■レアジョブ<6096>の市場環境と成長戦略
1. 市場環境
コロナ禍の長期化に伴う訪日外国人の減少、あるいは海外旅行の機会が大幅に減少するなかで、英会話サービスに対する需要も一時的に鈍化しているものの、中長期的に見ればグローバル化の一段の進展や訪日外国人数の回復、また、小学校での英語教育の必修化などにより、市場は拡大基調が続くものと予想される。
企業向け市場については、ここ数年は横ばい水準が続いているが、割合としてはオンライン研修が伸びているものと見られる。コロナ禍により一時的に停滞しているものの、グローバル化に伴う海外の駐在員の増加や、国内でも海外企業との接点の増加、外国人材の増加などを背景に、英会話学習ニーズは今後も拡大していくと想定される。
教育機関向け市場については、学校では2020年度より小学5年生から英語授業が必修化されたほか、中学校・高等学校を含め、学習指導要領の改訂で英会話力の向上がより重視されるようになっており、教育機関でのオンライン英会話サービスの導入も今後、加速していくものと予想される。今後はオンラインでの英会話レッスン提供とオフラインでのALTによる指導の長所を組み合わせた個別最適化された学習の実現を目指していく。
「PROGOS」の普及によりアセスメントデータプラットフォームを構築、
中期売上目標300億円を目指す
2. 中期成長戦略
同社は今後の成長戦略として、「PROGOS」や各事業で収集されるデータを集約するアセスメントデータプラットフォームを競争優位の源泉として成長戦略の中心に据え、同プラットフォームを基盤として個人向け、法人向け、文教向けに品質の高い様々なサービスを提供していくことで事業を拡大していく戦略を目指す。このため、アセスメントデータプラットフォームを、量・質ともに他社の追随を許さないものにしていくことが、競争優位性を確立し、高成長を実現していくための重要な鍵を握っているとも言える。
(1) 個人向けサービス
個人向けサービスに関しては、アセスメントデータプラットフォームを他社サービスとも連携することで、ユーザーの英語力に合わせた最適なサービスのレコメンドを行い、ワンストップでサービスを提供できる総合英語学習サービスプロバイダーとして進化し、さらなる事業拡大を目指していく。例えば、スピーキング力を向上させたい人は「レアジョブ英会話」を、発音を矯正したいユーザーには発音矯正アプリを、文法を学びたい人には、参考書や学習ドリルなど、他社サービスも含めた学習教材のレコメンドを行うサービスを実現させる。利用者は、英語能力向上に向けた課題と最適な解決方法が同プラットフォームを通じて確認できることになり、同業他社に対して大きな差別化要因になると弊社では見ている。
(2) 法人向けサービス
法人向けサービスの成長に関しては、「PROGOS」をフックに、英語研修プログラムやグローバルリーダー研修プログラムのほか、キャリアサービス(人材紹介)や人事データサービスなど周辺サービス事業へ展開していくことで、事業成長を目指す。
そのためにも同社は短期間で「PROGOS」を一気に普及させたい考えで、2022年3月期中に年間受験回数100万回の達成を目標にしている。現在、企業の人事採用では英会話スキルの判断材料としてTOEIC(R)を採用しているケースがほとんどだが、TOEIC(R)の年間受験回数は2020年で約169万回の規模となっており、試験提供の開始から100万回に到達するまでに20年間かかっていることを考えると、同社サービスの優位性と本気度が感じられる。2021年5月時点で受験実施回数は数万回となっており、今後加速度的に増やしていく計画となっている。
同社では今後、「PROGOS」がTOEIC(R)に代替する英語試験の位置づけになることを目標としている。既に、既存の法人顧客への導入が進んでいるほか、2021年4月には中央大学が全学生2.5万人を対象としたプログラムとして「PROGOS」を採用し、利用を開始したことを発表している。グローバル人材の育成が教育分野でも目指す方向になってきており、その一環として、低コストかつオンラインで手軽に受験でき、結果もすぐ判明する利点が評価されたようで、今後、企業や大学でどの程度のペースで導入が進むか注目される。
また、(株)プロゴスでは、日本語のスピーキング力のアセスメントに関しても新たな取り組みを開始している。2021年5月に東京外国語大学と日本語スピーキング力学習プログラムの共同開発を行うことで基本合意したほか、同年6月には外国人材紹介や日本語教育で実績を持つ(株)JELLYFISHと合弁会社、バベルメソッド(株)を設立し、日本語スピーキング力学習プログラムの開発を進めていくことを発表した。現在、外国人材が日本での就労ビザを得るためには、日本語能力試験(JLPT)の認定をはじめ、一定レベルが必要とされているが、JLPTは日本語の「読む力」「聞く力」に重点を置いた試験で、「話す力」については、測定・証明する方法が無いという課題があった。今回、バベルメソッドにて、新たに日本語スピーキング力の学習プログラムを開発することで、これらの課題解決に取り組んでいく。また、東京外国語大学も学習プログラム開発の監修に携わり、2022年3月期中のサービス提供を目指している。ビジネスモデルとしては、(株)JELLYFISHから供給される外国人材を、バベルメソッドの学習プログラムを使って(株)プロゴスがアセスメントを行い、外国人材を求める企業(介護業界、メーカー、IT等)に対して、求められる能力に応じた即戦力人材を紹介し、その対価として紹介手数料を得る形となる。潜在的なニーズは大きいと見られるだけに、中長期的に同社の収益に貢献するものと期待される。
(3) 文教向け事業
文教市場に関しては、GIGAスクール構想で目標とされる個別最適な学びの実現に向けて、アセスメントによる学習状態の把握が必要になると見られることから、同社が構築するアセスメントデータプラットフォームを活用した個別最適学習サービスの提供に対する需要拡大が見込まれる。オンライン英会話レッスンとオフラインのALT派遣サービスの組み合わせで個別最適化された学習の実現を目指すことで、売上を伸ばしていくことになる。
(4) 海外事業
海外市場についても、「PROGOS」をアセスメントとして確立させ、競合優位性をもって展開していく構想を描いている。その足掛かりとして、2019年に出資したタイのオンライン英会話事業者Globish Academia (Thailand) Company Ltd.、及びインドのオンライン英会話事業者Multibhashi Solutions Pvt Ltd.に、追加出資を2021年4月に実施した。今後、両社を通じて「PROGOS」や「レアジョブ英会話」サービスの販売を進めていくことを目指している。「PROGOS」については、既にトライアルで利用が始まっているようで、今後の動向が注目される。また、海外市場についてはM&Aによる展開についても視野に入れている。
(5) 経営数値目標
同社では、中期的な売上目標として、個人向け、法人向け、文教向けで各100億円、合計で300億円の売上目標を打ち出した。海外向けに関してはまだ具体的な数字を積み上げる段階まで至っていないため、目標値には入れていないものの、インドやタイでの取り組みが進めば国内事業に上乗せされる。また、営業利益率に関してはプラットフォームの開発や営業体制の強化など、投資も継続していく必要があると見ているため、10%程度を継続していくことを目標としているようだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 市場環境
コロナ禍の長期化に伴う訪日外国人の減少、あるいは海外旅行の機会が大幅に減少するなかで、英会話サービスに対する需要も一時的に鈍化しているものの、中長期的に見ればグローバル化の一段の進展や訪日外国人数の回復、また、小学校での英語教育の必修化などにより、市場は拡大基調が続くものと予想される。
企業向け市場については、ここ数年は横ばい水準が続いているが、割合としてはオンライン研修が伸びているものと見られる。コロナ禍により一時的に停滞しているものの、グローバル化に伴う海外の駐在員の増加や、国内でも海外企業との接点の増加、外国人材の増加などを背景に、英会話学習ニーズは今後も拡大していくと想定される。
教育機関向け市場については、学校では2020年度より小学5年生から英語授業が必修化されたほか、中学校・高等学校を含め、学習指導要領の改訂で英会話力の向上がより重視されるようになっており、教育機関でのオンライン英会話サービスの導入も今後、加速していくものと予想される。今後はオンラインでの英会話レッスン提供とオフラインでのALTによる指導の長所を組み合わせた個別最適化された学習の実現を目指していく。
「PROGOS」の普及によりアセスメントデータプラットフォームを構築、
中期売上目標300億円を目指す
2. 中期成長戦略
同社は今後の成長戦略として、「PROGOS」や各事業で収集されるデータを集約するアセスメントデータプラットフォームを競争優位の源泉として成長戦略の中心に据え、同プラットフォームを基盤として個人向け、法人向け、文教向けに品質の高い様々なサービスを提供していくことで事業を拡大していく戦略を目指す。このため、アセスメントデータプラットフォームを、量・質ともに他社の追随を許さないものにしていくことが、競争優位性を確立し、高成長を実現していくための重要な鍵を握っているとも言える。
(1) 個人向けサービス
個人向けサービスに関しては、アセスメントデータプラットフォームを他社サービスとも連携することで、ユーザーの英語力に合わせた最適なサービスのレコメンドを行い、ワンストップでサービスを提供できる総合英語学習サービスプロバイダーとして進化し、さらなる事業拡大を目指していく。例えば、スピーキング力を向上させたい人は「レアジョブ英会話」を、発音を矯正したいユーザーには発音矯正アプリを、文法を学びたい人には、参考書や学習ドリルなど、他社サービスも含めた学習教材のレコメンドを行うサービスを実現させる。利用者は、英語能力向上に向けた課題と最適な解決方法が同プラットフォームを通じて確認できることになり、同業他社に対して大きな差別化要因になると弊社では見ている。
(2) 法人向けサービス
法人向けサービスの成長に関しては、「PROGOS」をフックに、英語研修プログラムやグローバルリーダー研修プログラムのほか、キャリアサービス(人材紹介)や人事データサービスなど周辺サービス事業へ展開していくことで、事業成長を目指す。
そのためにも同社は短期間で「PROGOS」を一気に普及させたい考えで、2022年3月期中に年間受験回数100万回の達成を目標にしている。現在、企業の人事採用では英会話スキルの判断材料としてTOEIC(R)を採用しているケースがほとんどだが、TOEIC(R)の年間受験回数は2020年で約169万回の規模となっており、試験提供の開始から100万回に到達するまでに20年間かかっていることを考えると、同社サービスの優位性と本気度が感じられる。2021年5月時点で受験実施回数は数万回となっており、今後加速度的に増やしていく計画となっている。
同社では今後、「PROGOS」がTOEIC(R)に代替する英語試験の位置づけになることを目標としている。既に、既存の法人顧客への導入が進んでいるほか、2021年4月には中央大学が全学生2.5万人を対象としたプログラムとして「PROGOS」を採用し、利用を開始したことを発表している。グローバル人材の育成が教育分野でも目指す方向になってきており、その一環として、低コストかつオンラインで手軽に受験でき、結果もすぐ判明する利点が評価されたようで、今後、企業や大学でどの程度のペースで導入が進むか注目される。
また、(株)プロゴスでは、日本語のスピーキング力のアセスメントに関しても新たな取り組みを開始している。2021年5月に東京外国語大学と日本語スピーキング力学習プログラムの共同開発を行うことで基本合意したほか、同年6月には外国人材紹介や日本語教育で実績を持つ(株)JELLYFISHと合弁会社、バベルメソッド(株)を設立し、日本語スピーキング力学習プログラムの開発を進めていくことを発表した。現在、外国人材が日本での就労ビザを得るためには、日本語能力試験(JLPT)の認定をはじめ、一定レベルが必要とされているが、JLPTは日本語の「読む力」「聞く力」に重点を置いた試験で、「話す力」については、測定・証明する方法が無いという課題があった。今回、バベルメソッドにて、新たに日本語スピーキング力の学習プログラムを開発することで、これらの課題解決に取り組んでいく。また、東京外国語大学も学習プログラム開発の監修に携わり、2022年3月期中のサービス提供を目指している。ビジネスモデルとしては、(株)JELLYFISHから供給される外国人材を、バベルメソッドの学習プログラムを使って(株)プロゴスがアセスメントを行い、外国人材を求める企業(介護業界、メーカー、IT等)に対して、求められる能力に応じた即戦力人材を紹介し、その対価として紹介手数料を得る形となる。潜在的なニーズは大きいと見られるだけに、中長期的に同社の収益に貢献するものと期待される。
(3) 文教向け事業
文教市場に関しては、GIGAスクール構想で目標とされる個別最適な学びの実現に向けて、アセスメントによる学習状態の把握が必要になると見られることから、同社が構築するアセスメントデータプラットフォームを活用した個別最適学習サービスの提供に対する需要拡大が見込まれる。オンライン英会話レッスンとオフラインのALT派遣サービスの組み合わせで個別最適化された学習の実現を目指すことで、売上を伸ばしていくことになる。
(4) 海外事業
海外市場についても、「PROGOS」をアセスメントとして確立させ、競合優位性をもって展開していく構想を描いている。その足掛かりとして、2019年に出資したタイのオンライン英会話事業者Globish Academia (Thailand) Company Ltd.、及びインドのオンライン英会話事業者Multibhashi Solutions Pvt Ltd.に、追加出資を2021年4月に実施した。今後、両社を通じて「PROGOS」や「レアジョブ英会話」サービスの販売を進めていくことを目指している。「PROGOS」については、既にトライアルで利用が始まっているようで、今後の動向が注目される。また、海外市場についてはM&Aによる展開についても視野に入れている。
(5) 経営数値目標
同社では、中期的な売上目標として、個人向け、法人向け、文教向けで各100億円、合計で300億円の売上目標を打ち出した。海外向けに関してはまだ具体的な数字を積み上げる段階まで至っていないため、目標値には入れていないものの、インドやタイでの取り組みが進めば国内事業に上乗せされる。また、営業利益率に関してはプラットフォームの開発や営業体制の強化など、投資も継続していく必要があると見ているため、10%程度を継続していくことを目標としているようだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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