豪ドル
RBA(豪中銀)の政策金利は現在0.10%。RBAは「マイナス金利を導入する可能性は非常に低い」とする一方、「早くても2024年まで利上げの条件は満たされない」と予想しており、政策金利は少なくとも2024年まで据え置かれるとの見通しを示しています。
ただ、RBAが金融政策運営において注視している失業率は改善傾向。20年7月に7.5%だった失業率は21年2月には5.8%へと低下しました。RBAとは異なり、市場は早ければ2022年終盤にも利上げが行われると予想しています。
豪州ではコロナの感染は抑えられており、景気は回復を続けるとみられます。失業率が改善し続ければ、市場では「RBAの利上げ時期は早まる」との観測が浮上する可能性があり、その場合には豪ドル/米ドルや豪ドル/円は堅調に推移しそうです。
一方で豪ドル/NZドルは、1.00000~1.15000NZドルの動きが継続すると予想されます。「RBNZ(NZ中銀)は、早ければ22年後半に利上げする」との観測が市場にはあり、RBAとRBNZの政策金利の方向性は大きくは変わらないと考えられるためです。
<注目点・イベントなど>
・RBA(豪中銀)の金融政策。RBAは失業率を注視。
・コロナの感染やワクチン普及の状況。
・米中関係、豪中関係、中国経済の動向(中国は豪州の主要輸出先)。
・資源(主に鉄鉱石)の価格動向。
NZドル
RBNZ(NZ中銀)の政策金利は現在0.25%です。RBNZはマイナス金利導入の選択肢を残しているものの、NZではコロナの感染は抑えられており、また経済指標はおおむね良好です。20年10-12月期の失業率は4.9%と、7-9月期の5.3%から改善。企業信頼感指数は20年4月のマイナス66.6から改善しており、21年1月と2月には2カ月連続でプラスとなりました。マイナス金利が導入さえる可能性は非常に低いと考えられます。
RBNZは一方で利上げする条件として、「CPI(消費者物価指数)上昇率が2%の目標中央値に維持され、また雇用が最大の持続可能水準に達するかそれを上回ると確信できること」としており、これらの条件を満たすには「かなりの時間と忍耐が必要だ」としています。
「RBNZの政策金利は、21年は据え置かれ、2022年後半に引き上げられる」との観測が市場にはあります。今後発表される経済指標でその観測が一段と高まる場合、NZドル高材料になる可能性があります。
NZドルは豪ドルと同様、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴もあります。コロナのワクチン接種が進んで世界の景気回復への期待が高まれば、リスクオンが強まる可能性があります。リスクオンはNZドル高材料と考えられます。
<注目点・イベントなど>
・RBNZ(NZ中銀)の金融政策。
・コロナのワクチン普及の状況。
・米中関係、中国経済の動向(中国はNZの主要輸出先)。
・乳製品(NZ最大の輸出品)の価格動向。
カナダドル
BOCは現在(3/29時点)、少なくとも週40億カナダドルのカナダ国債を買い入れるというQE(量的緩和)を実施しています。雇用統計など最近のカナダの経済指標はおおむね良好な結果となっており、早ければ4月21日の次回政策会合でQEの縮小を発表する可能性があります。米FRBなど他の主要国中銀のQE縮小はまだ先とみられるなか、BOCがいち早く縮小へと動くことは、カナダドル高材料となり得ます。
カナダドルは、原油価格の動向に影響を受けやすいという特徴もあります。代表的な指標である米WTI原油先物は3月8日に一時1バレル=67.98ドルへと上昇しました。原油価格が上昇を続ける場合、OPECプラスは協調減産の規模を縮小(=増産)する可能性はあるものの、コロナのワクチン接種が進んで世界景気が回復すれば、原油の需要は高まると考えられます。原油価格は堅調に推移するとみられ、カナダドルは底堅い展開になりそうです。
<注目点・イベントなど>
・BOC(カナダ中銀)の金融政策。
・資源(特に原油)価格の動向。
・米国の対カナダ政策。
トルコリラ
エルドアン・トルコ大統領は3月20日、アーバルTCMB(トルコ中銀)総裁を突然解任。後任にカブジュオール氏を充てました。
エルドアン大統領は「金利が下がれば、インフレ率は下がる」を持論とし、高金利には反対。エルドアン大統領が低金利を求めるなか、アーバル氏は20年11月に就任してからインフレの抑制に向けて積極的に利上げを実施。それを受けて中銀の独立性をめぐる懸念は後退し、それが20年11月以降のトルコリラ反発の主因でした。
カブジュオール新総裁はエルドアン大統領の考えに近いとされており、アーバル総裁(当時)の利上げ路線に批判的でした。市場では、TCMBは早ければ4月15日の次回会合で利下げし、その後も利下げを継続するとの観測があります。TCMBが実際にそのように行動すれば、独立性をめぐる懸念が市場で高まり、トルコリラには下押し圧力が加わりそうです。
<注目点・イベントなど>
・新総裁の下でのTCMB(トルコ中銀)の金融政策。
・トルコとEU、米国との関係。
・米FRBの金融政策に関する市場の観測。
・トルコの地政学リスク。
南アフリカランド
南アフリカランドは、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴があります。主要国でコロナワクチンの接種が進んで世界景気の回復への期待が高まれば、リスクオンが強まりそうです。リスクオンはランドにとってプラス材料です。
一方で南アフリカはエスコム(国営電力会社)の経営危機問題を抱えています。発電施設の老朽化やエスコムの資金不足により、南アフリカではたびたび計画停電が実施されており、21年3月も行われました。エスコムは国内電力の約9割を供給していることから、計画停電は景気に打撃を与えます。今後も計画停電が頻繁に行わるようなら、南アフリカ景気への懸念が市場で高まり、ランド安材料となるかもしれません。
米FRB(連邦準備理事会)の金融政策をめぐる観測にも注意が必要かもしれません。早期のテーパリング(量的緩和の縮小)観測が市場で強まる場合、独自の買い材料に乏しいランドは下押ししやすいとみられます。
<注目点・イベントなど>
・主要国でのワクチン普及の状況。
・エスコム(南アフリカの国営電力会社)の経営危機問題。
・米FRBの金融政策に関する市場の観測。
メキシコペソ
BOM(メキシコ中銀)は3月25日、政策金利を4.00%に据え置くことを決定。据え置きの決定は、5人の政策メンバー全員一致でした。
声明は「国内の経済活動は21年1月と2月に減速しており、外需による大幅な押し上げが見込まれるものの、予測期間全体にわたってかなりのスラック(需給の緩み)が予想される」との見方を示しました。
声明は一方で、「総合CPIとコアCPI(消費者物価指数)の短期的な道筋は、直近のインフレ報告で示した見通しを若干上回っている」と指摘。先行きについては、「20年のエネルギー価格下落の影響を一時的に受けるものの、2022年第2四半期(4-6月期)時点で3%の目標に収束するとみられる」としました。
***
今回の声明をみる限り、BOMが追加利下げする可能性は低下したとみられます。今回の据え置きの決定は全会一致であり、また3月前半のCPI(消費者物価指数)上昇率は4.12%と、BOMのインフレ目標(3%)の許容レンジ上限である4%を上回りました。今後は、比較対象となる前年の水準が低いことによるベース効果や、最近の原油価格上昇の影響によって、CPI上昇率は一段と上昇する可能性があります。
BOMの政策金利の水準が主要国中銀と比べて高い状況は、今後も続くとみられます。また、コロナのワクチン接種による世界景気の回復への期待から、原油価格(米WTI原油先物など)は堅調に推移しそうです。メキシコペソは上値を試す展開が想定されます。
<注目点・イベントなど>
・BOM(メキシコ中銀)の金融政策。
・資源(主に原油)価格の動向。
・米FRBの金融政策に関する市場の観測。
・米国とメキシコの関係。
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