豪ドル
RBA(豪中銀)は4月の会合以降、政策金利と3年物豪国債の利回り目標のいずれも0.25%に据え置いています。
RBAは景気支援やインフレの押し上げに向け、年内に政策金利を引き下げるかもしれません。コロナの影響によって豪経済は2020年1-3月期と4-6月期の2四半期連続でマイナス成長を記録。1991年以来、29年ぶりにリセッション(景気後退)に陥りました。また、4-6月期のCPI(消費者物価指数)は前年比マイナス0.3%、基調インフレ率は同1.25%と、いずれもRBAのインフレ目標の下限である2%を下回りました。
RBAは利下げする場合、まずは0.10%へと引き下げることを示唆しています。焦点はさらにマイナス金利を導入するか否か。マイナス金利が導入されれば、豪ドルに対して下押し圧力が加わりそうです。
一方で豪ドルは、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴があります。世界のコロナの感染が落ち着く、あるいは主要国の株価が堅調に推移すれば、リスクオンが強まる可能性があります。リスクオンは豪ドルにとってプラス材料です。
豪ドル/NZドルについては、1.10NZドル~1.15NZドルのレンジ内で上下動を繰り返しそうです。RBAとRBNZ(NZ中銀)の金融政策の方向性が同じとみられること、また豪ドルとNZドルのいずれもリスク意識の変化を反映しやすいという特徴があるためです。
<注目点・イベントなど>
・RBAの金融政策。マイナス金利を導入するか否か。
・投資家のリスク意識の変化。
・米中、豪中の関係。
NZドル
RBNZ(NZ中銀)は9月の会合で金融政策の現状維持を決定。その一方で、FLP(貸し出し向けの資金供給プログラム*)を年内に実施する可能性を示しました。*RBNZは「FLPの実施によって銀行はRBNZから低金利で資金調達ができるようになる(銀行の借り入れ金利が低下する)」としています。
FLPの実施はすでに市場に織り込まれているとみられ、今後の焦点はRBNZが政策金利(現在0.25%)をマイナスの領域まで引き下げるのか否かになりそうです。市場では2021年前半にマイナス金利を導入するとの観測があります。その観測が今後一段と高まる、あるいは前倒しされるとの観測が高まる場合、NZドルは下押す可能性があります。
NZの総選挙が10月17日に実施されます。世論調査では、労働党(最大与党)の支持率が国民党(最大野党)をリードしており、アーダーン首相の続投が濃厚。「労働党が過半数を獲得できるのか」に注目です。労働党が過半数を獲得できれば、アーダーン政権は安定さを増すこととなり、NZドルにとってプラス材料と考えられます。
また、NZドルは豪ドルと同様に投資家のリスク意識の変化を反映しやすいという特徴があります。リスクオンはNZドルにとってプラス材料です。
<注目点・イベントなど>
・RBNZの金融政策。マイナス金利を導入するか否か。
・NZ総選挙(10/17)。労働党は過半数を獲得できるか。
・投資家のリスク意識の変化。
・米中、豪中の関係。
カナダドル
カナダドルは原油価格(米WTI原油先物)の影響を受けやすいという特徴があり、その状況は今後も続きそうです。WTI原油先物は9月8日に一時36.13米ドルへと下落し、約3カ月ぶりの安値を記録。その後持ち直し、足もとでは39米ドル前後で推移しています。
原油価格は目先、上値が重い展開が想定されます。コロナの感染が世界的に拡大しており、原油需要減少への懸念が市場にあるためです。原油安はカナダドルにとってマイナス材料です。
ただ、原油価格の下落が続く場合、「OPECプラス」は減産を強化して原油価格の下支えに動くとみられます。また、コロナの感染拡大が落ち着けば、原油価格は上昇していくと考えられます。カナダドル/円は米ドル/円の影響も受けるものの、堅調に推移しそうです。
<注目点・イベントなど>
・原油価格の動向。
トルコリラ
外貨準備をめぐる懸念(外貨準備が枯渇?)やマイナスの実質金利など、トルコリラにはマイナス材料が目立つ状況です。
その他にも、リラは地政学リスク(シリア情勢、リビア情勢、アゼルバイジャンとアルメニアの衝突)を抱えており、EUがトルコに制裁を科す可能性もあります(12月のEU首脳会議で協議か)。
また、政権が代わった場合、米国は対トルコ制裁へと動くかもしれません。トルコは米国が強く反対するなか、S400(ロシア製地対空ミサイル)の配備する計画を進めています。
こうしたマイナス材料が解消されない限り、リラに下押し圧力が加わりやすい状況は今後も続くとみられます。
<注目点・イベントなど>
・マイナスのトルコの実質金利。
・TCMBの外貨準備高の減少。
・EUは対トルコ制裁を発動するか否か。
・シリアやリビアの情勢、アゼルバイジャンとアルメニアの衝突の行方。
・TCMBの金融政策。
南アフリカランド
南アフリカの景気は2018年1-3月期~2020年4-6月期の10四半期のうち、7四半期でマイナス成長を記録。とりわけ2020年4~6月期のGDP(国内総生産)成長率はコロナの影響もあり、前期比年率マイナス51.0%と、大きく落ち込みました。
景気の悪化に加え、南アフリカランドにはエスコム(国営電力会社)の問題も抱えています。経営危機に陥っているエスコムは、計画停電をたびたび実施。停電は弱い景気を一段と下押す要因となり得ます。ランドは独自材料で上昇しにくいと考えられます。
ランドは、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)を反映しやすいという特徴があります。ランドが持続的に上昇するためには、リスクオンが強まる必要がありそうです。
<注目点・イベントなど>
・南アフリカ景気の行方。
・南アフリカの電力供給不安。
・エスコム(南アフリカの国営電力会社)の経営危機問題。
・投資家のリスク意識の変化。
メキシコペソ
BOM(メキシコ中銀)は9月、0.25%の利下げを決定。政策金利を4.50%から4.25%へ引き下げました。利下げは2019年8月以降、11会合連続です。
BOMの利下げ局面は終わりに近づいている可能性があります。0.25%の利下げの決定は、全会一致(0.50%以上の利下げ票なし)で下されました。また、メキシコの8月CPI(消費者物価指数)は前年比4.05%と、BOMのインフレ目標(3%。その上下1%が許容レンジ)を上回っています。BOMの政策金利の水準は、米国など主要国の中銀よりも高い状況。この状況は今後も変わらないとみられ、そのことがメキシコペソを下支えしそうです。
一方で米大統領選挙の行方には注意が必要かもしれません。米国の政治や経済政策の先行き不透明感が高まる場合、ペソの上値を抑える要因となり得ます。
<注目点・イベントなど>
・BOMの金融政策。利下げが休止されるか否か。
・原油価格の動向。
・投資家のリスク意識の変化。
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