■要約
1. 会社概要
サムティ<3244>は、関西圏及び首都圏を中心として全国に展開している総合不動産会社である。不動産事業(不動産ファンド向け大型賃貸マンションやホテルの開発及び販売等)と不動産賃貸事業(賃貸マンションの保有等)を両輪とし、ホテル事業なども手掛けている。不動産賃貸事業による安定収入と不動産事業による成長加速のバランスにより事業環境の変化に柔軟に対応できるところに特長があり、大きな金融危機を乗り越えながら持続的な成長を実現してきた。また、両事業の組み合わせによる一気通貫型のビジネスモデルにも優位性があり、ここ数年高い成長を続けている。営業エリアの拡大とともに、2015年6月にはJ-REIT事業※にも進出し、更なる事業拡大に向けてビジネスモデルの基礎固めが完了した。
※2015年3月に設立したサムティ・レジデンシャル投資法人<3459>(以下、SRR)を東証J-REITに上場。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、2020年中に予定していたホテルリートの設立(及び上場)は2021年11月期以降に延期したものの、景気変動の影響を受けにくい賃貸マンションは堅調に推移している上、今後に向けた投資計画(用地仕入れや収益不動産の取得)も順調に進捗している。
2. 2020年11月期上期の業績
2020年11月期上期の業績は、売上高が前年同期比42.9%減の27,322百万円、営業利益が同61.5%減の5,368百万円と大幅な減収減益となった。売上高は、「不動産事業」が前年同期比で大きく減少。ただ、前期は上期に売却が多かった一方、2020年11月期は下期偏重となっていることが理由である。同社の主力である賃貸マンションは新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けておらず、世界的な低金利が続くなかで、引き続き国内外の機関投資家からの引き合いは強い。また、「不動産賃貸事業」は、保有する賃貸マンションの稼働率や賃料水準は堅調であり、保有物件の増加に伴って増収を確保。一方、「その他の事業」については、新型コロナウイルス感染症拡大によるホテル稼働率の落ち込みにより減収となったが、同社業績全体に与える影響は限定的である上、足元の稼働率は回復傾向にある。利益面では、減収により減益となり、営業利益率も低下したが、前期は利益率の高い物件売却があったためであり、過去からの推移で見ると高い利益率水準を維持していると評価できる。
3. 2020年11月期の業績予想
2020年11月期の業績予想について同社は、ホテルリート設立の延期等を踏まえ、期初予想をレンジ形式の業績予想に修正した。修正後の業績予想として、売上高を88,000百万円(前期比2.9%増)~105,000百万円(同22.7%増)、営業利益を14,600百万円(同5.2%減)~16,900百万円(同9.8%増)と見込んでいる。期初予想の修正を行ったのは、ホテルリートの設立、及びそれに伴うホテル売却を2021年11月期以降に延期したことが理由である。一方、その分をカバーすべく、景気変動の影響を受けにくい収益不動産(賃貸マンション等)へ売却予定物件を入れ替える方針であるが、その結果を現時点で精緻に予測することが困難であることから、複数のシナリオに基づくレンジ形式での業績予想となった。ただ、売上高は下限でも増収を確保する想定となっている。一方、利益面では、売却予定物件の入れ替えの影響などにより、下限では減益となる見通しとなっている。
4. 成長戦略
同社は、2019年11月期から2021年11月期までの中期経営計画(3ヶ年)を推進している。1)SRRを中心としたビジネスモデルの展開(フィー収入ビジネスの強化)、2)地方大都市圏における戦略的投資(営業エリアの拡大)、3)ホテル開発・オフィス開発事業の展開(新たな成長エンジンの育成)に取り組んでいる。また、将来的な調整局面に備えるため、バランスシート重視の経営をより強く打ち出しており、自己資本比率30%以上を維持しながら、営業利益200億円水準、ROE15.0%水準、ROA7.0%水準を目指している。
■Key Points
・2020年11月期上期は大幅な減収減益となるも、物件売却が下期偏重となっていることが主因
・新型コロナウイルス感染症拡大の中でも主力の賃貸マンションは堅調推移する一方、ホテルリート設立は2021年11月期以降に延期
・ホテルリート設立の延期に伴い、2020年11月期の通期業績予想をレンジ形式に修正。収益不動産の売却により、下限でも増収を確保する見通し
・2021年11月期を最終年度とする中期経営計画では、バランスシートを重視しながら、生産性や資本効率性の向上により持続的な利益成長を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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1. 会社概要
サムティ<3244>は、関西圏及び首都圏を中心として全国に展開している総合不動産会社である。不動産事業(不動産ファンド向け大型賃貸マンションやホテルの開発及び販売等)と不動産賃貸事業(賃貸マンションの保有等)を両輪とし、ホテル事業なども手掛けている。不動産賃貸事業による安定収入と不動産事業による成長加速のバランスにより事業環境の変化に柔軟に対応できるところに特長があり、大きな金融危機を乗り越えながら持続的な成長を実現してきた。また、両事業の組み合わせによる一気通貫型のビジネスモデルにも優位性があり、ここ数年高い成長を続けている。営業エリアの拡大とともに、2015年6月にはJ-REIT事業※にも進出し、更なる事業拡大に向けてビジネスモデルの基礎固めが完了した。
※2015年3月に設立したサムティ・レジデンシャル投資法人<3459>(以下、SRR)を東証J-REITに上場。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、2020年中に予定していたホテルリートの設立(及び上場)は2021年11月期以降に延期したものの、景気変動の影響を受けにくい賃貸マンションは堅調に推移している上、今後に向けた投資計画(用地仕入れや収益不動産の取得)も順調に進捗している。
2. 2020年11月期上期の業績
2020年11月期上期の業績は、売上高が前年同期比42.9%減の27,322百万円、営業利益が同61.5%減の5,368百万円と大幅な減収減益となった。売上高は、「不動産事業」が前年同期比で大きく減少。ただ、前期は上期に売却が多かった一方、2020年11月期は下期偏重となっていることが理由である。同社の主力である賃貸マンションは新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けておらず、世界的な低金利が続くなかで、引き続き国内外の機関投資家からの引き合いは強い。また、「不動産賃貸事業」は、保有する賃貸マンションの稼働率や賃料水準は堅調であり、保有物件の増加に伴って増収を確保。一方、「その他の事業」については、新型コロナウイルス感染症拡大によるホテル稼働率の落ち込みにより減収となったが、同社業績全体に与える影響は限定的である上、足元の稼働率は回復傾向にある。利益面では、減収により減益となり、営業利益率も低下したが、前期は利益率の高い物件売却があったためであり、過去からの推移で見ると高い利益率水準を維持していると評価できる。
3. 2020年11月期の業績予想
2020年11月期の業績予想について同社は、ホテルリート設立の延期等を踏まえ、期初予想をレンジ形式の業績予想に修正した。修正後の業績予想として、売上高を88,000百万円(前期比2.9%増)~105,000百万円(同22.7%増)、営業利益を14,600百万円(同5.2%減)~16,900百万円(同9.8%増)と見込んでいる。期初予想の修正を行ったのは、ホテルリートの設立、及びそれに伴うホテル売却を2021年11月期以降に延期したことが理由である。一方、その分をカバーすべく、景気変動の影響を受けにくい収益不動産(賃貸マンション等)へ売却予定物件を入れ替える方針であるが、その結果を現時点で精緻に予測することが困難であることから、複数のシナリオに基づくレンジ形式での業績予想となった。ただ、売上高は下限でも増収を確保する想定となっている。一方、利益面では、売却予定物件の入れ替えの影響などにより、下限では減益となる見通しとなっている。
4. 成長戦略
同社は、2019年11月期から2021年11月期までの中期経営計画(3ヶ年)を推進している。1)SRRを中心としたビジネスモデルの展開(フィー収入ビジネスの強化)、2)地方大都市圏における戦略的投資(営業エリアの拡大)、3)ホテル開発・オフィス開発事業の展開(新たな成長エンジンの育成)に取り組んでいる。また、将来的な調整局面に備えるため、バランスシート重視の経営をより強く打ち出しており、自己資本比率30%以上を維持しながら、営業利益200億円水準、ROE15.0%水準、ROA7.0%水準を目指している。
■Key Points
・2020年11月期上期は大幅な減収減益となるも、物件売却が下期偏重となっていることが主因
・新型コロナウイルス感染症拡大の中でも主力の賃貸マンションは堅調推移する一方、ホテルリート設立は2021年11月期以降に延期
・ホテルリート設立の延期に伴い、2020年11月期の通期業績予想をレンジ形式に修正。収益不動産の売却により、下限でも増収を確保する見通し
・2021年11月期を最終年度とする中期経営計画では、バランスシートを重視しながら、生産性や資本効率性の向上により持続的な利益成長を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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