[資源・新興国通貨12/14~18の展望] 豪ドルは一段と上昇するか!?

著者:八代和也
投稿:2020/12/11 15:22

豪ドル

豪ドルは今週(12/7- )、2018年6月以来、対円で2019年5月以来の高値へと上昇。豪州の堅調な経済指標や鉄鉱石価格の上昇が、豪ドルの支援材料となりました。NABの11月の企業景況感指数は2018年11月以来、同企業信頼感指数は2018年1月以来の高水準を記録。大連商品取引所の鉄鉱石先物は、2013年10月の取引開始以降の最高値をつけました。

足もとの鉄鉱石価格上昇の背景には中国の需要増への期待があり、鉄鉱石価格が一段と上昇すれば、豪ドルは引き続き堅調に推移しそうです。

15日のRBA(豪中銀)議事録(12/1会合分)や17日の豪州の11月雇用統計も材料になるかもしれません。それらを受けてRBAの追加緩和観測が後退すれば、豪ドルのサポート要因になりそうです。目先の上値メドとして、豪ドル/米ドルは0.76740米ドル(2018/6高値)、豪ドル/円は80.000円(心理的節目)が挙げられます。

NZドル

NZドルが足もとで堅調に推移している要因として、リスクオンの動きが挙げられます。コロナワクチンの普及や米国の追加経済対策への期待が市場にあり、またNYダウ(米国の主要株価指数)は史上最高値圏で推移しています。

米国などではコロナの感染が拡大しているものの、市場はそのことよりも「ワクチンが普及すれば世界景気は持ち直す」との期待の方が大きいようです。

リスクオンの流れは当面続く可能性があり、その場合にはNZドルは堅調に推移するとみられます。17日発表のNZの7-9月期GDPの結果を受けて、RBNZ(NZ中銀)のマイナス金利導入観測が一段と後退すれば、NZドルは一段と底堅くなりそうです。NZドル/米ドルは0.73900米ドル(2018/4高値)、NZドル/円は76.730円(2019/3高値)に向けて上昇する可能性があります。

カナダドル

カナダドルは今週(12/7- )、対米ドルで2018年4月以来、対円で2020年2月以来の高値をつけました。

足もとのカナダドル高の背景として、カナダの主力輸出品である原油の価格上昇が挙げられます。原油価格の代表的な指標である米WTI原油先物は今週、2020年3月以来の高値を記録しました。

BOC(カナダ中銀)が足もとのカナダドル高に対して懸念を示さなかったことも、カナダドルにとってプラス材料と考えられます。BOCは9日の会合時の声明で、「米ドルの広範な下落がカナダドルのさらなる上昇に寄与している」との見方を示しただけでした。

堅調な原油価格やBOCが自国通貨高に懸念を示さなかったことを背景に、カナダドルは引き続き上値を試す展開になる可能性があります。その場合、カナダドル/円は84.699円(2020/2高値)が上値メドになりそうです。

トルコリラ

米国とEUがトルコに対して制裁を科すかどうかが、トルコリラの動向に影響を与えそうです。

「トルコがS400(ロシア製地対空ミサイルシステム)を購入したことをめぐり、トランプ米政権はトルコに制裁を科すことを計画している」との報道があります。トルコがS400を導入すればNATO(北大西洋条約機構)の機密情報がロシアに漏洩するおそれがあるとして、米国はかねてよりトルコに対してS400の計画を破棄するように要求。そうしなければ、制裁を科す可能性があると警告してきました。

EUは10日と11日にサミット(首脳会議)を開催。首脳会議では、東地中海におけるトルコの海底資源探査問題をめぐり、対トルコ制裁について判断するとみられます。

米国やEUが対トルコ制裁へと動けば、トルコリラに対して下押し圧力が加わりそうです。リラ/円は過去最安値の11.998円に向けて下がるかもしれません。

南アフリカランド

南アフリカランドは今週(12/7- )、対米ドルで2020年2月以来、対円で同3月以来の高値を記録。市場でリスクオンの動きが強まっていることや、南アフリカの7-9月期GDPが前期比年率66.1%と、市場予想の52.6%を上回り、ランドの支援材料となりました。

来週(12/14- )発表の南アフリカの主要経済指標は、15日の11月PPI(生産者物価指数)。ただ、市場の関心は南アフリカの物価動向にはほとんど向いておらず、PPIは材料として力不足の感があります。

投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)にランドは引き続き影響を受けやすいとみられます。リスクオンの動きが一段と強まれば、ランドはさらに上昇し、ランド/円は7.037円(2020/3高値)を超える可能性があります。

メキシコペソ

BOM(メキシコ中銀)は17日に政策会合を開きます。その結果がメキシコペソの動向に影響を与えそうです。

BOMは11月12日の前回会合で、2019年8月以降11会合連続で行ってきた利下げを停止し、政策金利を4.25%に据え置くことを決定。声明では、利下げを停止した理由を「インフレの軌道が目標へと収束するのを確認するため」と説明しました。

メキシコの11月CPI(消費者物価指数。12/9発表)は前年比3.33%と、前月の4.09%から上昇率が鈍化。BOMのインフレ目標(3%)の許容レンジの2~4%内に4カ月ぶりに収まりました。

CPI上昇率の鈍化は、BOMの利下げ再開の可能性が高まることを示唆します。ただし、メキシコ国立統計地理情報院は11月のCPI上昇率の鈍化について、「毎年恒例のセールに伴う安売りの影響が大きい」と指摘。セールは例年数日(昨年は4日間)で終わるものの、今年は混雑を緩和するために12日間実施されました。

BOMは17日の会合で政策金利を据え置くとの見方が市場では有力。ただ、利下げするとの予想も一部にあります。そのため、BOMがどのような決定を下したとしても、メキシコペソが反応するとみられ、据え置きが決定された場合にはペソが堅調に推移しそうです。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想