―コロナ禍で強み発揮、高級食材や特産品など「緊急支援品」で消費拡大に貢献―
ここ「ふるさと納税」関連銘柄への注目が高まっている。 新型コロナウイルスの感染拡大防止のために遠方への行動が制限されるなか、インバウンド需要の消失や国内旅行の手控えにより、地域の特産品や食材などが行き場を失っている。ふるさと納税を活用することで、こうした特産品などを「返礼品」という形で受け取り、事業者を支援する動きが活発化している。
●ふるさと納税の「返礼品」需要に変化
総務省によると、ふるさと納税は「納税」という言葉がついているものの、実際には、都道府県・市区町村への「寄付」としている。一般的に自治体に寄付をした場合には、確定申告を行うことで、その寄付金額の一部が所得税及び住民税から控除されるが、ふるさと納税では原則として自己負担額の2000円を除いた全額が控除の対象となる(収入や家族構成などに応じて一定の上限あり)。そのうえ、都道府県・市区町村が用意した返礼品を受け取ることができることから、近年ではブームになっている。これに伴って登場したふるさと納税ポータルサイトでは、各自治体の委託を受けて返礼品の宣伝や納税業務の代行サービスを行い手数料を受け取る。2019年には、過度な返礼品競争などの是正を目的に「返礼品は寄付金額の3割以下とする」との規制が入ったため、やや頭打ち感がみられ、同省によると、19年度の各自治体のふるさと納税受け入れ件数は前年度比0.5%増の2333万6077件にとどまった。
だが、今年は新型コロナウイルス感染症の感染拡大が追い風となっている。3月には、新型コロナの影響で学校の休校やイベントの中止、レストランなどの利用が控えられたことにより、一部食材の消費が大幅に落ち込んだ。各自治体は、これにより影響を受けた高級食材や特産品を「緊急支援品」と称しふるさと納税をその受け皿として活用している。緊急支援品を半額以下で期間限定のキャンペーンを行うなど、還元率の高い商品が目白押しだ。
●返礼品競争は再燃、「コト」サービスが人気
高い知名度のふるさと納税ポータルサイトといえば、ソフトバンクグループ <9984> 傘下のさとふるが運営する「さとふる」や楽天 <4755> が手掛ける「楽天ふるさと納税」などがある。しかし、独自のサービスや情報量を展開することで消費者に選ばれる専門サイトを運営する企業も多い。
チェンジ <3962> は傘下に掲載品数トップを誇る、ふるさと納税プラットフォーム「ふるさとチョイス」を企画・運営する子会社トラストバンクを擁している。新型コロナ対策のプロジェクトを多数企画・実行した結果、取り扱い寄付額が拡大しており20年9月期連結営業利益は前期比3.1倍の34億円を見込む。「ふるさとチョイス」では、離れて暮らす家族の「見守り代行」サービスをはじめ、夏季の帰省を自粛する動きがあるなかで、地域の人が墓の手入れをする「墓参り代行」サービスといった返礼品などが年々増加しているという。コロナ禍の影響で、地域を支援するためにふるさと納税の動きがより活発となり、従来の返礼品一辺倒の状況が変化し「モノ」から「コト」へのサービスが広がりをみせている。
●アイモバイル、今期に入って2度も上方修正
ふるさと納税専門サイト「ふるなび」を手掛けるアイモバイル <6535> は知名度が高く、寄付をすることで金額に応じて「Amazonギフト券」がもらえる仕組みや、家電掲載数の多さなどを特徴としている。「ふるなび」の積極的なキャンペーンが奏功し、アプリ運営事業が好調となり、8月には20年7月期の営業利益について従来予想の17億7300万円から22億5000万円(前の期比29%減)へ大幅上方修正している。なお、20年7月期の増額修正は今回で2度目となり、期初予想の営業利益は7億900万円だった。
●支援意識浸透し、資金使途明確なクラウドファンディングも注目
新型コロナウイルス感染症の長期化を受け、「地域を応援したい」という動きも活発化している。「ふるさとチョイス」では、1~6月の返礼品のない寄付は、前年同時期との比較で寄付金額が約1.8倍、寄付件数は約2.4倍となった。感染拡大をきっかけに、寄付者もより寄付金の使い道を意識するようになり、医療や観光支援といった目的が明確な支援プロジェクトが行われている。
マクアケ <4479> [東証M]は、市場に出ていない新しい製品やサービスを紹介する購入型クラウドファンディング のプラットフォーム「Makuake」を運営する。また、Makuakeガバメントサービスという、地方自治体が実行者となりプロジェクトへの寄付を募る、ふるさと納税型クラウドファンディングサービスも手掛けている。同社は7月に、20年9月期の単独業績予想について、売上高を21億8700万円から29億7400万円(前期比2.1倍)、営業利益を4億7800万円から4億8000万円(同3.9倍)へ上方修正した。新型コロナウイルス感染症の影響で展示会、見本市またはオフライン店舗などで新商品をデビューさせることができない事業者がオンラインの新商品デビューの場であるMakuakeを利用する動きがより強まったことなどで、応援購入総額(流通総額)が伸長している。
株探ニュース
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