■事業概要
5. 利益重視への方針転換
アイル<3854>は2017年7月期から利益重視の方針を打ち出し、開発・カスタマイズ時の品質管理強化や生産性向上、ストック項目の売上拡大などを重点施策として推進している。
開発・カスタマイズ時の品質管理強化や生産性向上としては、受注段階で営業と開発が連携を強化することでカスタマイズ工数を削減することや、トラブル未然防止に取り組むなど、総合的な品質・生産性向上策と売上総利益率上昇策を推進している。2020年7月期からは、組織変更によって営業とサポートを一体化(システム営業、システムサポート)し、連携を一段と強化している。また個別カスタマイズ対応を基本戦略とする一方で、カスタマイズの必要がない受注の拡大、品質・生産性向上によるリードタイム短縮などにより、さらなる売上総利益率の上昇を推進する方針だ。
さらにシステムソリューション事業におけるシステム保守サービス、Webソリューション事業における「CROSS MALL」及び「CROSS POINT」など、ストック売上が拡大基調であることも売上総利益率上昇につながっている。
2020年7月期のストック売上高は前期比14.9%増の4,588百万円、売上総利益は同15.6%増の2,397百万円、売上総利益率は同0.2ポイント上昇して52.2%となった。2020年7月期は特需の影響でストック項目の構成比が一時的に低下したが、売上高は拡大基調であり、全社ベースの利益率向上に寄与する流れに変化はない。
6. 売上総利益率が上昇基調
生産性向上への取り組みやストック項目の拡販を推進した結果、全社ベースの売上総利益率は2016年7月期の38.0%を直近ボトムとして上昇に転じ、2020年7月期には過去最高の44.7%まで上昇した。
なお売上総利益率は半期ベースでは一時的要因で変動する傾向があるため、通期ベースでの比較を基本とするが、参考値として2021年7月期第2四半期累計の売上総利益は、前年同期の特需の反動で減収となったにもかかわらず、半期ベースで過去最高の45.8%まで上昇している。
また同社は、全社ベースの固定費のうち給与の大部分をストック項目の売上総利益で賄える収益体制となったことから、さらにストック売上拡大を推進することによって、人件費・固定費を賄える体制を目指す方針としている。
7. ビジネスパートナーとのサービス連携強化
同社は、更なる売上成長と利益拡大に向けた施策として、既存製品のバージョンアップや、様々な分野でのビジネスパートナーとのサービス連携などの戦略を推進している。
既存製品のバージョンアップでは、2020年1月に基幹業務管理システム「アラジンオフィス」に生産管理オプションを追加した。これにより、製造業の顧客は自社に必要な生産管理機能を効率的にシステム化できるようになる。また、従来はカスタマイズで対応していた機能をオプションとして提供することで、同社にとってはSE工数削減と品質確保で粗利改善のメリットがある。
ビジネスパートナーとのサービス連携では、システムソリューション事業の基幹業務管理システム「アラジンオフィス」がラクス<3923>のWeb帳票発行システム「楽楽明細」と帳票データ連携(2019年11月)した。またBtoB EC・Web受発注システム「アラジンEC」はSBペイメントサービス(株)の決済サービスと連携(2019年11月)、さらにオービックビジネスコンサルタント(OBC)<4733>の「奉行クラウド」と連携(2020年8月)している。
Webソリューション事業の複数ECサイト一元管理ソフト「CROSS MALL」は、Zホールディングス<4689>の「PayPayモール」と受注・在庫・商品連携(2019年11月)、(株)フューチャーショップの「futureshop」のCMS機能に対応(2020年3月)、BASE<4477>の「BASE」と連携(2020年6月)、(株)ブレインウェーブの「はぴロジ」と連携(2020年7月)、ロジザード<4391>の「ロジザードZERO」と完全自動連携(2020年10月)、w2ソリューション(株)の「w2Commerce」と連携(2020年11月)、(株)ロジクラの「ロジクラ」と自動連携(2021年1月)、東日本旅客鉄道<9020>のECショッピングモール「JRE MALL」と連携(2021年3月)、丸井グループ<8252>のネット通販「マルイウェブチャネル」と連携(2021年3月)している。
また2020年7月には、提供するITサービスが経済産業省「IT導入補助金2020」に認定された。さらに2020年12月には、クラウド基盤マルチチャネルコマースプラットフォーム「Shopify」のパートナープログラム「Shopify Experts(ショッピファイエキスパート)」に認定された。
8. リスク要因・収益特性と対策
システム開発関連企業においては開発案件ごとの採算性で利益率が変動しやすく、収益面の一般的なリスク要因として案件大型化に伴う開発期間の長期化、人件費や外注費の増加、個別プロジェクトの不採算化などがある。ただし同社の場合はパッケージソフト開発・販売が主力のため、受託開発が主力のシステム開発会社に比べて個別プロジェクト不採算化のリスクは小さい。
同社の場合は、顧客に適合した柔軟な個別カスタマイズによって競合他社との差別化を図っていることが特徴のため、開発・カスタマイズ時における工数増加やバグ発生などが利益率低下要因となるが、この対策としては、既述のとおり利益重視の方針を打ち出し、営業と開発の連携強化によるカスタマイズ工数削減やトラブル未然防止への取り組みを推進するとともに、職場環境改善による品質・生産性向上などにも取り組んでいる。
またシステム開発関連企業においては、大型案件の売上計上や顧客側の検収の時期によって四半期業績が変動しやすいという収益特性がある。同社(7月期決算)の場合も、上期(8月~1月)よりも下期(2月~7月)に売上高が偏重する傾向がある。また販管費については、社員の入社やインセンティブなどの関係で、第4四半期(5~7月)に増加する傾向がある。
このような傾向に対して、受注の平準化及び継続的な保守サービス等の受注拡大により、売上計上時期偏重の是正に取り組んでおり、徐々に平準化が進展する見込みだ。なお2020年7月期及び2021年7月期については、特需要因及びその反動によって、四半期別及び半期別構成比がイレギュラーな形となっている。
なお、市場競合については、既述のとおりリアルとWebを1社で提案できる優位性や強みの結果、攻めの力も守りの力も強く、顧客企業数は増加基調である。この結果、圧倒的な競合勝率(2020年7月期91.8%)とユーザーリピート率(同98.3%)を誇っている。ソフトの個別カスタマイズに対応できる企業が減少傾向となっていることもあり、競合優位性は高いと言えるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
<YM>
5. 利益重視への方針転換
アイル<3854>は2017年7月期から利益重視の方針を打ち出し、開発・カスタマイズ時の品質管理強化や生産性向上、ストック項目の売上拡大などを重点施策として推進している。
開発・カスタマイズ時の品質管理強化や生産性向上としては、受注段階で営業と開発が連携を強化することでカスタマイズ工数を削減することや、トラブル未然防止に取り組むなど、総合的な品質・生産性向上策と売上総利益率上昇策を推進している。2020年7月期からは、組織変更によって営業とサポートを一体化(システム営業、システムサポート)し、連携を一段と強化している。また個別カスタマイズ対応を基本戦略とする一方で、カスタマイズの必要がない受注の拡大、品質・生産性向上によるリードタイム短縮などにより、さらなる売上総利益率の上昇を推進する方針だ。
さらにシステムソリューション事業におけるシステム保守サービス、Webソリューション事業における「CROSS MALL」及び「CROSS POINT」など、ストック売上が拡大基調であることも売上総利益率上昇につながっている。
2020年7月期のストック売上高は前期比14.9%増の4,588百万円、売上総利益は同15.6%増の2,397百万円、売上総利益率は同0.2ポイント上昇して52.2%となった。2020年7月期は特需の影響でストック項目の構成比が一時的に低下したが、売上高は拡大基調であり、全社ベースの利益率向上に寄与する流れに変化はない。
6. 売上総利益率が上昇基調
生産性向上への取り組みやストック項目の拡販を推進した結果、全社ベースの売上総利益率は2016年7月期の38.0%を直近ボトムとして上昇に転じ、2020年7月期には過去最高の44.7%まで上昇した。
なお売上総利益率は半期ベースでは一時的要因で変動する傾向があるため、通期ベースでの比較を基本とするが、参考値として2021年7月期第2四半期累計の売上総利益は、前年同期の特需の反動で減収となったにもかかわらず、半期ベースで過去最高の45.8%まで上昇している。
また同社は、全社ベースの固定費のうち給与の大部分をストック項目の売上総利益で賄える収益体制となったことから、さらにストック売上拡大を推進することによって、人件費・固定費を賄える体制を目指す方針としている。
7. ビジネスパートナーとのサービス連携強化
同社は、更なる売上成長と利益拡大に向けた施策として、既存製品のバージョンアップや、様々な分野でのビジネスパートナーとのサービス連携などの戦略を推進している。
既存製品のバージョンアップでは、2020年1月に基幹業務管理システム「アラジンオフィス」に生産管理オプションを追加した。これにより、製造業の顧客は自社に必要な生産管理機能を効率的にシステム化できるようになる。また、従来はカスタマイズで対応していた機能をオプションとして提供することで、同社にとってはSE工数削減と品質確保で粗利改善のメリットがある。
ビジネスパートナーとのサービス連携では、システムソリューション事業の基幹業務管理システム「アラジンオフィス」がラクス<3923>のWeb帳票発行システム「楽楽明細」と帳票データ連携(2019年11月)した。またBtoB EC・Web受発注システム「アラジンEC」はSBペイメントサービス(株)の決済サービスと連携(2019年11月)、さらにオービックビジネスコンサルタント(OBC)<4733>の「奉行クラウド」と連携(2020年8月)している。
Webソリューション事業の複数ECサイト一元管理ソフト「CROSS MALL」は、Zホールディングス<4689>の「PayPayモール」と受注・在庫・商品連携(2019年11月)、(株)フューチャーショップの「futureshop」のCMS機能に対応(2020年3月)、BASE<4477>の「BASE」と連携(2020年6月)、(株)ブレインウェーブの「はぴロジ」と連携(2020年7月)、ロジザード<4391>の「ロジザードZERO」と完全自動連携(2020年10月)、w2ソリューション(株)の「w2Commerce」と連携(2020年11月)、(株)ロジクラの「ロジクラ」と自動連携(2021年1月)、東日本旅客鉄道<9020>のECショッピングモール「JRE MALL」と連携(2021年3月)、丸井グループ<8252>のネット通販「マルイウェブチャネル」と連携(2021年3月)している。
また2020年7月には、提供するITサービスが経済産業省「IT導入補助金2020」に認定された。さらに2020年12月には、クラウド基盤マルチチャネルコマースプラットフォーム「Shopify」のパートナープログラム「Shopify Experts(ショッピファイエキスパート)」に認定された。
8. リスク要因・収益特性と対策
システム開発関連企業においては開発案件ごとの採算性で利益率が変動しやすく、収益面の一般的なリスク要因として案件大型化に伴う開発期間の長期化、人件費や外注費の増加、個別プロジェクトの不採算化などがある。ただし同社の場合はパッケージソフト開発・販売が主力のため、受託開発が主力のシステム開発会社に比べて個別プロジェクト不採算化のリスクは小さい。
同社の場合は、顧客に適合した柔軟な個別カスタマイズによって競合他社との差別化を図っていることが特徴のため、開発・カスタマイズ時における工数増加やバグ発生などが利益率低下要因となるが、この対策としては、既述のとおり利益重視の方針を打ち出し、営業と開発の連携強化によるカスタマイズ工数削減やトラブル未然防止への取り組みを推進するとともに、職場環境改善による品質・生産性向上などにも取り組んでいる。
またシステム開発関連企業においては、大型案件の売上計上や顧客側の検収の時期によって四半期業績が変動しやすいという収益特性がある。同社(7月期決算)の場合も、上期(8月~1月)よりも下期(2月~7月)に売上高が偏重する傾向がある。また販管費については、社員の入社やインセンティブなどの関係で、第4四半期(5~7月)に増加する傾向がある。
このような傾向に対して、受注の平準化及び継続的な保守サービス等の受注拡大により、売上計上時期偏重の是正に取り組んでおり、徐々に平準化が進展する見込みだ。なお2020年7月期及び2021年7月期については、特需要因及びその反動によって、四半期別及び半期別構成比がイレギュラーな形となっている。
なお、市場競合については、既述のとおりリアルとWebを1社で提案できる優位性や強みの結果、攻めの力も守りの力も強く、顧客企業数は増加基調である。この結果、圧倒的な競合勝率(2020年7月期91.8%)とユーザーリピート率(同98.3%)を誇っている。ソフトの個別カスタマイズに対応できる企業が減少傾向となっていることもあり、競合優位性は高いと言えるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
<YM>
関連銘柄
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2,749.0
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3923
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1,871.0
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+14.0
(+0.75%)
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4391
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1,150.0
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(+10.42%)
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2,529.0
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+24.0
(+0.95%)
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2,802.0
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