[資源・新興国通貨10/19~23の展望] 豪ドル:RBAは11月に利下げ!?

著者:八代和也
投稿:2020/10/16 15:35

豪ドル

ロウRBA(豪中銀)総裁は15日、「経済活動が再開されるなか、追加の金融緩和が以前よりも豪景気回復のけん引役になると期待するのは理にかなっている」と指摘。「期間が長めの国債を買い入れることにどのようなメリットがあるかを検討しており、また現在0.25%の政策金利を0.10%まで引き下げる可能性がある」と発言。追加の金融緩和策を行うことを示唆しました。

市場では、RBAが11月3日の次回会合で利下げするとの観測が高まっています。20日のRBA議事録(10/6会合分)がその観測を補強する内容になれば、豪ドルは下押す可能性があります。

豪州と中国の関係にも注意が必要です。中国は豪州産石炭などの輸入管理を強化しました。コロナの発生源の調査や南シナ海をめぐり両国の関係が悪化するなか、今回の措置によって関係は一段と悪化するおそれがあります。豪経済は中国経済への依存度が高いため、豪中関係の悪化は豪ドルにとってマイナス材料です。

リスクオフの動きも加われば、豪ドル/米ドルや豪ドル/円は200日移動平均線に接近するかもしれません。同移動平均線は10月15日時点でそれぞれ0.67862米ドル、72.844円に位置します。

豪ドル/NZドルについては、明確な方向感が出にくいとみられます。RBNZ(NZ中銀)が利下げ方向にあることや投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)の影響を受けやすいなど、NZドルは豪ドルとの共通点が多いためです。

NZドル

ホークスビーRBNZ(NZ中銀)総裁補は14日、シティグループの会合にビデオで参加。参加者の「RBNZがマイナス金利の可能性に言及しているのは、NZドルに下押し圧力をかけるためでは?(実際にマイナス金利を導入するつもりはない)」との質問に対し、「はったりではない」と回答。「RBNZはマイナス金利の導入を真剣に検討している」と語りました。

RBNZの政策金利は現在0.25%。市場は「RBNZはいずれマイナス金利を導入する」との観測があります。その観測はホークスビー総裁補の発言を受けて一段と高まるとみられ、NZドルの上値を抑えそうです。

一方で、NZの総選挙が17日(土曜日)に実施されます(定数120)。世論調査の支持率では、労働党(最大与党)が国民党(最大野党)を大きくリードしており、焦点は労働党が単独過半数を獲得できるかどうか。労働党の議席が過半数を超えれば、NZドルは底堅く推移する可能性があります。NZ政治が一段と安定するとの見方ができるためです。

カナダドル

9日、カナダの9月雇用統計が発表されました。結果は失業率が9.0%、雇用者数が前月比37.82万人増と、いずれも市場予想(9.7%、15.66万人増)よりも良好な結果でした。

雇用情勢の改善は、カナダドルにとってプラス材料です。ただ、カナダドルは今週(10/12- )、対米ドルや対円で軟調に推移しています。市場はカナダの雇用統計以上に、欧州でコロナの感染が再拡大していることや米国の追加経済対策の遅れに着目し、リスクオフから米ドルや円が全般的に強含んだためと考えられます。

カナダドルは当面、投資家のリスク意識(リスクオン/リスクオフ)を受けた米ドルや円の動向に左右されやすい展開になるかもしれません。リスクオフが強まる場合、カナダドルは対米ドルや対円で軟調に推移しそうです。

カナダドルは、原油価格の影響を受けやすいという特徴があります。原油価格の代表的な指標である米WTI原油先物は約4カ月間にわたっておおむね35米ドル~45米ドルのレンジで上下動を繰り返しており、明確な方向感を失っている状況です。WTI原油先物に方向感が生まれれば、カナダドルの材料になりそうです。

トルコリラ

トルコリラは今週(10/12- )、対米ドルで過去最安値を更新。対円も過去最安値の13.213円に接近しています(本稿執筆時点)。

足もとのリラ安の背景として、トルコによる東地中海のガス田探査問題やナゴルノカラバフ情勢(アゼルバイジャンとアルメニアの軍事衝突)が挙げられます。それらをめぐる懸念が後退しなければ、リラには引き続き下押し圧力が加わりやすいとみられます。

来週(10/19- )は、22日のTCMB(トルコ中銀)政策会合が材料になる可能性があります。TCMBは9月24日の前回会合で2.00%の利上げを実施。現在の政策金利(1週間物レポ金利)は10.25%です。

前回会合以降、リラ安が一段と進行したことから、市場ではTCMBが22日の会合で追加利上げに踏み切るとの観測があります。利上げすればリラはいったん上昇するかもしれません。

ただ、トルコの実質金利(政策金利から前年比のCPI上昇率を引いたもの)は現在マイナス1.50%(政策金利:10.25%、CPI上昇率:11.75%)。1.50%の利上げで政策金利が11.75%になったとしても、実質金利はほぼゼロ%です。利上げ幅が不十分だと市場がみれば、リラの上昇は一時的に終わる可能性があります。

南アフリカランド

ラマポーザ南アフリカ大統領は15日、経済回復計画を発表。今後4年間で1兆ランドの投資を行うことや80万人以上の雇用創出を打ち出しました。

経済回復計画は、南アフリカランドの支援材料にはなりませんでした。南アフリカの財政は悪化しており、2015年に約50%だった公的債務は今年、対GDP比で80%を超えるとの見方があります。こうした状況で復興計画の財源を確保できるのかと市場は疑問視しているようです。

来週(10/19- )は南アフリカの主要経済指標の発表がありません。ランドは独自材料で上昇しにくいとみられ、上昇するためにはリスクオフの後退が必要かもしれません。新興国通貨であるランドにとってリスクオフの後退はプラス材料です。

メキシコペソ

BOM(メキシコ中銀)は9月24日の前回会合で0.25%の利下げを実施。現在の政策金利は4.25%です。

市場では、BOMの利下げは9月でいったん休止された可能性があるとの観測があります。利下げ幅がこれまでの0.50%から縮小したことや、全会一致で0.25%の利下げが決定された(0.50%以上の利下げを主張するメンバーがいなかった)ためです。

メキシコの10月前半のCPI(消費者物価指数)が22日に発表されます。前年比のCPI上昇率がBOMのインフレ目標(3%)の許容レンジの上限である4%近辺になれば、利下げ休止観測が一段と高まり、メキシコペソが堅調に推移する可能性があります。9月前半のCPI上昇率は前年比4.10%でした。

八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想