ハウスコム Research Memo(1):2021年3月期通期は下期にかけて回復基調が鮮明になるシナリオ

配信元:フィスコ
投稿:2020/09/01 15:01
■要約

ハウスコム<3275>は、賃貸住宅の仲介及び周辺サービス、不動産テックサービスを行う成長企業である。住宅需要の高い首都圏と東海圏を中心に直営184店舗及びFC店1店舗(2020年3月末)を展開し、賃貸住宅の仲介件数では業界5位規模である。2011年6月、大証JASDAQ市場(現東証JASDAQ市場)に上場。2019年6月には東証2部、8月には東証1部にそれぞれ昇格した。2020年3月期からは、M&Aにより2社を子会社化し、連結経営をスタートさせた。大東建託グループに属するが、親会社物件の取引比率は約18%であり、実態は独立色が強い。

2014年3月に代表取締役社長に就任した田村穂(たむらけい)氏は、6年にわたりリーダーシップを発揮し、収益構造を改善・維持しながら、事業規模の拡大を行ってきた。この6年間に、積極的かつ立地を吟味した店舗網の拡大(純増50店舗)、WebやAIなどのITツールの積極活用、リフォーム事業への進出・拡大などを成功させている。業績は2014年3月期から営業収益で1.5倍、営業利益で3.0倍に拡大した。

1. 強み
同社は、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響でオンラインサービスへのニーズが高まったことに対応し、顧客が来店しなくても部屋探しのできるハウスコム「オンラインお部屋探し」を2020年4月に提供開始した。「オンラインお部屋探し」は、「オンライン接客」、「オンライン内見」、「IT重説」、「郵送契約」により、対面接触なしでも部屋探しをすることのできるサービスである。各サービスは同社が以前から取り組んできたものであり、組織としてノウハウを蓄積してきたことがコロナ禍において結実した形だ。例えば「IT重説(重要事項説明)」は、2020年3月期に約18,000件の実績があり、スタッフの習熟度も高い。なお、「オンラインお部屋探し」は、急速に高まる顧客ニーズに対応するとともに、同社の運営の効率性向上にも寄与する。今後はIT化により蓄積されたデータを活用して新たなサービスを創出する戦略であり、既にその準備に入っている。

2. 業績動向
2021年3月期第1四半期の連結業績は、営業収益で前年同期比11.4%減の2,639百万円、営業損失で261百万円(前年同期は64百万円の利益)、経常損失で246百万円(同66百万円の利益)、親会社株主に帰属する四半期純損失で217百万円(同37百万円の利益)と減収減益となったものの、コロナ禍に起因する緊急事態宣言が出された四半期の決算としては限定的な影響にとどまった。営業収益の減収に関しては、緊急事態宣言の下で、主力の不動産賃貸仲介において消費者の転居の需要が抑制・先送りされたことが影響した。仲介件数は前年同期比19.0%減の14,182件となった。その結果、不動産関連事業セグメントの営業収益は2,228百万円(前年同期比17.9%減)、セグメント利益は160百万円(前年同期比65.2%減)となった。しかし、当第1四半期の中でも6月は需要が回復基調にある。仲介件数で見ると4月に前年同期比23%減、5月に同30%減だったのに対し、6月は同4%減と潮目が変わったことがわかる。コロナ禍において、来店しなくても部屋探しのできるハウスコム「オンラインお部屋探し」を2020年4月からスムーズに導入することができたことも、マイナスが限定的だった要因の一つであろう。営業費用に関しては、広告宣伝費の見直し、成果連動の人件費の減少、会議・研修等のオンライン化によるコスト低減など一定の縮減はできたものの、営業収益の減額を補うまでには至らなかった。

3. 業績見込み
2021年3月期通期の連結業績は、営業収益で13,291百万円(前期比2.1%増)、営業利益で1,161百万円(同14.2%増)、経常利益で1,339百万円(同13.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益で906百万円(同34.6%増)と増収増益を予想する。2020年4月~5月の緊急事態宣言下で仲介件数が停滞したものの、6月~7月の仲介件数は回復基調にあり、残りの3四半期で十分取り返せるものと予想している。営業収益の予想に関しては、一時的に抑制・先送りされていたと考えられる引っ越し・転居の需要が顕在化し、経済活動の活性化とともに回復するシナリオを前提としている。この回復状況をもとに、仲介件数が第2四半期に前年同期比約3%減、下半期は前第4四半期にコロナ禍による減収が大きかったことを勘案して約10%増になると仮定した結果、通期営業収益は2.1%増予想となった。これまでの戦略通り、対面サービスからオンラインサービスへの志向シフトに積極的に対応し、オンライン接客、オンライン内見、IT重説、更新契約の電子化等を強化することにより差別化を図る計画だ。営業費用に関しては、広告宣伝の内容や費用の見直しなど、需要抑制期に適した効率的な事業運営の工夫を行っていく方針である。中期計画では新規出店10店ペースが計画されていたが、今年度は5~6店に減速することが見込まれる。結果として、通期の営業利益は14.2%増、親会社株主に帰属する当期純利益にいたっては34.6%増となり、2019年3月期の水準までV字回復する予想だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)

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配信元: フィスコ

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