アクセル Research Memo(7):機械学習・AI領域では2020年以降、様々なソリューションの提供を開始

配信元:フィスコ
投稿:2021/07/19 15:27
■今後の見通し

2. 今後の成長戦略
アクセル<6730>は今後の成長戦略として、パチンコ・パチスロ機市場で培ってきた開発力を強みとして、AI分野やセキュリティ、ブロックチェーンなど世の中の革新に貢献する様々な新規事業領域に展開していくことで、高成長を目指していく戦略を打ち出している。強みとなる開発力には、ハードウェア開発力(LSI・FPGA・モジュール基板設計力)、ソフトウェア開発力(開発ツール・ライブラリ)、要素技術の研究開発力(動画・音声圧縮、超解像、暗号、AI等)の3つがあり、これら開発力を武器にパチンコ・パチスロ機向けG-LSIで圧倒的なトップシェアを獲得・維持してきたわけだが、今後はこの成功モデルを新たな市場に展開していくことで、成長を目指していく。

新規事業関連の取り組み状況は前述の通りで、AIソリューションについては順調に拡大しているものの、ミドルウェア製品やセキュリティ製品、ブロックチェーンなどでの取り組みはコロナ禍の影響もあってやや遅れ気味となっており、当初目標にしていた2023年3月期の売上高目標16億円については1期先送りされる見通しで、収益への貢献も早くて2023年3月期以降となりそうだ。ただ、AI分野を中心にターゲットとしている市場の成長ポテンシャルは高く、将来的に収益をけん引していく可能性は十分あると弊社では見ている。

(1) 機械学習/AI領域
機械学習/AI領域では2020年に入って様々なソリューションの提供を開始している。まず、2020年6月にAIデモソフト「ailia AI showcase」の提供を開始した。ディープラーニング・フレームワーク「ailia SDK」を使用したデモソフトとして、物体検出・画像分類・特徴抽出・骨格抽出・個人識別など、学習済みモデルを使った様々なAI機能をAI開発初心者でも手軽に試すことが可能で、AIで実現できる機能を視覚的に確認することができる。同ソフトについては(株)ユニットコムが提供するAI開発・ディープラーニング専用パソコン/ワークステーション「DEEP∞(ディープインフィニティ)」のデモアプリとして採用されている。

同年8月には実写映像やアニメをAIで世界最高水準で高画質化する「ailia AI Refiner」の提供を開始した。「ailia SDK」と(株)ラディウス・ファイブが開発した高解像度化AI「Photo Refiner」を組み合わせ、米Adobeが提供するソフトウェア「After Effects®」上で利用可能な製品となる。AIで超解像処理とノイズリダクションを行うことで、世界最高水準の高画質化を実現し、また、機械学習を活用した超解像処理の特許技術により、より高速に画像を生成することを可能としており、実写映像やアニメ制作現場での需要拡大が期待される。

また、(株)セルシスが提供するイラスト・マンガ・アニメーション制作ソフト「CLIP STUDIO PAINT for Galaxy」にも、「ailia SDK」が採用されたことを発表している。すでに「CLIP STUDIO PAINT」のWindows、macOS、iOS、iPadOS版に採用されていたが、今回、AndroidプラットフォームとしてSamsungのスマートフォン「Galaxy」シリーズ向けにも提供することが決まった。「ailia SDK」の高速エッジ推論フレームワークという強みが評価されている。

さらに、2021年4月にはNTTドコモが実用化を推進している「対話型AI自動運転車いすパートナーモビリティ」のアプリケーション開発に協力したことを発表している。「パートナーモビリティ」は久留米工業大学と共同研究している音声対話で行き先を相談しながら自動運転で目的地まで案内するモビリティのことで、移動が困難な人が介助者なしで移動を楽しむことを目指したソリューションとなる。自動運転車いすに複数のカメラを設置し、カメラから入ってくる映像情報を遠隔のサポートセンターに5Gの高速通信で送信し、音声でやりとりしながら遠隔操縦を行う仕組みとなる。同社の協力内容としては、「ailia SDK」を用いてカメラから入ってくる映像情報をもとに障害物を検知し、自動運転を制御したり、映像情報のなかに人物が紛れ込んでいれば、それを認識してリアルタイムでモザイク処理を行って、サポートセンターに送信する(プライベート保護処理)といったことを実現している。「ailia SDK」はエッジAI対応5Gデバイスに実装され、人の検知とトラッキングを行い、ステレオカメラで障害物及び人までの距離を計測するとともに、人の移動も予測する。

これらは「ailia SDK」が持つ世界最高水準の推論速度によって実現を可能にしている。また、推論フレームワークを自社で開発・保持しているため最適化のためのチューニングが容易なほか、100種類を超える学習モデル「ailia MODELES」を持つことで顧客は独自で学習モデルを開発する必要がなくなり、AI実装における開発の効率化が可能となるといった強みを持つ。直近でも開発支援プロジェクトの引き合いが増えてきており、当面はこうした開発案件を数多くこなすことで事業を拡大し、次のステップとして積み重ねた実績をもとに用途別にソリューションをパッケージ化して提供し、将来的には「ailia」のロイヤリティ収益を獲得して、安定かつ高収益なビジネスモデルの構築を目指していく。

(2) ミドルウェア製品(AXIP)
ミドルウェア製品の取り組みとしては、2020年6月にAXIPシリーズの「H2MD」及び「C-FA」がブラウザ向け3DゲームエンジンであるPlayCanvasに対応したことを発表した。「H2MD」を使用することで、ブラウザ上でアルファチャンネル※、自動再生、柔軟な再生制御が実現可能となる。また、「C-FA」を使用することで、音声の暗号化や仮想トラックによるデバイス制約の緩和、区間ループ再生を実現できるようになり、PlayCanvasの提供する3Dコンテンツを融合することで、リッチなコンテンツの開発が可能となる。

※画像処理分野において各ピクセルに対し色表現のデータとは別に持たせた補助データのこと。一般に画素の不透明度(opacity)を表現する。


ただ、AXIPシリーズの売上規模については当初の目標に届いていないのが現状で課題となっている。同社では性能面では競合製品と比較して劣っていないと考えており、今後、マーケティングや営業戦略を練り直して成長軌道に乗せていく方針となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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