■中長期の成長戦略
2. 成長戦略
ダイキアクシス<4245>の成長戦略は、水に関わるインフラの膨大な需要が見込まれる海外事業を急拡大すること、国内ではメンテナンス事業や上水事業などストック型ビジネスの積み上げを継続することである。住宅機器関連事業は、従来の「安定」から「成長」への転化を図る。未開拓地域への営業強化によるエリア攻略、ECによるリフォーム市場における事業機会の獲得や新たな商材の取扱いを進め、集中購買制の採用による利益率の改善を図る。再生可能エネルギー関連事業では、DCMグループ店舗を利用する太陽光発電に係る売電事業が2020年12月期からフルに寄与する。小形風力発電機関連事業は、IDを譲受して事業主体となる新たな展開を開始した。売上高の目標には、新たなM&Aによる寄与を勘案していない。
(1) 海外展開
海外現地生産化を推進し、コスト競争力を高め、需要を喚起して、2021年12月期の海外売上高を30億円と3年間で約3倍とすることを目指している。新市場開拓に当たって、2015年4月に海外営業統括部を新設した。現地に進出して工場や商業施設の建設、マンションや戸建て住宅団地の不動産開発を手掛ける日系企業に対して、日本国内でも顧客企業に採用を働きかけている。成長を加速するため、環境機器事業本部の下に東京を拠点とする海外営業統括部を移し、松山の技術事業部と生産事業部との連携を強化している。海外事業の展開に応じて、営業・技術・生産が一緒になって最適な支援を行う。
a) インドネシア
2013年10月にインドネシアの現地企業(現 PT. DAIKI AXIS INDONESIA)を買収・連結子会社とし、東南アジア地域の橋頭堡を獲得した。同国に新工場を建設し、生産能力を以前の5倍に拡大すると同時に、新規生産設備の導入による自動化を進め、日本品質を確立するとともに生産性を向上させた。製品面では1年中温暖な東南アジアでは低温時の対策が不要であることから、機能を絞り込んで製造コストを削減した。生産能力は、大型・中型・小型槽で各200~250基となる。
インドネシアのジョコ大統領は、2019年8月に首都を現在のジャカルタから国のほぼ中央に位置するカリマンタン島に移す考えを正式に表明した。ジャカルタの首都圏人口は3,000万人を超え、人口の過密化や交通渋滞が深刻な問題となっている。遷都までに解決しなければならない課題は多いだろうが、環境配慮型の都市づくりが予想されることから、同社グループに多くのビジネス機会をもたらすだろう。
b) 中国
2017年11月、習近平国家主席は、きれいなトイレを整備する「トイレ革命」を推進するよう指示した。観光地や都市だけでなく、農村部でも大衆生活の品質として充足すべきと言及されており、広く下水処理施設の導入が急がれる機運となった。2014年以降、農村の環境改善のためPPP(Public Private Partnership:官民協力事業)が進展している。農村人口8億人中の1~2億世帯が、浄化槽の潜在市場と推測される。民間導入による価格適正化と水質基準の厳格化により、日本型浄化槽の進出余地が高まっている。市・鎮などの自治体が、浄化槽製造・敷設・運営を一体で入札を募集し、25年間の水質保証を義務付けている。
2018年7月に家庭用合併処理浄化槽の製造を行う合弁会社「凌志大器浄化槽江蘇有限公司」を設立した。出資比率は、現地企業の凌志環保股フン有限公司(江蘇省宜興市)が51%、同社が49%。同社にとって持分法適用関連会社となる。拠点とする宜興市は「国家環境保護モデル都市」に選ばれており、上海、蘇州を含む太湖エリアに入る。同工場は合弁先の敷地内に建設され、製品はそれぞれの出資会社に供給される(年間生産能力最大5,000台)。なお、日本国内における全メーカーの年間生産規模は12万~13万台で、内、同社の小型製品は6,000~7,000台になる。日本では生産拠点が複数ヶ所に分散しているのに対して、中国では1ヶ所の能力である。海外の生活排水は、食用油分が多く、浴槽入浴などの生活習慣が日本と違うため、原水濃度が高い。現地の生活習慣を考慮した、コストと排水処理能力を両立する浄化槽の開発・投入が期待される。
c) インド
インド国内の事業展開を加速することを目的に、2019年8月にグループ企業「DAIKI AXIS INDIA PRIVATE LIMITED」の増資を行った。インドでは「スワッチ・バーラト」(クリーン・インディア)がモディ政権の最優先課題の1つになっている。トイレの普及を急速に進めており、下水処理施設の整備が急がれる。2017年4月に、インド全土において18,000平米超の産業施設及び延床面積が2,000平米以上の居住施設に対して、水質の汚濁状況を表すBOD(生物化学的酸素要求量)が従来のBOD30からBOD10へ強化された。新築だけでも膨大な需要が発生するが、既存設備にも規制が及ぶ。既設のセプティックタンク(腐敗槽)では強化された規制をクリアできない。
2019年春にインドの生産委託先であるJyoti Plastics Works Pvt Ltd.に金型などの製造設備と技術指導を提供して、現地生産を開始した。生産委託先は、同社の代理店でもある。年産能力100台で始めたが、2020年以降に倍増を計画している。浄化槽の規模は、20~50世帯に対応する。同国では6社と販売代理店契約を締結しており、需要の拡大に応じて、生産のラインの拡充や工場の分散化、合弁会社の設立を検討する。
2019年9月に、代理店の1社であるEarth Water Limitedと合弁会社を設立した。Daiki Earth Water Private Limited Company(同社出資比率74%)は、インド国内において排水処理事業及びWater KIOSKによる飲料水販売事業をBOT※1及びBOO※2により展開することを目的とする。Water KIOSKは、公共施設や駅等に飲料水精製装置を設置し、有償で飲料水を販売する事業を言う。
※1 BOT(Build Operate Transfer)とは、民間が施設を建設・維持管理・運営し契約期間終了後に公共へ所有権を移転する方式。
※2 BOO(Build Own Operate)は、民間が施設を建設・維持管理・運営。契約期間終了後も民間が施設を所有し続ける、あるいは、施設を解体・撤去して事業を終了させる方式。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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2. 成長戦略
ダイキアクシス<4245>の成長戦略は、水に関わるインフラの膨大な需要が見込まれる海外事業を急拡大すること、国内ではメンテナンス事業や上水事業などストック型ビジネスの積み上げを継続することである。住宅機器関連事業は、従来の「安定」から「成長」への転化を図る。未開拓地域への営業強化によるエリア攻略、ECによるリフォーム市場における事業機会の獲得や新たな商材の取扱いを進め、集中購買制の採用による利益率の改善を図る。再生可能エネルギー関連事業では、DCMグループ店舗を利用する太陽光発電に係る売電事業が2020年12月期からフルに寄与する。小形風力発電機関連事業は、IDを譲受して事業主体となる新たな展開を開始した。売上高の目標には、新たなM&Aによる寄与を勘案していない。
(1) 海外展開
海外現地生産化を推進し、コスト競争力を高め、需要を喚起して、2021年12月期の海外売上高を30億円と3年間で約3倍とすることを目指している。新市場開拓に当たって、2015年4月に海外営業統括部を新設した。現地に進出して工場や商業施設の建設、マンションや戸建て住宅団地の不動産開発を手掛ける日系企業に対して、日本国内でも顧客企業に採用を働きかけている。成長を加速するため、環境機器事業本部の下に東京を拠点とする海外営業統括部を移し、松山の技術事業部と生産事業部との連携を強化している。海外事業の展開に応じて、営業・技術・生産が一緒になって最適な支援を行う。
a) インドネシア
2013年10月にインドネシアの現地企業(現 PT. DAIKI AXIS INDONESIA)を買収・連結子会社とし、東南アジア地域の橋頭堡を獲得した。同国に新工場を建設し、生産能力を以前の5倍に拡大すると同時に、新規生産設備の導入による自動化を進め、日本品質を確立するとともに生産性を向上させた。製品面では1年中温暖な東南アジアでは低温時の対策が不要であることから、機能を絞り込んで製造コストを削減した。生産能力は、大型・中型・小型槽で各200~250基となる。
インドネシアのジョコ大統領は、2019年8月に首都を現在のジャカルタから国のほぼ中央に位置するカリマンタン島に移す考えを正式に表明した。ジャカルタの首都圏人口は3,000万人を超え、人口の過密化や交通渋滞が深刻な問題となっている。遷都までに解決しなければならない課題は多いだろうが、環境配慮型の都市づくりが予想されることから、同社グループに多くのビジネス機会をもたらすだろう。
b) 中国
2017年11月、習近平国家主席は、きれいなトイレを整備する「トイレ革命」を推進するよう指示した。観光地や都市だけでなく、農村部でも大衆生活の品質として充足すべきと言及されており、広く下水処理施設の導入が急がれる機運となった。2014年以降、農村の環境改善のためPPP(Public Private Partnership:官民協力事業)が進展している。農村人口8億人中の1~2億世帯が、浄化槽の潜在市場と推測される。民間導入による価格適正化と水質基準の厳格化により、日本型浄化槽の進出余地が高まっている。市・鎮などの自治体が、浄化槽製造・敷設・運営を一体で入札を募集し、25年間の水質保証を義務付けている。
2018年7月に家庭用合併処理浄化槽の製造を行う合弁会社「凌志大器浄化槽江蘇有限公司」を設立した。出資比率は、現地企業の凌志環保股フン有限公司(江蘇省宜興市)が51%、同社が49%。同社にとって持分法適用関連会社となる。拠点とする宜興市は「国家環境保護モデル都市」に選ばれており、上海、蘇州を含む太湖エリアに入る。同工場は合弁先の敷地内に建設され、製品はそれぞれの出資会社に供給される(年間生産能力最大5,000台)。なお、日本国内における全メーカーの年間生産規模は12万~13万台で、内、同社の小型製品は6,000~7,000台になる。日本では生産拠点が複数ヶ所に分散しているのに対して、中国では1ヶ所の能力である。海外の生活排水は、食用油分が多く、浴槽入浴などの生活習慣が日本と違うため、原水濃度が高い。現地の生活習慣を考慮した、コストと排水処理能力を両立する浄化槽の開発・投入が期待される。
c) インド
インド国内の事業展開を加速することを目的に、2019年8月にグループ企業「DAIKI AXIS INDIA PRIVATE LIMITED」の増資を行った。インドでは「スワッチ・バーラト」(クリーン・インディア)がモディ政権の最優先課題の1つになっている。トイレの普及を急速に進めており、下水処理施設の整備が急がれる。2017年4月に、インド全土において18,000平米超の産業施設及び延床面積が2,000平米以上の居住施設に対して、水質の汚濁状況を表すBOD(生物化学的酸素要求量)が従来のBOD30からBOD10へ強化された。新築だけでも膨大な需要が発生するが、既存設備にも規制が及ぶ。既設のセプティックタンク(腐敗槽)では強化された規制をクリアできない。
2019年春にインドの生産委託先であるJyoti Plastics Works Pvt Ltd.に金型などの製造設備と技術指導を提供して、現地生産を開始した。生産委託先は、同社の代理店でもある。年産能力100台で始めたが、2020年以降に倍増を計画している。浄化槽の規模は、20~50世帯に対応する。同国では6社と販売代理店契約を締結しており、需要の拡大に応じて、生産のラインの拡充や工場の分散化、合弁会社の設立を検討する。
2019年9月に、代理店の1社であるEarth Water Limitedと合弁会社を設立した。Daiki Earth Water Private Limited Company(同社出資比率74%)は、インド国内において排水処理事業及びWater KIOSKによる飲料水販売事業をBOT※1及びBOO※2により展開することを目的とする。Water KIOSKは、公共施設や駅等に飲料水精製装置を設置し、有償で飲料水を販売する事業を言う。
※1 BOT(Build Operate Transfer)とは、民間が施設を建設・維持管理・運営し契約期間終了後に公共へ所有権を移転する方式。
※2 BOO(Build Own Operate)は、民間が施設を建設・維持管理・運営。契約期間終了後も民間が施設を所有し続ける、あるいは、施設を解体・撤去して事業を終了させる方式。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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