終盤に入り、個別では大幅に上方修正する企業もみられますが、全体的に波及せず個別株物色にとどまっています。NYダウは堅調でも日本株式は追随できず、外国人投資家の日本株に対する不透明懸念(コロナウイルスの感染拡大、菅政権の求心力の低下など)が多く、本格的な買いが期待できそうにありません。

 チャートをみると、28000円が上値のフシとなっているため、ここを突破するためには200日移動平均線(6日時点27927円)と25日移動平均線(6日時点28037円)の2つの移動平均線を上回る必要があります。

 つまり、28000円を大きく上にいくためには、まず終値で28100円を突破しなければなりません。

 結果的に、3連休明けの先週は、10日(火)は△66円の27887円で寄り付き、円安進行の中で好決算銘柄を中心に、一時△308円の28128円まで買われましたが、麻生財務相が「新たな補正予算や経済対策は考えていない」という発言から、追加の経済対策への期待が後退し、終値は△68円の27888円となりました。

 11日(水)は、前日の米国で1兆ドルのインフラ投資案が上院を通過したことで、NYダウとS&P500は最高値更新となり、これを受けて日経平均は△258円の28146円まで上昇するものの、戻り売りに押され△182円の28070円で引け、7月16日以来の28000円台を回復しました。

 12日(木)は、前日のNYダウは連日の最高値更新となったことで、日経平均は△209円の28279円まで上昇するものの、そこでは戻り待ちの売りに押され、▲55円の28015円と5日ぶりの反落となりました。週末の13日(金)は、前日の米国株式は3指標とも上昇(NYダウとS&P500は3日連続の最高値更新)となったものの、前場に28070円まで上昇後、一時▲65円の27949円まで下げ、あとは28000円をはんさんだもみあいとなり、終値は▲37円の27977円と小幅反落し、28000円を割って引けました。

 この日は、日経平均先物オプション(8月限SQ)でしたが、SQ値の28093円には一度もタッチすることなく「幻のSQ」となりました。先週の予測で上にぬけるためには、終値で28100円以上必要だとしましたが、ザラ場では超えても終値では28000円を割って引けました。

 13日(金)の米国市場は、3指標そろって小幅反発で、NYダウ、S&P500は4日連続で史上最高値更新しましたが、8月ミシガン大学消費者信頼感指数が約10年ぶりの低水準となり、為替が1ドル=110.29円から109.55円までドルの下落となりました。これを受けてシカゴの日経先物は▲90円の27900円となっていました。

今週は、為替の動きに株価がどう反応するのは注目

 先週の日本株式は、新型コロナの感染拡大が止まらないことで、上値は重いものの米国株式が堅調で日本株式の下値を支え、先週、一時28000円台を回復したこともあって、今月後半は期待できるとの見方が多いようです。但し、13日(金)で決算はほとんど出揃って、出来高が再び伸び悩むと方向感のない展開の見方も多いようです。

 日本株は近々上昇に転じる要因として、為替でドル高基調(円安)が明確なって日本株にプラスになる面が強調されていましたが、先週末の13日(金)に、8月ミシガン大学消費者信頼感指数が約10年ぶりの低水準となり、為替が1ドル=110.29円から109.55円へ急落(円高)するネガティブサプライズが起きています。景気回復への懸念が浮上し、このまま金利低下に伴うドル売りに拍車がかかるのか、どうか見極めるところです。今月の下旬の「ジャクソンホール会議」では、米金利がボトム圏から上放れしてきていることを前提の会議であり、どういう内容になるのか注目が集まります。それまでは様子見ムードが出てくるかもしれません。

 これまでの流れですと、今年の2月16日の年初来高値30714円から今週は丁度6ヶ月の高値期日を迎えることになり、7月30日に27272円の安値をつけてからジリ安基調が期日明けを機に上向きへと流れが変わるかどうかが焦点となっています。しかし、先週は12日(木)に一時28279円まで上昇したものの、終ってみれば27977円と28000円割って引けました。25日移動平均線、200日移動平均線は日足チャートですから、ここを一時的にぬけるのよくあることですが、本当にジリ高をぬけるためには週足チャートの13週移動平均線(28364円)を上にぬく必要があります。逆にさらに下値をさぐるとすれば52週移動平均線(27169円)を割り込む場合です。先週、為替でネガティブサプライズが出ましたので株価に影響がどれくらい出るのかみるところです。その視点からは、7月小売売上高が市場予想を下回れば個人消費は鈍化との見方から、長期金利低下、ドル売りの流れとなりますが、市場予想を上回れば景気回復は順調として、ドルの下げは限定的なものになり長期金利も反発することになります。

 本日16日(月)は、寄り付きは、新型コロナウイルスの感染拡大懸念が根強い中、円高・ドル安や時間外取引の米株価指数先物安を受け売り優勢で始まり、また午前中に発表された中国7月小売売上高や同月鉱工業生産が市場予想を下回ったことも重しとなり下げ幅を拡大し、後場には一時27427円と27500円を割る場面もあり、その後も軟調な展開となり、大引けは▲453円の27523円となりました。

(指標)日経平均

 先週の予測では、7月の雇用統計が予想を上回ったことで、米国株式は引き続き堅調であれば日本株式の追い風となって28000円を試すものの、28000円を突破して上昇するためには、まず200日移動平均線(270906円)と25日移動平均線(28076円)を終値で突破する必要があるとしました。

 結局、NYダウとS&P500は史上最高値更新を続け、日経平均もザラ場では12日(木)には28279円まで上昇するものの、28000円を大きく超えてくると戻り待ちの売りが出て、25日移動平均線を突破できず週末の13日(金)も28070円まで上昇するものの、27977円と28000円を割り込んで引けました。

 但し、決算は好調なものが多く個別株物色となって全体には波及しませんでした。

 今週も引き続き、新型コロナの感染拡大に注目が集まることになります。これまで下値では米株式の史上最高値更新が日経平均を下支えしており、為替も円安基調と今週は2月16日の30714円の年初来高値から6ヶ月経過する信用期日明けとなることで、今月後半は上昇期待がもてる状況にありました。ところが先週末の13日(金)の8月ミシガン大学消費者信頼感指数が約10年ぶりの低水準となったことで、ドルが1ドル=110.29円から109.55円まで下落しました。景気回復への懸念が長期金利の低下→ドル売りとなっており注意するところです。シカゴの日経先物は▲90円の27900円となっていました。
 

 

(指標)NYダウ

 先週の予測では、企業利益の力強い伸びが相場をサポートする一方で、インフラ投資案を上院が協議を続ける予定のため、引き続き高値圏で堅調な展開が続くとしました。

 結果的に、8月10日(火)に、1兆ドルのインフラ法案が上院を通過し、景気敏感株が上昇し、NYダウとS&P500は最高値更新となりました。その後、経済指標も好調で週末の13日(金)には、NYダウ、S&P500は4日連続で最高値更新で引けました。3指標そろって小幅高となりましたが、NYダウは一時△110ドルで終値は△15ドルと上値が重くなっています。その理由に8月ミシガン大学消費者信頼感指数が約10年ぶりの低水準となったことで、景気回復に懸念が生じ、長期金利が低下して、ドルが110.24円から109.55円まで売られました。

 今週は、高値圏での一服感も想定されます。1つは、先週末の13日(金)の8月ミシガン大学消費者信頼感指数が10年ぶりの低水準となって、景気回復懸念からドルが110.29円から109.55円まで下落したことです。但し、長期金利の低下ですので、ナスダックにはプラスとなります。その他、新型コロナのデルタ株の流行が広がり、一部の州では流行を抑制する対策が再び導入されマスク着用の義務化やNY州では、今後、室内飲食やジムの利用でワクチン接種の証明が必要になるとのことです。
 

 

(指標)ドル/円

●先週の動き…新型コロナ感染拡大や経済指標の低下を受けドル売りへ

 週前半は、約1兆ドルのインフラ投資法案が上院で成立したことで、リスク選好的なドル買い・円売りで、一時110.80円まで買われました。その後、新型コロナの感染拡大で景気回復のペースが鈍るとの見方や8月ミシガン大学消費者信頼感指数が10年ぶりの低水準となったことで、長期金利が低下し、ドルが109.55円まで下落しました。

●今週の見通し…ドルは下げ渋りか

 今週は、先週末の8月ミシガン大学消費者信頼感指数の10ぶりの低水準で長期金利の上昇が一服したことで、さらにリスク回避的なドル売りが拡大するかはFEBの金融政策をみると拡大する可能性は低いとの見方が多いようです。ただし、今週、発表の7月小売売上高が市場予想を下回れば、個人消費の鈍化が意識され長期金利はさらに下げる可能性もあります。
 

 

配信元: みんかぶ株式コラム