豪ドル
RBA(豪中銀)は11月3日の会合で追加緩和を決定。政策金利と3年物豪国債の利回り目標をいずれも0.25%から0.10%へと引き下げるとともに、新たな量的緩和(QE)プログラムを発表。今後6カ月間に期間5~10年前後の国債を対象に1000億豪ドル相当を買い入れるとしました。
RBAは「必要ならQEプログラムを拡大する用意がある」と表明。一方で政策金利については、「マイナス金利にしても、メリットは乏しい」と指摘し、「さらなる利下げは予想していない」としました。利下げ打ち止めの可能性が示されたことは、豪ドルの支援材料になるとみられます。
豪ドルは、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴もあります。主要国の株価が堅調に推移すれば、リスクオンが強まる可能性があります。リスクオンは豪ドルにとってプラス材料です。
豪ドル/NZドルについては引き続き、1.10NZドル~1.15NZドルのレンジ内で上下動しそうです。11月の利下げによってRBAの政策金利は、RBNZ(NZ中銀)の政策金利(0.25%)よりも低くなりました。ただ、RBNZは今後利下げする可能性があり、両中銀の政策金利の差は今後もほとんど変わらない(ゼロに近い)と考えられるためです。
<注目点・イベントなど>
・RBAの金融政策。
・投資家のリスク意識の変化。
・米中、豪中の関係。
NZドル
RBNZ(NZ中銀)は将来的にマイナス金利を導入することを示唆。市場では、早ければ2021年2月にRBNZの政策金利はマイナスになるとの観測があります。NZの7-9月期GDP成長率が12月17日に発表されます。それが弱い結果になれば、2021年2月のマイナス金利導入観測が一段と強まる可能性があります。その場合、NZドルの上値を抑える要因になりそうです。
一方で、10月17日のNZ総選挙では与党・労働党が単独過半数を獲得し、圧勝しました。アーダーン政権が一段と安定して政策を進めやすくなることは、NZドルにとってプラス材料と考えられます。
また、NZドルは豪ドルと同様に投資家のリスク意識の変化を反映しやすいという特徴があります。NZドルにとってリスクオンはプラス材料、リスクオフはマイナス材料です。
<注目点・イベントなど>
・RBNZはマイナス金利を導入するか。
・投資家のリスク意識の変化。
・米中、豪中の関係。
カナダドル
カナダドルは、原油価格(米WTI原油先物)の動向に影響を受けやすいとみられます。このところコロナの感染が世界的に拡大しており、欧州の一部の国ではロックダウン(都市封鎖)が実施されています。原油の需要は当面抑制されるとみられ、原油価格は当面軟調に推移しそうです。原油安が続けば、カナダドルは下押す可能性があります。
ただ、原油安が続く場合には「OPECプラス」は現行の協調減産規模の維持、あるいは拡大して、原油価格の下支えに動くと考えられます。また、コロナの感染拡大が落ち着けば、原油価格は上昇しそうです。OPECプラスは2021年1月から協調減産の規模を現在の日量770万バレルから570万バレルへと縮小する予定です。カナダドル/円は米ドル/円の影響も受けるため、その動向にも注目です。
<注目点・イベントなど>
・原油価格の動向。
トルコリラ
トルコリラは現在、多くのマイナス材料を抱えています。
<リラの主なマイナス材料>
外貨準備をめぐる懸念、マイナスの実質金利、地政学リスク(トルコの東地中海の海底資源探査問題、アゼルバイジャンとアルメニアの紛争)、EUや米国がトルコに対して制裁を科す可能性、TCMB(トルコ中銀)の独立性をめぐる懸念、など。
リラが反発するためには目先、TCMBの大幅な利上げが必要と考えられます。また、リラが上昇傾向に転じるには上記のマイナス材料が解消される必要があるでしょう。マイナス材料が存在し続ける限り、リラには下押し圧力が加わりやすい地合いが続くとみられます。
<注目点・イベントなど>
・マイナスのトルコの実質金利。
・TCMBの外貨準備高の減少。
・EUや米国は対トルコ制裁を発動するか否か。
・地政学リスク。
・TCMBの金融政策。
南アフリカランド
ムボウェニ南アフリカ財務相は10月28日、中期予算方針を発表しました。南アフリカの2020/21年度の財政赤字は対GDP比15.7%とし、赤字は前年度の6.4%から大幅に拡大すると予想。また、2019/2020年度に対GDP比63%だった公的債務は、2025/26年度には95%に達するとの見通しを示しました。南アフリカの財務状況の悪化は、ランドにとってマイナス材料です。
エスコム(国営電力会社)の問題もランドの下押し要因となる可能性があります。エスコムはこれまで計画停電をたびたび実施しており、今後も行われる可能性があります。その場合、南アフリカ景気をめぐる懸念が強まりそうです。
ランドは独自のプラス材料が乏しい一方、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴がランドにはあります。リスクオンが強まれば、ランドを下支えしそうです。
<注目点・イベントなど>
・南アフリカの財務状況の悪化。
・南アフリカの電力供給不安。
・エスコム(南アフリカの国営電力会社)の経営危機問題。
・投資家のリスク意識の変化。
メキシコペソ
BOM(メキシコ中銀)は2019年8月以降、前回会合(2020/9)まで11会合連続で利下げを実施しました。
メキシコの9月CPI(消費者物価指数)は前年比4.01%と、BOMのインフレ目標(3%)の許容レンジ上限である4%をわずかながらも上回りました。メキシコ景気は低迷が続いており今後追加利下げが行われる可能性はあるものの、BOMの利下げは最終局面とみられます。これまで利下げをしてきたにもかかわらずBOMの政策金利(現在4.25%)は、依然として主要国中銀に比べて高い状況。そのうえ、BOMの利下げ打ち止め観測が市場で高まれば、メキシコペソは底堅さを増す可能性があります。
米大統領選については、本稿執筆時点で勝者が確定していません。バイデン氏が大統領に就任して米国とメキシコの関係が改善へと向かえば、ペソにとってプラス材料と考えられます。
<注目点・イベントなど>
・BOMの金融政策。利下げが休止されるか否か。
・米国の次の大統領が誰になるのか。
・原油価格の動向。
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