豪ドル
豪ドルには、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)に影響を受けやすいという特徴があります。
米大統領選でバイデン氏の勝利が確実視されて米政治の先行き不透明感が後退しており、市場ではコロナのワクチン開発進展への期待があります(リスクオン要因)。
一方で、トランプ米大統領は12日に「中国人民解放軍が所有または支配していると見なされる中国企業に米投資会社などが投資するのを禁止する」との大統領令に署名。米国と中国の関係が悪化するおそれがあります。また、欧米でコロナの感染者が拡大しています(いずれもリスクオフ要因)。
リスクオフ要因が市場でより強く意識された場合、豪ドルは軟調な展開が想定されます。
来週(11/16- )は、17日にRBA(豪中銀)議事録、19日に10月豪雇用統計が発表されます。それらの結果を受け、RBAの金融政策の先行きに関する市場の見方が変化すれば、豪ドルが反応する可能性があります。
NZドル
RBNZ(NZ中銀)は11日、政策金利を0.25%に据え置くことを決定。大規模資産購入プログラムの規模(最大1000億NZドル)も維持しました。
一方で、「FLP(資金供給プログラム)を12月に開始する」と発表。オアRBNZ総裁はFLP開始の理由を「(FLPによって)銀行の資金調達金利が下がれば、より低金利の融資が増加すると見込まれるため」と説明しました。
オア総裁は会合後の会見で「マイナス金利の可能性が低下したのかについて語るのは、時期尚早だ」と述べつつも、「8月以降の国内や世界の経済活動は、当初想定したよりも回復力がある」と指摘。「政策金利を2021年3月まで据え置くというコミットは継続している」と語りました。
オア総裁がNZ景気や世界景気に対して比較的楽観的な見方を示したことや、政策金利を2021年3月まで据え置く方針に変わりはないと述べたことで、市場ではRBNZがマイナス金利を導入するとの観測が後退しました。
NZの7-9月期GDP(国内総生産)の発表は12月17日、RBNZの次回定例会合は2021年2月24日と、いずれもまだ先です。目先、RBNZのマイナス金利導入観測が再び高まることは考えにくく、金融政策見通しから見ればNZドルはサポートされやすいとみられます。
一方で、豪ドルと同様にNZドルは投資家のリスク意識の変化を反映しやすいという特徴があります。リスクオフはNZドルにとってマイナス材料です。
カナダドル
カナダドルは9日、対米ドルで2018年10月以来の高値を記録。対円も同じく9日に約2カ月ぶりの高値をつけました。米大統領選でバイデン氏の勝利が確実視されて米政治の先行き不透明感が後退したことや、コロナのワクチン開発への期待から、リスクオフの動きが弱まり、米ドルや円が全般的に弱含んだためと考えられます。
カナダドルは当面、米ドルや円など他通貨の動向に影響を受けやすいとみられます。欧米でコロナの感染者がこのところ急増しており、市場がそのことを強く意識すれば、リスクオフが再び強まる可能性があります。その場合、米ドル高や円高の裏返しでカナダドルは弱含むかもしれません。
原油価格の代表的な指標である米WTI原油先物は、5カ月あまりにわたって35~45ドルのレンジで上下動を繰り返しており、方向感を失っている状況です。
OPEC(石油輸出国機構)加盟国とロシアなど非加盟産油国で構成する「OPECプラス」は、現在日量770万バレルの協調減産を実施中。減産の規模は2021年1月から570万バレルに縮小する予定ですが、原油需要は低迷が続くと見込まれるため、現在の770万バレルを維持する(減産規模の縮小を見送る)との見方があります。
OPECプラスの閣僚監視委員会が17日、OPECプラスの会合が11月30~12月1日に開かれます。OPECプラスの減産をめぐる報道や観測に、WTI原油先物が反応する可能性があります。WTI原油先物が前述のレンジの上下いずれかを抜けた場合、カナダドル相場に影響を与えそうです。
トルコリラ
トルコリラは今週(11/9- )、対米ドルや対円で反発。リラ/円は1カ月半ぶりの高値をつけました。アーバルTCMB(トルコ中銀)新総裁やエルドアン大統領の発言を受け、市場ではTCMBが19日の会合で大幅な利上げに踏み切るとの期待が高まったためです。
アーバル総裁は9日、「TCMBは物価安定の目標を達成するため、あらゆる政策ツールを躊躇なく使用する」と表明。エルドアン大統領は11日、中銀には物価安定のための政策を決定する義務があり、新総裁は経済の主要目標に沿って透明性のあるツールを使用すると信じている」と語りました。
19日のTCMB会合の結果がリラの今度の動向に大きな影響を与えそうです。市場では4~6%利上げするとの見方もあります。利上げ期待が高まっている分、期待外れ(利上げ幅が小幅)だった場合に失望(リラ売り)も大きくなる可能性があり、要注意です。
南アフリカランド
南アフリカの9月鉱業生産は前年比マイナス2.8%、7-9月期失業率は30.8%でした。鉱業生産は6カ月連続でマイナスとなり、失業率は4-6月期の23.3%から大きく悪化。これらは南アフリカ景気の低迷が続く可能性を示します。
ただ、足もとのランドは南アフリカの経済指標以上に投資家のリスク意識の変化に反応しやすく、こうした地合いは当面続くとみられます。ランドにとってリスクオンはプラス材料、リスクオフはマイナス材料です。
19日にSARB(南アフリカ中銀)が政策金利を発表します。市場は政策金利の据え置きを予想しており、その通りの結果になれば、ランドに大きな反応はみられないかもしれません。
メキシコペソ
BOM(メキシコ中銀)は12日、政策金利を4.25%に据え置くことを決定。BOMは2018年8月以降、11会合連続で利下げしましたが、今回利下げを見送りました。据え置きは4対1の賛成多数で決定され、決定に反対した1人は0.25%の利下げを主張しました。
BOMは声明で「利下げの一時停止は、インフレの軌道が目標に収束するのを確認するために必要な余地をもたらす」と表明。メキシコのCPI(消費者物価指数)はBOMの目標を上回り続けており、政策金利を据え置いたのはインフレの動向を見極めるためとみられます。
BOMのインフレ目標は3%、その上下1%(2~4%)が許容レンジ。10月のCPIは前年比4.09%でした。
主要国中銀に比べてBOMの政策金利水準は高いうえ、BOMは今回政策金利を据え置きました。金融政策面からメキシコペソはサポートされやすいと考えられます。ペソの次の独自材料として挙げられるのは、24日発表の11月前半のCPI。前年比の上昇率が10月前半の4.09%から加速した場合、BOMの利下げ局面は終了したとの観測が市場で高まってペソは底堅さを増しそうです。
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