■要約
1. シャッター、ドアのトップメーカーで、海外展開も積極的
三和ホールディングス<5929>は、傘下に子会社100社を持ち、シャッター、ドアの分野でグローバルに事業展開している。利益の7割近くを占める国内事業では、重量シャッター、軽量シャッターなどで市場シェアトップを誇る。海外展開にも積極的で、欧米ではM&Aを活用して業容を拡大し、グループ業績に貢献している。アジアでも中国、ベトナム、台湾などで事業を展開し、事業基盤の確立による収益貢献の拡大を急ぐ。
2. 2021年3月期決算は、コロナ禍の影響で減収減益ながら修正予想を大きく超過して着地
同社の2021年3月期決算は、売上高427,061百万円(前期比3.0%減)、営業利益33,077百万円(同3.3%減)と、世界的な新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響を受けて減収減益となった。しかし、売上高・利益ともに修正予想を上回り、過去最高益だった前期の水準にあと一歩までに迫るなど、厳しい経済環境の中でも健闘した決算であった。セクター別の営業利益では、グループの中核会社で全体の6割の利益を占める三和シヤッター工業(株)は、コロナ禍による大幅な数量減の影響を販売価格の引き上げとコスト削減によりカバーして小幅の減益にとどめ、また国内子会社も数量減をコスト削減と新規連結効果が上回り増益を確保するなど、国内部門は比較的堅調であった。一方、海外部門ではコロナ禍の影響を大きく受け、米国は量販店向け拡販による採算性低下などで、欧州も数量減が響き、大幅な減益に終わった。また、2020年3月期より新規に連結したアジアは、小幅の損失となった。自己資本比率は47.9%と引き続き高い安全性を確保するとともに、ROEは12.4%で業界平均を大きく上回る高い収益性を維持した。また、厳しい経済環境下でも株主・投資家重視の経営姿勢を示し、配当は前期同様の年間34.0円を継続して、目安とする配当性向35.0%を確保した。
3. 2022年3月期は、増収増益を予想し、コロナ禍前の水準に戻す
2022年3月期については、売上高450,000百万円(前期比5.4%増)、営業利益34,000百万円(同2.8%増)と増収増益を予想し、コロナ禍前の2020年3月期の水準に戻す計画だ。原材料価格の大幅上昇やコストアップを見込むものの、数量効果や販売価格への転嫁を進めることで、増益を確保する。ただ、例年、期初の業績予想は保守的であり、最終的には予想を上回って着地する可能性が高いと見られる。セクター別営業利益では、三和シヤッター工業と国内子会社では、ともに数量増効果を主因に小幅増益を見込む。また、海外では、米国は販売価格への転嫁や数量増に伴い小幅増益を計画する。一方、欧州では販売価格への転嫁とコスト削減により、大幅増益を予想している。アジアでも、事業基盤の再構築から小幅の黒字転換を見込む。配当については、前期と同額の年間34.0円を維持し、配当性向は34.8%の見通しである。また、成長のために必要な戦略投資を行い、手元資金を考慮しつつ自社株取得を検討するスタンスに変わりはない。
4. 第三次中期経営計画を1年延長し、コロナ禍に影響を受けた戦略を完遂
同社は長期ビジョン『三和グローバルビジョン2020』の最後の2年間に合わせ、第三次中期経営計画(2020年3月期~2021年3月期)を推進してきたが、コロナ禍に影響を受けた戦略を完遂するために、2022年3月期まで1年延長した。この中期経営計画ではグローバル・メジャーとしてのトップブランドの基盤を確立することを目指して、日・米・欧でのコアビジネスの事業領域拡大、サービス分野の強化、アジア事業の基盤拡充、働き方改革、ESG推進などの基本戦略に取り組んでいる。数値目標としては売上高4,500億円、営業利益375億円、ROE14.1%などの達成を掲げていたが、コロナ禍の影響が大きく、数値目標の多くは達成困難な見通しである。一方、ESG推進の一環として、脱炭素社会に向けて、新たに2030年のCO2排出量を30%削減する目標を掲げたことが注目される。基本戦略の着実な遂行は、2023年3月期からスタートする次期長期ビジョン・中期経営計画につながると考えられる。
■Key Points
・シャッター、ドアのトップメーカーで、海外展開にも積極的
・ 2021年3月期決算は、減収減益ながら、売上・営業利益は修正予想を超過。グループ中核の三和シヤッター工業と国内子会社の営業利益はほぼ横ばいだが、海外事業が大幅減益。高い安全性と収益性を維持し、前期並みの配当を実施するなど、株主・投資家重視の姿勢を示す
・2022年3月期は、増収増益を予想し、コロナ禍前の水準への回帰を目指す。各セクターで増益を予想するなか、特に欧州で高い増益率を見込む。前期同様の配当を維持する予定
・ 第三次中期経営計画(2020年3月期~2021年3月期)を1年延長。数値目標の達成は困難な見通しながら、コアビジネスの事業領域拡大やサービス事業の拡大などに取り組み、新たにCO2削減目標を発表。基本戦略の着実な遂行は、次期長期ビジョン・中期経営計画につながると見る
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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1. シャッター、ドアのトップメーカーで、海外展開も積極的
三和ホールディングス<5929>は、傘下に子会社100社を持ち、シャッター、ドアの分野でグローバルに事業展開している。利益の7割近くを占める国内事業では、重量シャッター、軽量シャッターなどで市場シェアトップを誇る。海外展開にも積極的で、欧米ではM&Aを活用して業容を拡大し、グループ業績に貢献している。アジアでも中国、ベトナム、台湾などで事業を展開し、事業基盤の確立による収益貢献の拡大を急ぐ。
2. 2021年3月期決算は、コロナ禍の影響で減収減益ながら修正予想を大きく超過して着地
同社の2021年3月期決算は、売上高427,061百万円(前期比3.0%減)、営業利益33,077百万円(同3.3%減)と、世界的な新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響を受けて減収減益となった。しかし、売上高・利益ともに修正予想を上回り、過去最高益だった前期の水準にあと一歩までに迫るなど、厳しい経済環境の中でも健闘した決算であった。セクター別の営業利益では、グループの中核会社で全体の6割の利益を占める三和シヤッター工業(株)は、コロナ禍による大幅な数量減の影響を販売価格の引き上げとコスト削減によりカバーして小幅の減益にとどめ、また国内子会社も数量減をコスト削減と新規連結効果が上回り増益を確保するなど、国内部門は比較的堅調であった。一方、海外部門ではコロナ禍の影響を大きく受け、米国は量販店向け拡販による採算性低下などで、欧州も数量減が響き、大幅な減益に終わった。また、2020年3月期より新規に連結したアジアは、小幅の損失となった。自己資本比率は47.9%と引き続き高い安全性を確保するとともに、ROEは12.4%で業界平均を大きく上回る高い収益性を維持した。また、厳しい経済環境下でも株主・投資家重視の経営姿勢を示し、配当は前期同様の年間34.0円を継続して、目安とする配当性向35.0%を確保した。
3. 2022年3月期は、増収増益を予想し、コロナ禍前の水準に戻す
2022年3月期については、売上高450,000百万円(前期比5.4%増)、営業利益34,000百万円(同2.8%増)と増収増益を予想し、コロナ禍前の2020年3月期の水準に戻す計画だ。原材料価格の大幅上昇やコストアップを見込むものの、数量効果や販売価格への転嫁を進めることで、増益を確保する。ただ、例年、期初の業績予想は保守的であり、最終的には予想を上回って着地する可能性が高いと見られる。セクター別営業利益では、三和シヤッター工業と国内子会社では、ともに数量増効果を主因に小幅増益を見込む。また、海外では、米国は販売価格への転嫁や数量増に伴い小幅増益を計画する。一方、欧州では販売価格への転嫁とコスト削減により、大幅増益を予想している。アジアでも、事業基盤の再構築から小幅の黒字転換を見込む。配当については、前期と同額の年間34.0円を維持し、配当性向は34.8%の見通しである。また、成長のために必要な戦略投資を行い、手元資金を考慮しつつ自社株取得を検討するスタンスに変わりはない。
4. 第三次中期経営計画を1年延長し、コロナ禍に影響を受けた戦略を完遂
同社は長期ビジョン『三和グローバルビジョン2020』の最後の2年間に合わせ、第三次中期経営計画(2020年3月期~2021年3月期)を推進してきたが、コロナ禍に影響を受けた戦略を完遂するために、2022年3月期まで1年延長した。この中期経営計画ではグローバル・メジャーとしてのトップブランドの基盤を確立することを目指して、日・米・欧でのコアビジネスの事業領域拡大、サービス分野の強化、アジア事業の基盤拡充、働き方改革、ESG推進などの基本戦略に取り組んでいる。数値目標としては売上高4,500億円、営業利益375億円、ROE14.1%などの達成を掲げていたが、コロナ禍の影響が大きく、数値目標の多くは達成困難な見通しである。一方、ESG推進の一環として、脱炭素社会に向けて、新たに2030年のCO2排出量を30%削減する目標を掲げたことが注目される。基本戦略の着実な遂行は、2023年3月期からスタートする次期長期ビジョン・中期経営計画につながると考えられる。
■Key Points
・シャッター、ドアのトップメーカーで、海外展開にも積極的
・ 2021年3月期決算は、減収減益ながら、売上・営業利益は修正予想を超過。グループ中核の三和シヤッター工業と国内子会社の営業利益はほぼ横ばいだが、海外事業が大幅減益。高い安全性と収益性を維持し、前期並みの配当を実施するなど、株主・投資家重視の姿勢を示す
・2022年3月期は、増収増益を予想し、コロナ禍前の水準への回帰を目指す。各セクターで増益を予想するなか、特に欧州で高い増益率を見込む。前期同様の配当を維持する予定
・ 第三次中期経営計画(2020年3月期~2021年3月期)を1年延長。数値目標の達成は困難な見通しながら、コアビジネスの事業領域拡大やサービス事業の拡大などに取り組み、新たにCO2削減目標を発表。基本戦略の着実な遂行は、次期長期ビジョン・中期経営計画につながると見る
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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