資源・新興国通貨4/5~9のポイント&注目通貨

著者:八代和也
投稿:2021/04/05 14:37

今週のポイント

RBA(豪中銀)は6日に政策会合を開きます。会合では、金融政策の現状維持が決定されるとみられ、その場合には声明における雇用情勢に関する見解や、フォワードガイダンス(将来の金融政策の方針をあらかじめ示したもの)に変化がみられるかに注目です。

メキシコの3月CPI(消費者物価指数)が8日に発表されます。BOM(メキシコ中銀)の利下げは今年2月で打ち止めとの観測が市場で浮上するなか、CPIが強い結果になれば、利下げ打ち止め観測は一段と高まるとみられます。

TCMB(トルコ中銀)のカブジュオール新総裁は3月30日に「インフレ率が現在のように高水準にある時は、引き締め的な金融政策が必要だ」と語りました。本当に引き締め的な政策をTCMBが続けるのか市場は疑問視しており、早期に利下げに転じるとの観測もあります。

5日、トルコの3月CPI(消費者物価指数)が発表されます。本稿執筆時点でCPIの結果は判明していませんが、市場予想の前年比16.11%を上回る結果になれば、市場はインフレ圧力の高まりへのTCMBの対応を試す動き(トルコリラ売り)になるかもしれません。

トルコリラは、エルドアン大統領の言動にも要注意です。TCMBの金融政策に介入する姿勢を示した場合、トルコリラは下押しする可能性があります。

今週の注目通貨ペア①:<豪ドル/NZドル 予想レンジ:1.06000NZドル~1.09500NZドル>

RBA(豪中銀)が6日に政策会合を開きます。会合では金融政策の現状維持が決定されるとみられ、声明の内容が相場材料になりそうです。

声明では、豪雇用情勢についてどのような見解が示されるのか、またフォワードガイダンス(将来の金融政策の方針をあらかじめ示したもの)に変化がみられるかに注目。前回会合の声明では後者について、「インフレ率が2~3%の目標範囲内に持続的に収まるまでは、利上げをしない」とし、少なくとも2024年まで利上げはないとの見通しを示しました。

豪州の失業率は改善傾向にあるものの、雇用維持給付金が3月末で終了しました。その影響が今後出てくるとみられ、声明では、雇用情勢の先行きについて慎重な見方が示されるかもしれません。また、前回と比べてフォワードガイダンスに変化がなければ、豪ドルは軟調に推移する可能性があります。豪ドル/NZドルは弱含むかもしれません。豪ドル/NZドルの目先のメドとして、下値が1.06396NZドル(2/26安値)、上値は1.09415NZドル(3/29高値)が挙げられます。

今週の注目通貨ペア➁<メキシコペソ/円 予想レンジ:5.200円~5.600円>

BOM政策金利とメキシコCPI
BOM政策金利とメキシコCPI出所:リフィニティブより作成

BOM(メキシコ中銀)は3月25日の会合で政策金利を4.00%に据え置きました。その決定が5人の政策メンバー全員一致で下されたことで、BOMの利下げは今年2月で打ち止めとの観測が浮上しました。

メキシコの3月CPI(消費者物価指数)が9日に発表されます。市場予想は前年比4.67%(本稿執筆時点)と、前月の3.76%から上昇率が加速してBOMのインフレ目標(3%)の許容範囲上限である4%を上回るとみられています。CPIが市場予想の通りとなるか、あるいはそれを上回れば、利下げ打ち止め観測は市場で一段と高まりそうです。その場合、メキシコペソ高材料になる可能性があります。

メキシコペソについては、原油価格(米WTI原油先物など)の動向にも目を向ける必要がありそうです。

OPEC(石油輸出国機構)加盟国と非加盟主要産油国で構成する「OPECプラス」は1日、協調減産の規模を5月から7月に段階的に縮小する(=産油量を増やす)ことで合意。減産の規模は5月に日量35万バレル、6月に35万バレル、7月に45万バレル縮小されます。

サウジアラビアは同じく1日、OPECプラスの協調減産とは別に実施している自主減産を段階的に終了させるとの方針を表明。5月に25万バレル、6月に35万バレル、7月に40万バレルと減産の規模を縮小し、計画通りなら自主減産は7月をもって終了します。

市場はOPECプラスやサウジアラビアの減産規模縮小の方針について、「原油の需要回復への自信の表れ」と受け止めたようです。ただ、減産規模の縮小によって原油の供給量が増加することは本来、原油価格の下押し材料と考えられます。そのことが市場で意識されれば、WTI原油先物は上値が重くなると考えられ、その場合にはメキシコペソは伸び悩む可能性があります。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想