ワールドHD Research Memo(4):主力の人材・教育ビジネスは、成長に向けた基盤づくりが順調に進む

配信元:フィスコ
投稿:2019/10/15 15:04
■業績動向

2. 事業セグメント別動向
(1) 人材・教育ビジネス
人材・教育ビジネスの売上高は前年同期比5.0%増の37,333百万円、セグメント利益は同1.8%減の2,142百万円となった。企業における慢性的な人材不足とアウトソーシング化の流れを背景に、売上高はファクトリー事業、テクノ事業、R&D事業で着実に増加した。利益の増減要因を見ると、稼働人員増で210百万円、単価上昇で53百万円の増益要因となり、人材育成等の各種投資の増加で304百万円の減益要因となった。セグメント別の業績動向は以下のとおり。

a) ファクトリー事業
ファクトリー事業の売上高は前年同期比2.5%増の23,913百万円、セグメント利益は同18.3%減の1,137百万円となった。分野別の売上動向について見ると、スマートフォン、半導体関連の生産調整があった影響で、電気・電子分野が前年同期比4.2%増、半導体分野が同4.1%増と減速したほか、半導体製造装置等の機械分野が同46.2%減と大きく落ち込んだ。一方で、EC市場の拡大を背景に物流分野が同10.7%増と好調を持続したほか、新規顧客の開拓が進んだことでその他分野も同11.2%増となった。

セグメント利益率は前年同期比1.2ポイント低下の4.8%となった。3PL体制により協力会社を使うことで他分野と比較すると利益率の低くなる物流分野の売上構成比が上昇したことに加えて、人材育成のための取り組みを積極化したことによる。具体的には、技術テクニカルセンターでの研修体制を充実させ、設備メンテナンス等の高付加価値領域人材の育成や、物流新拠点立ち上げのための管理者層の育成に取り組んだ。

採用面では、新卒採用者数が前年の239名から274名に増加したほか、人材採用サイト「JOB PAPER」の登録者数も6.8万人(2018年末6.2万人)に拡大した。2019年4月〜6月の平均在籍数(海外及び行政受託、他社受入社員含む)は前年同期比0.1%減の15,609人となっている。

b) テクノ事業
テクノ事業の売上高は前年同期比16.9%増の8,220百万円、セグメント利益は同28.1%増の774百万円となった。ここ数年取り組んできたエンジニアの育成・輩出スキーム「人が活きるカタチ アカデミア」※が奏効し、主に自動車関連の機械設計技術者の輩出が順調に推移し取引先が拡大したほか、情報通信サービス関連についても営業強化により取引先が拡大した。分野別の売上動向を見ると、自動車分野が前年同期比43.6%増と大きく伸長したほか、主力の半導体分野が同7.0%増、情報通信サービス分野が同9.2%増と堅調に推移した。なお、その他分野が同30.5%増と伸びているが、2018年12月期第1四半期よりシステム受託開発会社の西肥情報サービス(株)を子会社化したことが一因となっている。

※ 既存社員に対しては、キャリアチェンジのための教育や保有技術の更なる深化に取り組み、未経験者については、「デザインセンター」での3D-CAD研修、「プロダクションエンジニアリングセンター」での生産技術研修、アドバンと連携したプログラミング研修、ネットワークインフラ研修等を実施した。


セグメント利益率は前年同期比0.8ポイント上昇の9.4%となった。増収効果に加えて、高スキル人材の育成に伴ってチャージアップが進んだことが要因だ。2019年の新卒採用者数は、前年の111名から175名と大幅に増加した。人材育成体制を構築できたことで、積極的な採用活動を実施したことによる。2019年4月〜6月の平均在籍数は前年同期比13.4%増の2,639人と過去最高を更新し、なかでも設計開発人員が同22.8%増の1,515人と大幅に増加した。

c) R&D事業
R&D事業の売上高は前年同期比5.0%増の3,504百万円、セグメント利益は同6.7%増の263百万円となった。売上動向を見ると、研究者派遣部門のうち医薬・バイオ分野は既存顧客との取引が拡大し、前年同期比11.8%増と好調に推移し、化学分野が同0.4%増、臨床分野が同2.1%増となった。一方、臨床試験受託部門はDOTワールドの構造改革を進めるなかで、企業治験の受託案件を着実に遂行し同1.7%増となった。セグメント利益率は前年同期比0.1ポイント上昇の7.5%となった。

研究者派遣部門では、東京大学や京都大学をはじめとした提携大学の共同研究ラボでの高スキル人材の育成やホスピタリティマインドを中心とした外部研修等を充実させ、採用面においても優秀な研究社員の厳選採用を行っており、「派遣会社」から「技術支援企業」としての業界のポジションをより深化させている。一方、DOTワールドについては人員の適正化に取り組んだほか、日本で臨床試験を実施する外資系バイオベンチャー等をターゲットに、受注していく戦略となっている。2019年の新卒採用者数は前年の66人から96人に増加し、2019年4月〜6月の平均在籍数(現業社員)も前年同期比3.9%増の1,093人と過去最高を更新した。

d) セールス&マーケティング事業
セールス&マーケティング事業の売上高は前年同期比8.2%減の1,695百万円、セグメント損失は33百万円(前年同期は60百万円の損失)となった。量販店やコールセンター等の既存領域の取引拡大に加えて、高付加価値領域への進出に取り組んでおり、四半期ベースで見れば2019年12月期第2四半期の売上高は前年同期比10.5%増の885百万円と8四半期ぶりの増収に転じており、損失額も16百万円(前年同期は48百万円の損失)に縮小している。2019年4月〜6月の平均稼働スタッフ数も前年同期比14.4%増の1,362人と増加に転じており、今後は稼働スタッフ数の増加に伴い収益の改善が進む見通しだ。

また、2019年後半より新規分野としてホテル業界に特化した総合人材サービスを開始するため、(株)JTBコミュニケーションデザインとの共同出資で(株)JWソリューションを同年4月に設立した(出資比率80.2%)。ワールドホールディングス<2429>の持つ人材募集・採用・管理ノウハウと、JTBコミュニケーションデザインが持つ独自のホスピタリティメソッドにのっとった人材育成ノウハウの融合によって、ホテル業界をはじめとした観光産業に特化した質の高い人材ソリューションサービスを展開していく計画となっている。

(2) 不動産事業
不動産事業の売上高は前年同期比0.2%減の20,377百万円、セグメント利益は同56.5%増の1,227百万円となった。デベロップメント(自社開発)関連において物件の適切なタイミングでの仕入れを行うなかで、戦略的に一部の事業用地の売却を前倒しで行ったこと(当初は第4四半期を予定)、並びにリノベーションや戸建住宅関連が順調に拡大したことが増益要因となった。

分野別の売上高を見ると、デベロップメント関連は大型分譲マンションの販売が一巡したことにより、前年同期比27.2%減の6,441百万円となった。リノベーションは前期に開設した埼玉、奈良の営業所がフル稼働したことに加えて、2019年3月には13拠点目となる神戸営業所が稼働するなど、営業エリアを拡大してきた効果もあり同11.6%増の7,369百万円となった。また、戸建住宅関連も北海道を中心に同44.7%増の4,366百万円と大きく伸長した。そのほか、ユニットハウス関連は九州エリアでの営業強化が奏効し同18.7%増の813百万円となったほか、販売受託等も同9.6%増の1,388百万円と堅調に推移した。

同事業をビジネスモデル別にフロー型(デベロップメント関連・戸建住宅関連)とストック型(リノベーション・ユニットハウス、販売受託他)に分けて業績を見ると、フロー型ビジネスは売上高で前年同期比8.9%減の10,807百万円、セグメント利益で同84.2%増の1,013百万円となり、ストック型ビジネスは売上高で同11.9%増の9,570百万円、セグメント利益で同8.5%減の214百万円となった。

(3) 情報通信事業
情報通信事業は売上高が前年同期比3.8%増の6,999百万円、セグメント利益が同33.4%減の48百万円となった。売上高の内訳について見ると、モバイルショップ運営は前年同期比4.2%増、法人向けソリューションは同1.0%減となった。

モバイルショップ運営については、優良店舗網構築のため店舗の統廃合を進め、2019年12月期第2四半期末の直営店舗数は前期末比8店舗減の43店舗となったが、店舗の大型化により1店舗当たりの売上高は増加した。法人向けソリューションでは新規商材販売のためのコールセンター整備等を実施するなど、下期以降の販売体制強化に取り組んだ。

(4) その他
その他事業の売上高は前年同期比26.4%増の2,117百万円、セグメント利益は196百万円(前年同期は130百万円の損失)となった。売上高の内訳を見ると、ファームが展開する農業公園施設運営関連が前年同期比28.6%増と好調に推移した。2019年3月に西日本最大級となる巨大アスレチック施設をオープンした「滋賀農業公園ブルーメの丘」(滋賀)で入園者数が前年同期比65%増となったほか、「シルバニアパーク」を展開する「こもれび森のイバライド」(茨城県稲敷市)も同33%増と好調で投資効果が顕在化した形となり、グループ全体の入園者数が同14.4%増の54.4万人に拡大したことが増収要因となった。増収効果で収益性も改善しており、同事業については2019年12月期に償却前利益で収支均衡ラインに、2020年12月期に償却後利益での黒字化が射程圏内に入っている。また、PCスクールを展開するアドバンについては、Web制作が順調に推移したほかグループ内外での教育サービスが好調で、前年同期比69.2%増収となった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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