■ムサシ<7521>の中長期成長戦略
選挙関連ビジネスを中心に既存事業を伸ばすことに注力するのは言うまでもないが、今後は特にメディアコンバート事業、選挙関連事業、業務用ろ過フィルター事業、社会インフラ画像診断サービス『ひびみっけ』事業の4分野に注力して業績を伸ばしていく方針だ。
1. メディアコンバート事業
同社のメディアコンバート事業の概要や特色は前述のとおりだが、加えて2019年に特殊なデジタル化技術を手に入れデジタルアーカイブ事業を強化した。具体的には、独自のデジタルアーカイブシステム「RoDA」(ロダ)のリリースである。このシステムはスキャナーやデジタルカメラで作成された高精細画像を美しい画質のまま効率的に圧縮・保存・利用することを可能にする技術だ。
デジタルカメラなどの性能向上により、美術品や古文書などの文化遺産を高精細画像にすることは容易だが、それらをインターネット上でスムーズに拡大しストレスなく閲覧することは実は簡単ではない。高精細画像を圧縮・保存・利用するための国際規格としてJPEG2000があるが、問題はこの規格に沿って画像の処理を行うと、非常に動作が重くなり実用性が著しく損なわれる点にある。新システム「RoDA」はこの点を解決する画期的な技術だ。
RoDAの効果は、大きく2つ挙げることができる。1つは他社との差別化だ。JPEG2000の規格を利用しようとする際は、RoDA技術を有する同社はほとんどのケースで検討対象に入ることとなり、そのうちのかなりの割合がRoDAを採用することになると期待される。2つ目はメディアコンバート事業にとっての新市場が創出されることだ。図書館・公文書館の文書や美術館・博物館の収蔵品の画像について、JPEG2000規格でのデジタル化を強力に推進することが可能となった。これらの事業が収益に本格的に貢献するまでには多少時間を要することが予想されるが、貴重な文化財の保存・保管に貢献するだけでなく、一般市民が貴重な文化財や美術品等に接する機会を増やすことは社会的な要請でもあるため、今後は全国の図書館や公文書館、博物館、美術館、自治体などへ積極的な営業展開を行う計画だ。
また需要サイドからもメディアコンバート事業の拡大が期待できる。今後のメディアコンバート事業全体の事業環境としては、以下のような状況が考えられる。
(1) 民間企業の需要
民間企業の需要は拡大傾向にあるが、その背景として以下4点が挙げられる。
a) 業務効率向上のためのIT化進展=財務・税務書類:電子化文書で保存可能
b) 「e文書法」施行(2005年4月)
c) 企業改革法(日本版SOX法)、個人情報保護法の施行:文書管理の強化
d) マイナンバー制度の運用
加えて、足元では経済に大きなダメージを与えているコロナ拡大防止策として「テレワーク」が急ピッチで拡大しつつある。しかしこのテレワークをより実効性のあるものにするためには、必要な文書やデータなどをデジタル化し、オフィスと同じ事務処理をリモートで行うことを可能にする環境整備が必要である。そのため、職種を問わずこれまで以上に様々な文書のデジタル化需要が拡大していることは事実である。同社ではこれらの需要を取り込むべく営業活動を強化している。
(2) 官公庁・自治体の需要
また、官公庁・自治体市場においても、「デジタル庁」の新設など政府が行政のデジタル化に向けて積極的な取り組みを進めており、文書や図面、資料などの電子化需要の拡大が見込まれている。政府が既に発表している内容では、2026年を目途に公文書の管理は全面的に電子化する目標となっている。また2026年に新しい国立公文書館が開館するため、その時期を目標として、公文書の作成から移管までをすべて電子化する計画になっている。実際には、官公庁や各自治体の職員が作成する文書は、ほぼ紙のためそのまま紙で保存されているが、それらを電子化することで、分類や整理する手間が大幅に省けるようになり、電子化には大きなメリットがある。よって、行政のデジタル化推進のため、文書などの電子化に対しては優先的な予算化が見込まれており、同社としても積極的に営業活動を展開していく計画だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
<NB>
選挙関連ビジネスを中心に既存事業を伸ばすことに注力するのは言うまでもないが、今後は特にメディアコンバート事業、選挙関連事業、業務用ろ過フィルター事業、社会インフラ画像診断サービス『ひびみっけ』事業の4分野に注力して業績を伸ばしていく方針だ。
1. メディアコンバート事業
同社のメディアコンバート事業の概要や特色は前述のとおりだが、加えて2019年に特殊なデジタル化技術を手に入れデジタルアーカイブ事業を強化した。具体的には、独自のデジタルアーカイブシステム「RoDA」(ロダ)のリリースである。このシステムはスキャナーやデジタルカメラで作成された高精細画像を美しい画質のまま効率的に圧縮・保存・利用することを可能にする技術だ。
デジタルカメラなどの性能向上により、美術品や古文書などの文化遺産を高精細画像にすることは容易だが、それらをインターネット上でスムーズに拡大しストレスなく閲覧することは実は簡単ではない。高精細画像を圧縮・保存・利用するための国際規格としてJPEG2000があるが、問題はこの規格に沿って画像の処理を行うと、非常に動作が重くなり実用性が著しく損なわれる点にある。新システム「RoDA」はこの点を解決する画期的な技術だ。
RoDAの効果は、大きく2つ挙げることができる。1つは他社との差別化だ。JPEG2000の規格を利用しようとする際は、RoDA技術を有する同社はほとんどのケースで検討対象に入ることとなり、そのうちのかなりの割合がRoDAを採用することになると期待される。2つ目はメディアコンバート事業にとっての新市場が創出されることだ。図書館・公文書館の文書や美術館・博物館の収蔵品の画像について、JPEG2000規格でのデジタル化を強力に推進することが可能となった。これらの事業が収益に本格的に貢献するまでには多少時間を要することが予想されるが、貴重な文化財の保存・保管に貢献するだけでなく、一般市民が貴重な文化財や美術品等に接する機会を増やすことは社会的な要請でもあるため、今後は全国の図書館や公文書館、博物館、美術館、自治体などへ積極的な営業展開を行う計画だ。
また需要サイドからもメディアコンバート事業の拡大が期待できる。今後のメディアコンバート事業全体の事業環境としては、以下のような状況が考えられる。
(1) 民間企業の需要
民間企業の需要は拡大傾向にあるが、その背景として以下4点が挙げられる。
a) 業務効率向上のためのIT化進展=財務・税務書類:電子化文書で保存可能
b) 「e文書法」施行(2005年4月)
c) 企業改革法(日本版SOX法)、個人情報保護法の施行:文書管理の強化
d) マイナンバー制度の運用
加えて、足元では経済に大きなダメージを与えているコロナ拡大防止策として「テレワーク」が急ピッチで拡大しつつある。しかしこのテレワークをより実効性のあるものにするためには、必要な文書やデータなどをデジタル化し、オフィスと同じ事務処理をリモートで行うことを可能にする環境整備が必要である。そのため、職種を問わずこれまで以上に様々な文書のデジタル化需要が拡大していることは事実である。同社ではこれらの需要を取り込むべく営業活動を強化している。
(2) 官公庁・自治体の需要
また、官公庁・自治体市場においても、「デジタル庁」の新設など政府が行政のデジタル化に向けて積極的な取り組みを進めており、文書や図面、資料などの電子化需要の拡大が見込まれている。政府が既に発表している内容では、2026年を目途に公文書の管理は全面的に電子化する目標となっている。また2026年に新しい国立公文書館が開館するため、その時期を目標として、公文書の作成から移管までをすべて電子化する計画になっている。実際には、官公庁や各自治体の職員が作成する文書は、ほぼ紙のためそのまま紙で保存されているが、それらを電子化することで、分類や整理する手間が大幅に省けるようになり、電子化には大きなメリットがある。よって、行政のデジタル化推進のため、文書などの電子化に対しては優先的な予算化が見込まれており、同社としても積極的に営業活動を展開していく計画だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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