■今後の見通し
2. 今後の成長戦略
(1) 「横浜プロジェクト」「翠嵐プロジェクト」を継続
ステップ<9795>は予てから目標としてきた「横浜プロジェクト」「翠嵐プロジェクト」の3連覇を2021年に達成し、横浜・川崎エリアでの今後のシェア拡大に向け大きく前進したことになる。特に、横浜翠嵐高校は2021年春の大学受験で東大合格者数50名輩出したことでも注目されており、横浜・川崎エリアで生徒数を獲得していくうえで、合格実績トップの学習塾として確固たるブランド力を構築できたことは大きな意味を持つ。
「横浜プロジェクト」は、横浜市内公立高校トップ9校の合格者数合計で業界トップを獲るプロジェクトで、2019年にトップを奪取し、2021年は821名と2位以下との差を広げつつある。また、「翠嵐プロジェクト」は、湘南高校と並んで県内最難関公立高校である横浜翠嵐高校の合格者数でトップを獲得するプロジェクトとなり、こちらも2019年にトップを奪取して以降、安定して1位の座を確保している。2022年に向けても前述したように、横浜翠嵐を志望する生徒の入塾が増えていること、競合塾がやや弱体化していることを考えれば、その差はさらに広がっていくものと弊社では予想している。同社は今後も横浜・川崎エリアでのブランド力を強化していくいため、これら取り組みを継続していく方針だ。
(2) 新スクールの開校は川崎・横浜北部地域を中心に展開
今後の新スクールの進出地域は、現在、8スクールにとどまっている川崎市のほか、横浜北部・東部などでドミナント展開していく予定にしている。神奈川県内でも川崎市や横浜市北部地区、藤沢市は、今後10年以上、就学人口の増加が見込まれている。県内の公立中学校の地域別生徒数で見ると、川崎市と横浜北部地区で全体の33.0%を占めており(2020年5月時点)、今後10年間でその比率はさらに上昇することが予想される。このため、これらの地域で進学学習塾としての圧倒的なブランド力を確立し、スクールをドミナント展開して生徒数を獲得していくことで持続的な成長を実現していく戦略となっている。出校に関しては同社が強みとする教務力の品質を維持できる人材(教師・教室長)の育成が条件となるが、年間3~4校程度を目安としている。
従来はこれら地域で同社の条件にかなう不動産物件が見つかりにくかったが、コロナ禍の影響で経営体力のない学習塾等が撤退するケースも目立つようになってきており、同社にとってはスクール数を増やしていく好機と見ることもできる。実際、2021年春に新規開校した3スクールのうち、2スクールの物件はほかの学習塾が撤退した後の物件となっている。
(3) 高校生部門は3~4年に1校のペースで開校
高校生部門では、3~4年に1校を開校するペースを今後も継続していく方針となっている。授業の質を維持しながらスクールを増やしていくためには、教師のリソースのさらなる充実が必要であるためだ。ただ、2021年の大学合格実績で大躍進したことから、今後大学受験塾としても人気が高まる可能性がある。実際、高校1年生に関しては15校中10校がすでに定員に達し、募集を打ち切っている状況にある。講師の採用・育成がスムーズに進めば大きく成長する可能性もあるだけに、今後の動向が注目される。
(4) 学童保育は人材育成と組織体制の強化に取り組む
「STEPキッズ」では、湘南教室で構築したノウハウをほかの2教室で共有し、システム化していくことを当面の課題としている。コンテンツの内容・充実に関してはほかの学童保育と一線を画しており、あとはそれを支える人材育成と組織体制の構築が成長の鍵を握ることになる。保育に必要とされる人材は、学習塾の教師とは異なる部分も多い。子どもの可能性や潜在能力などを上手く引き出す力なども求められる。同社では「STEP」の女性講師で結婚後に育児休職から復帰してくる人材など、学童保育部門の適性に合った人材を育成する研修カリキュラムを作って、こうしたリソースを拡充していく予定にしている。現在は「湘南教室」で育成に取り組んでいる。
同社は2~3年後を目途に多校舎展開を可能にする組織体制を構築し、将来的には横浜や川崎など子ども人口の多いエリアへの進出を目指している。同社は、教室数として20前後まで展開していくことは可能と見ている。
(5) 人材採用・育成の強化
同社の場合、校舎数を拡大していくためには、教師となる人材の採用・育成を強化していくことが最も重要となる。採用については、新卒採用に加えて2017年より開始したリファラル採用(社員紹介入社)を強化している。同業他社からの入社も多く、会社の状況をある程度理解し共感して入社するので、通常の転職サイトや一般応募から入社する社員と比較して、仕事が進めやすく離職率も低くなるといった効果が期待できる。
新卒採用に関しては2021年春の約20名から2022年春はもう少し増やす計画で、中途採用も継続的に行っていく。従来の中途採用は年齢層で20~30代の若手クラスがほとんどであったが、最近は経験豊富な中核の人材を採用する機会も増えているようだ。ただ、こうした経験者であってもSTEPの学習指導方針に沿うように定期的に研修を実施している。若手社員については、早期戦力化を目的とした研修プログラムの見直しなども必要に応じて行っており、こうした努力が顧客満足度の高さや合格実績につながっており、同社の成長を支える基盤となっている。
(6) 運営方針と生徒募集活動、価格政策について
同社は今後も校舎数に関しては必要以上に拡大せず、「何よりも授業の質を大切にする」という基本方針を徹底させ、堅実な成長を目指していく方針となっている。またオンライン授業に対する考え方については、今後も対面型の集団ライブ授業を基本にサービス提供を行い、必要に応じてオンライン授業を併用する方針としている。2020年4~5月にコロナ禍で一時的にオンライン授業を行い、運用ノウハウも蓄積したが、オンラインでは生徒が「解る」授業は提供できても「できるようになる」ところまで持っていくのはハードルが高いことが分かったためである。このことは教師のみならず生徒や保護者の間でも再確認されており、改めて対面型のライブ授業を基本とし、展開していく。なお生徒の家庭の事情によりオンライン授業を希望する生徒がいる場合は、オンラインミーティング用のツールを活用してライブ授業を配信している。この場合は顧客事由のため授業料はライブ授業と同額にしている。一方で、ライブ授業が行えなくなり、全生徒がオンライン授業となる場合は特別料金を適用する可能性があるとしている。
生徒募集活動については従来、生徒や保護者からの口コミが中心で一部チラシ広告を行っていたが、今後はインターネットをメインとする体制に徐々に移行する。教室ごとのホームページを充実させており、最近では電話による問い合わせよりもインターネット経由の問い合わせが増えている。そのため、引き続きWeb活用を積極的に進めながら長期的なスタンスで生徒募集・校舎運営の体制づくりを行っていくことにしている。価格政策については、競合塾がディスカウント戦略を一部のエリアで仕掛けているものの、影響は出ていない。同社は今後も「高品質の授業とシステム」を「安売りせず」提供していく方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. 今後の成長戦略
(1) 「横浜プロジェクト」「翠嵐プロジェクト」を継続
ステップ<9795>は予てから目標としてきた「横浜プロジェクト」「翠嵐プロジェクト」の3連覇を2021年に達成し、横浜・川崎エリアでの今後のシェア拡大に向け大きく前進したことになる。特に、横浜翠嵐高校は2021年春の大学受験で東大合格者数50名輩出したことでも注目されており、横浜・川崎エリアで生徒数を獲得していくうえで、合格実績トップの学習塾として確固たるブランド力を構築できたことは大きな意味を持つ。
「横浜プロジェクト」は、横浜市内公立高校トップ9校の合格者数合計で業界トップを獲るプロジェクトで、2019年にトップを奪取し、2021年は821名と2位以下との差を広げつつある。また、「翠嵐プロジェクト」は、湘南高校と並んで県内最難関公立高校である横浜翠嵐高校の合格者数でトップを獲得するプロジェクトとなり、こちらも2019年にトップを奪取して以降、安定して1位の座を確保している。2022年に向けても前述したように、横浜翠嵐を志望する生徒の入塾が増えていること、競合塾がやや弱体化していることを考えれば、その差はさらに広がっていくものと弊社では予想している。同社は今後も横浜・川崎エリアでのブランド力を強化していくいため、これら取り組みを継続していく方針だ。
(2) 新スクールの開校は川崎・横浜北部地域を中心に展開
今後の新スクールの進出地域は、現在、8スクールにとどまっている川崎市のほか、横浜北部・東部などでドミナント展開していく予定にしている。神奈川県内でも川崎市や横浜市北部地区、藤沢市は、今後10年以上、就学人口の増加が見込まれている。県内の公立中学校の地域別生徒数で見ると、川崎市と横浜北部地区で全体の33.0%を占めており(2020年5月時点)、今後10年間でその比率はさらに上昇することが予想される。このため、これらの地域で進学学習塾としての圧倒的なブランド力を確立し、スクールをドミナント展開して生徒数を獲得していくことで持続的な成長を実現していく戦略となっている。出校に関しては同社が強みとする教務力の品質を維持できる人材(教師・教室長)の育成が条件となるが、年間3~4校程度を目安としている。
従来はこれら地域で同社の条件にかなう不動産物件が見つかりにくかったが、コロナ禍の影響で経営体力のない学習塾等が撤退するケースも目立つようになってきており、同社にとってはスクール数を増やしていく好機と見ることもできる。実際、2021年春に新規開校した3スクールのうち、2スクールの物件はほかの学習塾が撤退した後の物件となっている。
(3) 高校生部門は3~4年に1校のペースで開校
高校生部門では、3~4年に1校を開校するペースを今後も継続していく方針となっている。授業の質を維持しながらスクールを増やしていくためには、教師のリソースのさらなる充実が必要であるためだ。ただ、2021年の大学合格実績で大躍進したことから、今後大学受験塾としても人気が高まる可能性がある。実際、高校1年生に関しては15校中10校がすでに定員に達し、募集を打ち切っている状況にある。講師の採用・育成がスムーズに進めば大きく成長する可能性もあるだけに、今後の動向が注目される。
(4) 学童保育は人材育成と組織体制の強化に取り組む
「STEPキッズ」では、湘南教室で構築したノウハウをほかの2教室で共有し、システム化していくことを当面の課題としている。コンテンツの内容・充実に関してはほかの学童保育と一線を画しており、あとはそれを支える人材育成と組織体制の構築が成長の鍵を握ることになる。保育に必要とされる人材は、学習塾の教師とは異なる部分も多い。子どもの可能性や潜在能力などを上手く引き出す力なども求められる。同社では「STEP」の女性講師で結婚後に育児休職から復帰してくる人材など、学童保育部門の適性に合った人材を育成する研修カリキュラムを作って、こうしたリソースを拡充していく予定にしている。現在は「湘南教室」で育成に取り組んでいる。
同社は2~3年後を目途に多校舎展開を可能にする組織体制を構築し、将来的には横浜や川崎など子ども人口の多いエリアへの進出を目指している。同社は、教室数として20前後まで展開していくことは可能と見ている。
(5) 人材採用・育成の強化
同社の場合、校舎数を拡大していくためには、教師となる人材の採用・育成を強化していくことが最も重要となる。採用については、新卒採用に加えて2017年より開始したリファラル採用(社員紹介入社)を強化している。同業他社からの入社も多く、会社の状況をある程度理解し共感して入社するので、通常の転職サイトや一般応募から入社する社員と比較して、仕事が進めやすく離職率も低くなるといった効果が期待できる。
新卒採用に関しては2021年春の約20名から2022年春はもう少し増やす計画で、中途採用も継続的に行っていく。従来の中途採用は年齢層で20~30代の若手クラスがほとんどであったが、最近は経験豊富な中核の人材を採用する機会も増えているようだ。ただ、こうした経験者であってもSTEPの学習指導方針に沿うように定期的に研修を実施している。若手社員については、早期戦力化を目的とした研修プログラムの見直しなども必要に応じて行っており、こうした努力が顧客満足度の高さや合格実績につながっており、同社の成長を支える基盤となっている。
(6) 運営方針と生徒募集活動、価格政策について
同社は今後も校舎数に関しては必要以上に拡大せず、「何よりも授業の質を大切にする」という基本方針を徹底させ、堅実な成長を目指していく方針となっている。またオンライン授業に対する考え方については、今後も対面型の集団ライブ授業を基本にサービス提供を行い、必要に応じてオンライン授業を併用する方針としている。2020年4~5月にコロナ禍で一時的にオンライン授業を行い、運用ノウハウも蓄積したが、オンラインでは生徒が「解る」授業は提供できても「できるようになる」ところまで持っていくのはハードルが高いことが分かったためである。このことは教師のみならず生徒や保護者の間でも再確認されており、改めて対面型のライブ授業を基本とし、展開していく。なお生徒の家庭の事情によりオンライン授業を希望する生徒がいる場合は、オンラインミーティング用のツールを活用してライブ授業を配信している。この場合は顧客事由のため授業料はライブ授業と同額にしている。一方で、ライブ授業が行えなくなり、全生徒がオンライン授業となる場合は特別料金を適用する可能性があるとしている。
生徒募集活動については従来、生徒や保護者からの口コミが中心で一部チラシ広告を行っていたが、今後はインターネットをメインとする体制に徐々に移行する。教室ごとのホームページを充実させており、最近では電話による問い合わせよりもインターネット経由の問い合わせが増えている。そのため、引き続きWeb活用を積極的に進めながら長期的なスタンスで生徒募集・校舎運営の体制づくりを行っていくことにしている。価格政策については、競合塾がディスカウント戦略を一部のエリアで仕掛けているものの、影響は出ていない。同社は今後も「高品質の授業とシステム」を「安売りせず」提供していく方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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