■成長戦略・トピック
1. 同社成長の軌跡:第3フェーズを快走中
プレミアムウォーターホールディングス<2588>の成長の軌跡は大きく3つのフェーズに分かれる。第1フェーズは創業から2016年の経営統合までであり、「製販一体型経営の確立期」である。高品質なナチュラルミネラルウォーターの大規模製造やワンウェイの物流方式など、現在の同社の成長の礎を築いた時期と言えるだろう。一方で製造キャパシティに対して販売力が相対的に弱く、経営資源を生かし切れていないという課題もあった。第1フェーズ終盤の新規顧客獲得数は月6千件前後、解約件数も同程度であった。
第2フェーズは2016年7月の経営統合から2018年3月期末までの約2年間の時期「先行投資・顧客拡大期」である。経営統合により販売力(主にデモンストレーション販売)を強化した同社は、新規顧客開拓に優先して取り組んだ。同社のビジネスモデルの特性上、「投資回収型ストックビジネスモデル(前述)」のため、急な拡大をすればするほど期間損益はマイナスとなる。当フェーズを通じた新規顧客獲得数は月22千件前後、解約件数をそれ以下に抑制したため、この時期の純増は256千件に達する。一方で2期連続で営業損失を計上した。
第3フェーズは2019年3月期以降の「損益分岐点到達後・成長利益両立期」である。保有契約件数が一定以上に達し、損益分岐点を超えたため、経営が黒字化し、利益率が上昇しているフェーズである。当フェーズ(2019年3月期~2020年3月期)の新規顧客獲得数は月27千件前後にアップし、解約率をフィスコ試算で1.5%前後に低下させることに成功し、フェーズ開始から直近までの純増は479千件に達する。営業利益率は、2019年3月期に1.9%、2020年3月期に4.1%、2021年3月期第2四半期に7.8%と上昇している。コロナ禍で同社の成長力及び収益力はより高まっている。これは、消費者の在宅率や販売チャネルの多様化施策の奏功などがドライバーとなっていることによる。
今後に関しては、現状の中期経営計画がコロナ禍以前に作成されたものであるため、修正が予定されている。2021年3月期の通期予想は、売上収益及び各利益において、中期経営計画の2022年3月期数値を前倒しで達成している。同社はコロナ禍の動向を見極めた上で2021年3月期末前後に新たな中期経営計画を発表したい考えだ。
2. 新規顧客獲得チャネルの多様化
同社の近年の快進撃を支えるのが販売力であることは言を俟たない。販売チャネルの観点で見ると、その進化が明らかになる。販売手法別では、デモンストレーション販売、テレマーケティング、Webの3つに分かれる。デモンストレーション販売は、2016年の経営統合後の急成長の原動力であり、同社の大きな強みである。2021年3月期第1四半期の緊急事態宣言前後には商業施設の制限により販売機会が減少したが、その後は前年同期を上回る水準に回復し、上期においても約60%の新規顧客を獲得している。コロナ禍以前は大型家電量販店や大型ショッピングセンターが中心だったが、その後は小規模なスーパーマーケットでの展開を増やし、新たな顧客層の開拓に成功した。テレマーケティングは近年特に売上構成比を高めている手法である。コロナ禍における外出自粛・在宅ワーク増加などにより、アウトバウンドコールの接続率が向上しさらにその売上構成比は上昇した。Web経由は、主にアフィリエイト広告などインターネット経由で受注を獲得する手法である。売上構成比では全体の5%前後とまだ少ないが、上昇傾向である。顧客獲得コストとしては相対的に高いものの、じっくり他社と比較してから、納得して選択する顧客が多いため、LTV(life time value、生涯顧客価値、継続期間や月間消費量などを加味して算出)が高い。3つの手法は、ウィズコロナ時代に対応しながらそれぞれが成長を続けている。
また直間別(直接販売/取次店経由別)の視点も欠かせない。直接販売は、社内の人員による販売である。創業以来の製販一体型経営の方針で成長してきた同社にとって、これまでの主流の販売方法であり、新規顧客獲得件数全体の構成比で約55%(2020年3月期)である。社内の人材採用、教育、処遇などのシステムが確立しており、安定して件数を伸ばしてきた。2021年3月期は年12%増ペースで新規獲得数を伸ばす計画である。一方で著しい伸びが期待できるのが「取次店経由」チャネルである。宅配水業界No.1という認知が広がり、様々な企業からも取次販売の要望が来る状況となった。同社の商流としては、取次店より顧客の紹介を受け同社が契約するというものであり、紹介数に応じた手数料は発生するものの、効率的に顧客開拓をすることができる。2021年3月期は年38%増ペースで新規獲得数が伸びる計画である。安定成長モデルを確立している直接販売に取次店販売が加わり、増収及び増益のペースが加速している。
3. 岐阜県に全国6番目の水源を確保
同社は、2020年11月に、新たな宅配水の生産工場の建設のために岐阜県本巣郡の用地の購入を決定した。現在国内5ヶ所の工場にて宅配水の生産を行っているが、6番目の工場(水源)となる。新規顧客獲得が順調に進捗しており、保有契約件数が増加したため、将来の宅配水の出荷量の増加に備えるのが目的だ。また、物流戦略の観点からも東海地方への供給のみならず、関西、北陸、関東方面へも効率的な配送が可能となる。同社は水源を選定する際に、水の成分や安全性に独自の厳しい基準を設けている。特に硝酸・亜硝酸値の基準、水量(供給量)、水質、ミネラルバランス等にこだわり厳選しているため、これらの基準をクリアできる水源は多くはないのが実情である。2020年12月に契約締結、2021年1月に物件引き渡しを予定している。現在は更地であり、その後に新工場の建設工事が開始される予定だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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1. 同社成長の軌跡:第3フェーズを快走中
プレミアムウォーターホールディングス<2588>の成長の軌跡は大きく3つのフェーズに分かれる。第1フェーズは創業から2016年の経営統合までであり、「製販一体型経営の確立期」である。高品質なナチュラルミネラルウォーターの大規模製造やワンウェイの物流方式など、現在の同社の成長の礎を築いた時期と言えるだろう。一方で製造キャパシティに対して販売力が相対的に弱く、経営資源を生かし切れていないという課題もあった。第1フェーズ終盤の新規顧客獲得数は月6千件前後、解約件数も同程度であった。
第2フェーズは2016年7月の経営統合から2018年3月期末までの約2年間の時期「先行投資・顧客拡大期」である。経営統合により販売力(主にデモンストレーション販売)を強化した同社は、新規顧客開拓に優先して取り組んだ。同社のビジネスモデルの特性上、「投資回収型ストックビジネスモデル(前述)」のため、急な拡大をすればするほど期間損益はマイナスとなる。当フェーズを通じた新規顧客獲得数は月22千件前後、解約件数をそれ以下に抑制したため、この時期の純増は256千件に達する。一方で2期連続で営業損失を計上した。
第3フェーズは2019年3月期以降の「損益分岐点到達後・成長利益両立期」である。保有契約件数が一定以上に達し、損益分岐点を超えたため、経営が黒字化し、利益率が上昇しているフェーズである。当フェーズ(2019年3月期~2020年3月期)の新規顧客獲得数は月27千件前後にアップし、解約率をフィスコ試算で1.5%前後に低下させることに成功し、フェーズ開始から直近までの純増は479千件に達する。営業利益率は、2019年3月期に1.9%、2020年3月期に4.1%、2021年3月期第2四半期に7.8%と上昇している。コロナ禍で同社の成長力及び収益力はより高まっている。これは、消費者の在宅率や販売チャネルの多様化施策の奏功などがドライバーとなっていることによる。
今後に関しては、現状の中期経営計画がコロナ禍以前に作成されたものであるため、修正が予定されている。2021年3月期の通期予想は、売上収益及び各利益において、中期経営計画の2022年3月期数値を前倒しで達成している。同社はコロナ禍の動向を見極めた上で2021年3月期末前後に新たな中期経営計画を発表したい考えだ。
2. 新規顧客獲得チャネルの多様化
同社の近年の快進撃を支えるのが販売力であることは言を俟たない。販売チャネルの観点で見ると、その進化が明らかになる。販売手法別では、デモンストレーション販売、テレマーケティング、Webの3つに分かれる。デモンストレーション販売は、2016年の経営統合後の急成長の原動力であり、同社の大きな強みである。2021年3月期第1四半期の緊急事態宣言前後には商業施設の制限により販売機会が減少したが、その後は前年同期を上回る水準に回復し、上期においても約60%の新規顧客を獲得している。コロナ禍以前は大型家電量販店や大型ショッピングセンターが中心だったが、その後は小規模なスーパーマーケットでの展開を増やし、新たな顧客層の開拓に成功した。テレマーケティングは近年特に売上構成比を高めている手法である。コロナ禍における外出自粛・在宅ワーク増加などにより、アウトバウンドコールの接続率が向上しさらにその売上構成比は上昇した。Web経由は、主にアフィリエイト広告などインターネット経由で受注を獲得する手法である。売上構成比では全体の5%前後とまだ少ないが、上昇傾向である。顧客獲得コストとしては相対的に高いものの、じっくり他社と比較してから、納得して選択する顧客が多いため、LTV(life time value、生涯顧客価値、継続期間や月間消費量などを加味して算出)が高い。3つの手法は、ウィズコロナ時代に対応しながらそれぞれが成長を続けている。
また直間別(直接販売/取次店経由別)の視点も欠かせない。直接販売は、社内の人員による販売である。創業以来の製販一体型経営の方針で成長してきた同社にとって、これまでの主流の販売方法であり、新規顧客獲得件数全体の構成比で約55%(2020年3月期)である。社内の人材採用、教育、処遇などのシステムが確立しており、安定して件数を伸ばしてきた。2021年3月期は年12%増ペースで新規獲得数を伸ばす計画である。一方で著しい伸びが期待できるのが「取次店経由」チャネルである。宅配水業界No.1という認知が広がり、様々な企業からも取次販売の要望が来る状況となった。同社の商流としては、取次店より顧客の紹介を受け同社が契約するというものであり、紹介数に応じた手数料は発生するものの、効率的に顧客開拓をすることができる。2021年3月期は年38%増ペースで新規獲得数が伸びる計画である。安定成長モデルを確立している直接販売に取次店販売が加わり、増収及び増益のペースが加速している。
3. 岐阜県に全国6番目の水源を確保
同社は、2020年11月に、新たな宅配水の生産工場の建設のために岐阜県本巣郡の用地の購入を決定した。現在国内5ヶ所の工場にて宅配水の生産を行っているが、6番目の工場(水源)となる。新規顧客獲得が順調に進捗しており、保有契約件数が増加したため、将来の宅配水の出荷量の増加に備えるのが目的だ。また、物流戦略の観点からも東海地方への供給のみならず、関西、北陸、関東方面へも効率的な配送が可能となる。同社は水源を選定する際に、水の成分や安全性に独自の厳しい基準を設けている。特に硝酸・亜硝酸値の基準、水量(供給量)、水質、ミネラルバランス等にこだわり厳選しているため、これらの基準をクリアできる水源は多くはないのが実情である。2020年12月に契約締結、2021年1月に物件引き渡しを予定している。現在は更地であり、その後に新工場の建設工事が開始される予定だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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