―巣ごもり需要や免疫力強化で新トレンド発生、運動不足で健康志向商品が脚光―
食品業界が地殻変動に見舞われている。新型コロナウイルスの感染症に伴う外出自粛で、食品需要は外食向けが落ち込む一方で、家庭向けへとシフトした。緊急事態宣言が発出された際に、都内のスーパーでは食料を買い求める人が、長蛇の列を作った。このことは、コロナ禍で家庭での食品需要が急拡大したことを意味する象徴的な出来事となった。5月25日には同宣言が解除されたものの、依然として「ステイホーム」の状況は続き、家庭向けへと向かった食品需要は簡単には逆戻りしそうにない。コロナ禍の食品業界ではどんな銘柄が追い風を享受しているのだろうか。
●食品スーパーの既存店売上高は絶好調、パスタや即席麺の消費額は急拡大
食品スーパー は、巣ごもり消費の恩恵を最も享受した業態のひとつといえる。埼玉を中心に展開する地域密着型スーパー大手、ヤオコー <8279> の5月の既存店売上高は前年同月比19.4%増と2月から4ヵ月連続の2ケタ増を記録。首都圏や近畿を地盤とするライフコーポレーション <8194> も既存店売上高は3月の6.9%増に続き、4月は15.0%増と2ケタの伸びとなった。食品スーパーの月次売り上げは、まさに絶好調だ。これは、新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛で家庭での食事需要が急拡大したことが背景にある。では、スーパーの売上高が急拡大するなか、具体的にはどんな食品が売れているのだろうか。
●カップ麺やヨーグルトが伸び日清食HDや明治HDの業績拡大
総務省が5月8日にまとめた「新型コロナウイルスの感染拡大により消費行動に大きな影響が見られた主な品目など」によると、3月の家計消費額が増加した品目では、冷凍調理食品や、チューハイ、カップ麺など。なかでもパスタが前年同月比43.8%増、即席麺が37.8%増と、保存がきき手軽に調理できるものが大きく伸びた。
実際、カップ麺でシェアトップの日清食品ホールディングス <2897> が5月に発表した20年3月期営業利益は前の期比42.4%増の412億5200万円と最高益を更新した。1-3月期は国内にとどまらず、アメリカや中国地域においても販売数量が増加し、コスト低減に努めたことが利益に大きく貢献した。
また、新型コロナウイルス感染症に対するワクチンや特効薬はまだないだけに、免疫力を高めるといわれている「発酵食品」の納豆やヨーグルトに関心が高まっている。「R-1」ヨーグルトなどを手掛ける明治ホールディングス <2269> が発表した20年3月期連結業績の営業利益は1027億800万円と初めて1000億円の大台に乗せた。1-3月期にプロバイオティクスやヨーグルトなどの販売が大幅に伸長したことが業績に寄与した。
●コロナ太りに効く「サバ缶」、売れに売れる食材に成長
備蓄食材の代表格といえば缶詰とのイメージあるが、サバ缶はこれまでも脳の活性化、美容やダイエット効果も指摘されており、加えて料理レシピの幅広さも消費者受けが良い。「コロナ太りにサヨナラ」といったキャッチフレーズでメディアに取り上げられ、目下は売れに売れる食材のひとつとして関心が寄せられている。以下では、コロナショックが追い風に働く5銘柄をセレクトしてみた。
●ラクトJや極洋、はごろもフーズなどに投資妙味
◎ラクト・ジャパン <3139> ~チーズ や豚肉、生ハムなど蓄農産加工品の専門商社。4月13日に発表した19年12月-20年2月期の経常利益は前年同期比40.7%増の7億5300万円と大幅増益となった。国内において、外食向けチーズの需要減少がみられたものの、内食需要の高まりや免疫力を高めることへの期待から家庭用チーズやヨーグルトをはじめとした乳製品向け原料の販売は堅調に推移した。また、アジア事業では営業強化しているフィリピンなどが好調だったことが業績に寄与した。株式の需給面では信用倍率が0.6倍台と売り長で踏み上げ相場が期待できそうだ。
◎極洋 <1301> ~水産大手でサバ缶に力を入れている。たびたびスーパーの売れ筋商品として紹介される同社のサバの水煮缶詰は、19年3月に値上げされた後も人気は健在で、コロナ禍で存在感を発揮している。足もと冷凍食品が堅調なほか、缶詰ではイワシ缶・サンマ缶などの販売も伸長している。会社側では、21年3月期営業利益は前期比43.9%増の42億円と3期ぶりの最高益更新を見込んでいる。株価は25日と75日移動平均線のゴールデンクロスが示現しており、タイミング的にも要注目だ。
◎はごろもフーズ <2831> [東証2]~家庭用パスタのほか、「シーチキン」ブランドで知られるツナ缶詰最大手。買いだめや非常食需要の高まりで5月に発表した20年3月期営業利益は従来予想の19億円に対して30億6700万円(前の期比96.7%増)に上振れて着地した。付加価値の高い新製品が好調だったことや原材料のきはだまぐろやかつおが年間を通して安定して調達できたことも寄与した。なお、21年3月期の業績予想は未定としている。
◎昭和産業 <2004> ~製粉大手で油脂にも注力している。20年3月期営業利益は前の期比4.3%増の88億800万円だった。製粉事業で、業務用食材の販売数量は前期を下回ったものの、家庭内需要の伸長やコスト管理などで補い増益を確保した。また、通期配当も5円増額修正し65円とした。21年3月期の営業利益について、新型コロナウイルス感染症による影響が第2四半期まで続くことを前提に、前期比4.6%減の84億円と減益を見込む。ただ、5月には米油大手のボーソー油脂 <2608> [東証2]の完全子会社化を目指してTOBを実施している。このTOBにより、同社が狙っている製造体制の統合で生産効率の向上や両社の商材と販路を活用したクロスセルなどのシナジーを創出することをが期待される。
◎フジッコ <2908> ~煮豆や昆布でトップシェアの加工食品を手掛けており、近年はヨーグルトで業容拡大している。21年3月期は売上高が前期比1.3%増の670億円、営業利益は4.7%増の47億円と増収増益を見込んでいる。今期は「大豆で作ったヨーグルト」で新たな大豆発酵食品市場の創造を図るとともに、豆製品の拡販で成長を目指す。植物性蛋白質への注目や中食市場は拡大傾向にあることが同社には追い風であるが、PBRは0.8倍台と過小評価されているようだ。
株探ニュース
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2004
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