■業績動向
2. 事業セグメント別動向
(1) Object Browser事業
Object Browser事業の売上高は前年同期比16.1%減の327百万円、営業利益は同38.1%減の107百万円となった。主力製品の「Object Browser」シリーズの販売が、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で企業の購買意欲が低下し、大幅に減少したことに加えて、「OBPM」も販売形態がオンプレミス型からクラウドサービス型へ移行している影響で※、一時的に売上高が落ち込んだことが減収減益要因となった。
※ 2021年2月期より200ライセンス以下の案件はクラウド型のみの販売とし、200ライセンス超の案件についてもクラウド主体の営業活動を実施している。2022年2月期以降はすべてクラウド型での販売となる。
「Object Browser」シリーズの販売については、政府の緊急事態宣言が発出された4~5月に前年同月比で約5割減の水準まで落ち込み、6~8月以降も2~3割減と低迷が続いた。景況感の悪化により、企業の投資意欲が冷え込んでいることが背景にあると見られる。
「OBPM」は販売形態がクラウドサービス型にシフトしていることが売上高の目減りにつながっており、システムインテグレータ<3826>ではマイナス影響は今後2~3年程度続くと試算している。また、機能がPMBOKの一部に限定されるもののフリーミアムモデル※1で同様の製品を提供する企業が出てきたことも減収要因となっている可能性がある。PMBOKの一部機能だけで良いという企業もあり、こうした企業がフリーミアム型の製品を利用している。こうした状況下において同社は契約件数のさらなる拡大を図るべく、2020年7月より中小企業向けERP製品「勘定奉行クラウド※2」と連携する「奉行API連携オプション」の販売を開始した。API連携することで「勘定奉行クラウド」のユーザーに対して「OBPM」の導入が進みやすくなる。今後もAPI連携については広げていく意向となっている。
※1 フリーミアムモデルとは、基本的なサービス・製品を無料で提供し、さらに高度な機能や特別な機能については料金を課金する仕組みのビジネスモデルを指す。
※2 オービックビジネスコンサルタント<4733>のERP製品で、中堅・中規模向けERPでシェアNo.1の導入事績を誇るクラウド会計システム。
アプリケーション設計ツールの「OBDZ」については、2019年6月にパフォーマンスを大幅に向上した完全Web版(月額課金モデル)をリリースして以降、着実に導入社数が増加しており、直近では100社に届く水準まで増えていると見られる(前期末は60社)。会社ホームページへのアクセス数も多く、早晩100社を超えるものと期待される。
(2) E-Commerce事業
E-Commerce事業の売上高は前年同期比16.1%減の336百万円、営業利益は同48.5%減の54百万円と減収減益に転じた。EC市場は拡大しているものの、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う政府の緊急事態宣言が4月に発出されたことによって、顧客の意志決定スピードが鈍化し、新規受注予定案件の契約タイミングが遅れ、開発案件の開始時期が下期にずれ込んだこと、また、開発要員の稼働率が低下したことなどが減収減益要因となった。
なお、同社では製品の競争力強化を図るため、第三者機関によるセキュリティ診断を受けセキュリティ強化を図った「SI Web Shopping Ver.12.8」を2020年6月にリリースしたほか、キャッシュレス決済サービスに対応すべく、「PayPay」との標準連携機能も同年9月にリリースしており、今後の受注獲得につなげていく考えだ。
(3) ERP・AI事業
ERP・AI事業の売上高は前年同期比28.5%増の1,471百万円、営業利益は同93.7%減の1百万円となった。売上高は豊富な受注残を背景にERP事業が同28.3%増の1,468百万円と大きく伸長したことで増収となったが、既述の通り大型の不採算案件発生により受注損失引当金127百万円を計上したことが減益要因となった。受注損失引当金の影響を除けば、営業利益は同376.3%増の129百万円となっており、収益性も大きく改善していたことになる。
なお、今回同社ではERP事業とAI事業に分けて業績開示を行っている。ERP事業の売上高については前年同期比28.3%増の1,468百万円、営業利益は同30.7%減の52百万円(受注損失引当金を除けば同138.7%増の179百万円)となっている。製造業を中心にERPの投資ニーズは引き続き旺盛に推移している。2019年8月に製造業での生産、販売、据付・設置、アフターサービスの業態に一気通貫で対応できる各種アドオンモジュール(生産管理、工事管理、原価管理等)のバージョンアップ及び新規リリースを行った効果が継続しているものと見られる。また、同社は自らが「GRANDIT」と「OBPM」を連携させ、「継続取引管理アドオンモジュール」も利用したうえで、IT企業における理想的な合理化モデルを実現しており、この連携モデルを「ITテンプレート」として製品化し、IT企業向けに拡販を進めている。なお、2019年3月より「GRANDIT」のサブスクリプションモデルの提供を開始しており、販売ターゲットを中小企業まで広げる取り組みも進めているが、こちらについてはまだ目立った実績は出ていないようで、今後の課題となっている。
AI事業については売上高で2百万円(前年同期は無し)、営業損失で51百万円(前年同期は48百万円の損失)となった。「AISI∀-AD」(ディープラーニング異常検知システム)は、工場の目視検査工程用として多くの企業から引き合いを受け(対象検査物は、輸送機器用部品、ペットボトルのキャップ、電設資材、フィルム製品等)、案件をこなしながらノウハウを蓄積して製品強化及びソリューション力の向上に取り組んでいる段階にある。営業人員3名、開発人員9名の体制で各種案件に取り組んでいるため、まだ先行投資段階であるものの、徐々に製造現場での実用化に向けた商談も増え始めている。
(4) その他
その他の事業には、プログラミングスキル判定サービスの「TOPSIC」とその他の研究開発投資が含まれている。「TOPSIC」の売上高は16百万円(前年同期は15百万円)、営業損失は22百万円(同26百万円の損失)となった。新型コロナウイルス感染症の影響もあって解約が発生したものの、新規契約件数の増加でカバーし、導入社数は132社に拡大、売上高は若干の増収となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<NB>
2. 事業セグメント別動向
(1) Object Browser事業
Object Browser事業の売上高は前年同期比16.1%減の327百万円、営業利益は同38.1%減の107百万円となった。主力製品の「Object Browser」シリーズの販売が、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で企業の購買意欲が低下し、大幅に減少したことに加えて、「OBPM」も販売形態がオンプレミス型からクラウドサービス型へ移行している影響で※、一時的に売上高が落ち込んだことが減収減益要因となった。
※ 2021年2月期より200ライセンス以下の案件はクラウド型のみの販売とし、200ライセンス超の案件についてもクラウド主体の営業活動を実施している。2022年2月期以降はすべてクラウド型での販売となる。
「Object Browser」シリーズの販売については、政府の緊急事態宣言が発出された4~5月に前年同月比で約5割減の水準まで落ち込み、6~8月以降も2~3割減と低迷が続いた。景況感の悪化により、企業の投資意欲が冷え込んでいることが背景にあると見られる。
「OBPM」は販売形態がクラウドサービス型にシフトしていることが売上高の目減りにつながっており、システムインテグレータ<3826>ではマイナス影響は今後2~3年程度続くと試算している。また、機能がPMBOKの一部に限定されるもののフリーミアムモデル※1で同様の製品を提供する企業が出てきたことも減収要因となっている可能性がある。PMBOKの一部機能だけで良いという企業もあり、こうした企業がフリーミアム型の製品を利用している。こうした状況下において同社は契約件数のさらなる拡大を図るべく、2020年7月より中小企業向けERP製品「勘定奉行クラウド※2」と連携する「奉行API連携オプション」の販売を開始した。API連携することで「勘定奉行クラウド」のユーザーに対して「OBPM」の導入が進みやすくなる。今後もAPI連携については広げていく意向となっている。
※1 フリーミアムモデルとは、基本的なサービス・製品を無料で提供し、さらに高度な機能や特別な機能については料金を課金する仕組みのビジネスモデルを指す。
※2 オービックビジネスコンサルタント<4733>のERP製品で、中堅・中規模向けERPでシェアNo.1の導入事績を誇るクラウド会計システム。
アプリケーション設計ツールの「OBDZ」については、2019年6月にパフォーマンスを大幅に向上した完全Web版(月額課金モデル)をリリースして以降、着実に導入社数が増加しており、直近では100社に届く水準まで増えていると見られる(前期末は60社)。会社ホームページへのアクセス数も多く、早晩100社を超えるものと期待される。
(2) E-Commerce事業
E-Commerce事業の売上高は前年同期比16.1%減の336百万円、営業利益は同48.5%減の54百万円と減収減益に転じた。EC市場は拡大しているものの、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う政府の緊急事態宣言が4月に発出されたことによって、顧客の意志決定スピードが鈍化し、新規受注予定案件の契約タイミングが遅れ、開発案件の開始時期が下期にずれ込んだこと、また、開発要員の稼働率が低下したことなどが減収減益要因となった。
なお、同社では製品の競争力強化を図るため、第三者機関によるセキュリティ診断を受けセキュリティ強化を図った「SI Web Shopping Ver.12.8」を2020年6月にリリースしたほか、キャッシュレス決済サービスに対応すべく、「PayPay」との標準連携機能も同年9月にリリースしており、今後の受注獲得につなげていく考えだ。
(3) ERP・AI事業
ERP・AI事業の売上高は前年同期比28.5%増の1,471百万円、営業利益は同93.7%減の1百万円となった。売上高は豊富な受注残を背景にERP事業が同28.3%増の1,468百万円と大きく伸長したことで増収となったが、既述の通り大型の不採算案件発生により受注損失引当金127百万円を計上したことが減益要因となった。受注損失引当金の影響を除けば、営業利益は同376.3%増の129百万円となっており、収益性も大きく改善していたことになる。
なお、今回同社ではERP事業とAI事業に分けて業績開示を行っている。ERP事業の売上高については前年同期比28.3%増の1,468百万円、営業利益は同30.7%減の52百万円(受注損失引当金を除けば同138.7%増の179百万円)となっている。製造業を中心にERPの投資ニーズは引き続き旺盛に推移している。2019年8月に製造業での生産、販売、据付・設置、アフターサービスの業態に一気通貫で対応できる各種アドオンモジュール(生産管理、工事管理、原価管理等)のバージョンアップ及び新規リリースを行った効果が継続しているものと見られる。また、同社は自らが「GRANDIT」と「OBPM」を連携させ、「継続取引管理アドオンモジュール」も利用したうえで、IT企業における理想的な合理化モデルを実現しており、この連携モデルを「ITテンプレート」として製品化し、IT企業向けに拡販を進めている。なお、2019年3月より「GRANDIT」のサブスクリプションモデルの提供を開始しており、販売ターゲットを中小企業まで広げる取り組みも進めているが、こちらについてはまだ目立った実績は出ていないようで、今後の課題となっている。
AI事業については売上高で2百万円(前年同期は無し)、営業損失で51百万円(前年同期は48百万円の損失)となった。「AISI∀-AD」(ディープラーニング異常検知システム)は、工場の目視検査工程用として多くの企業から引き合いを受け(対象検査物は、輸送機器用部品、ペットボトルのキャップ、電設資材、フィルム製品等)、案件をこなしながらノウハウを蓄積して製品強化及びソリューション力の向上に取り組んでいる段階にある。営業人員3名、開発人員9名の体制で各種案件に取り組んでいるため、まだ先行投資段階であるものの、徐々に製造現場での実用化に向けた商談も増え始めている。
(4) その他
その他の事業には、プログラミングスキル判定サービスの「TOPSIC」とその他の研究開発投資が含まれている。「TOPSIC」の売上高は16百万円(前年同期は15百万円)、営業損失は22百万円(同26百万円の損失)となった。新型コロナウイルス感染症の影響もあって解約が発生したものの、新規契約件数の増加でカバーし、導入社数は132社に拡大、売上高は若干の増収となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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