■業績動向
1. 2019年5月期の業績概要
E・Jホールディングス<2153>の2019年5月期の連結業績は、売上高で前期比1.4%増の26,172百万円、営業利益で同7.4%増の1,711百万円、経常利益で同4.3%増の1,709百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同30.5%増の1,261百万円となった。売上高は3期連続で過去最高を更新し、営業利益は3期連続増益、経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益は2期連続の増益となった。
受注高は前期比18.2%増の30,377百万円と過去最高を2期ぶりに更新し、初めて300億円台を突破した。2018年7月に発生した西日本豪雨災害による被災地の復旧・復興に向けた第1次補正予算や、防災・減災、国土強靭のための第2次補正予算が組まれたことで、関連分野の受注が拡大した。受注件数については前期比7.1%増の2,926件、1件当たりの受注額も同10.3%増の1,038万円と上昇傾向が続いている。
売上高は災害支援業務(約15億円)を優先して取り組んだため、他プロジェクトの工期が延伸するなどの影響があったものの、グループ会社の連携強化を進めた効果もあり増収を確保した。また、売上原価率は業務進捗管理の徹底に取り組んだことやCIM※の導入効果もあって生産効率が向上し、前期比0.6ポイント低下の70.2%となった。
※CIM(Construction Information Modeling/Management)は、建設プロジェクトにおいて計画、調査、設計段階から3次元モデルを導入することにより、その後の施工、維持管理の各段階においても3次元モデルを連携・発展させて事業全体にわたる関係者間の情報共有を容易にし、一連の建設生産システムの効率化・高度化を図ることを目的としたITシステムのこと。国交省でも公共工事等のコスト低減を目的に、CIM導入ガイドラインを策定している。
一方、販管費率は支店の改築やIT機器、最新計測機器(水中自走ロボットやドローン等)の導入など積極的な設備投資を実施したほか、働生き方改革の推進や積極的な新卒採用等(約60名)による人件費の増加で、前期比0.3ポイント上昇の23.3%となった。この結果、営業利益率は前期比0.3ポイント上昇し、6.5%となった。また、親会社株主に帰属する当期純利益の増益率が前期比、計画比ともに大きくなっているが、これは繰延税金資産の計上※により税負担が約4億円減少したことが主因となっている。
※エイト日本技術開発が1999−2002年にかけて(公財)宮崎県環境整備公社から受注した廃棄物処理施設「エコクリーンプラザみやざき」の一部である浸出水調整池の完成後の損傷及び浸出水の塩化物処理能力の不足が判明した件に関して、同公社より2010年にエイト日本技術開発及び工事施工会社3社に対して、1)同施設の完成後の損傷について1,014百万円の損害賠償、2) エイト日本技術開発に対して浸出水の塩化物処理能力の不足について573百万円(2015年に705百万円に変更)の損害賠償を求められていた裁判で、2017年5月にエイト日本技術開発に対して1,490百万円の賠償金を支払う旨の判決が出た。エイト日本技術開発は福岡高等裁判所に控訴したが、2018年6月に控訴棄却の判決が下り、事実上結審している。2017年5月期において1,490百万円の訴訟損失引当金繰入額を計上していたが、実現損となることで2019年5月期に繰延税金資産として計上した。
重点事業5分野の受注高は前期比30.4%増と大幅増
2. 受注高・売上高の動向
(1) 受注高の動向
2019年5月期の受注高は前期比18.2%増の30,377百万円となった。内訳を発注機関別で見ると、中央省庁が前期比19.0%増、都道府県が同22.8%増、市町村が同17.5%増、民間が同2.5%減、海外が同118.6%増となった。海外については2018年5月期からストップしていたJICA経由のプロジェクトが2018年末より復活したことで、2期ぶりの増加に転じている。民間向けは前期に高速道路運営会社向けを中心に2ケタ増と拡大したこともあり、当期は伸び悩む格好となった。
また、地域別の受注状況ではすべての地域で増加したことが特徴となっている。なかでも中部が前期比39.0%増、近畿が同23.5%増、中国が同19.7%増と高い伸びを示した。受注残高についても前期末比29.7%増の18,354百万円と過去最高水準に積み上がっている。
同社が重点事業分野と位置付ける5分野の受注状況について見ると、合計で前期比30.4%増の11,959百万円(会社計画10,000百万円)と2期ぶりに増加に転じ、会社計画も上回った。受注全体に占める構成比率では、前期の35.7%から39.4%に上昇している。分野別で見ると、自然災害リスク軽減分野が同59.1%増の5,764百万円と急拡大した。このうち、西日本豪雨災害による災害支援業務が約15億円含まれている。そのほか、環境・エネルギーやインフラマネジメント、情報・通信分野がそれぞれ増加し、前期に大きく伸張した都市・地域再生分野のみ減少した。
また、高付加価値型の技術提案型業務の受注額は会社計画の10,396百万円を下回ったものの、前期比15.2%増の9,489百万円と2期ぶりに増加した。提出件数が同2.7%増の1,154件に対して採択件数が同2.5%増の249件となり、採択率で前期比横ばいの21.6%となり、会社計画の28.3%を下回ったことが下振れ要因となっている。競争が激しいためだが、採択率の向上が今後の課題と言える。
(2) 売上高の動向
売上高を発注機関別で見ると、中央省庁が前期比7.8%増、民間が同3.2%増となったものの、市町村が同3.8%減、海外が同17.8%減と減少し、都道府県も横ばい水準にとどまった。災害支援業務に優先的に取り組んだことで、納期が延伸したプロジェクトが発生したことが、伸び悩みの要因となっている。
地域別の売上げ状況を見ると、近畿が前期比20.4%増、中部が同13.3%増、中国が同5.4%増となった以外は、すべて減少した。近畿や中部については道路・橋梁関連のプロジェクトが、中国では災害支援業務がそれぞれ売上増に貢献した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<SF>
1. 2019年5月期の業績概要
E・Jホールディングス<2153>の2019年5月期の連結業績は、売上高で前期比1.4%増の26,172百万円、営業利益で同7.4%増の1,711百万円、経常利益で同4.3%増の1,709百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同30.5%増の1,261百万円となった。売上高は3期連続で過去最高を更新し、営業利益は3期連続増益、経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益は2期連続の増益となった。
受注高は前期比18.2%増の30,377百万円と過去最高を2期ぶりに更新し、初めて300億円台を突破した。2018年7月に発生した西日本豪雨災害による被災地の復旧・復興に向けた第1次補正予算や、防災・減災、国土強靭のための第2次補正予算が組まれたことで、関連分野の受注が拡大した。受注件数については前期比7.1%増の2,926件、1件当たりの受注額も同10.3%増の1,038万円と上昇傾向が続いている。
売上高は災害支援業務(約15億円)を優先して取り組んだため、他プロジェクトの工期が延伸するなどの影響があったものの、グループ会社の連携強化を進めた効果もあり増収を確保した。また、売上原価率は業務進捗管理の徹底に取り組んだことやCIM※の導入効果もあって生産効率が向上し、前期比0.6ポイント低下の70.2%となった。
※CIM(Construction Information Modeling/Management)は、建設プロジェクトにおいて計画、調査、設計段階から3次元モデルを導入することにより、その後の施工、維持管理の各段階においても3次元モデルを連携・発展させて事業全体にわたる関係者間の情報共有を容易にし、一連の建設生産システムの効率化・高度化を図ることを目的としたITシステムのこと。国交省でも公共工事等のコスト低減を目的に、CIM導入ガイドラインを策定している。
一方、販管費率は支店の改築やIT機器、最新計測機器(水中自走ロボットやドローン等)の導入など積極的な設備投資を実施したほか、働生き方改革の推進や積極的な新卒採用等(約60名)による人件費の増加で、前期比0.3ポイント上昇の23.3%となった。この結果、営業利益率は前期比0.3ポイント上昇し、6.5%となった。また、親会社株主に帰属する当期純利益の増益率が前期比、計画比ともに大きくなっているが、これは繰延税金資産の計上※により税負担が約4億円減少したことが主因となっている。
※エイト日本技術開発が1999−2002年にかけて(公財)宮崎県環境整備公社から受注した廃棄物処理施設「エコクリーンプラザみやざき」の一部である浸出水調整池の完成後の損傷及び浸出水の塩化物処理能力の不足が判明した件に関して、同公社より2010年にエイト日本技術開発及び工事施工会社3社に対して、1)同施設の完成後の損傷について1,014百万円の損害賠償、2) エイト日本技術開発に対して浸出水の塩化物処理能力の不足について573百万円(2015年に705百万円に変更)の損害賠償を求められていた裁判で、2017年5月にエイト日本技術開発に対して1,490百万円の賠償金を支払う旨の判決が出た。エイト日本技術開発は福岡高等裁判所に控訴したが、2018年6月に控訴棄却の判決が下り、事実上結審している。2017年5月期において1,490百万円の訴訟損失引当金繰入額を計上していたが、実現損となることで2019年5月期に繰延税金資産として計上した。
重点事業5分野の受注高は前期比30.4%増と大幅増
2. 受注高・売上高の動向
(1) 受注高の動向
2019年5月期の受注高は前期比18.2%増の30,377百万円となった。内訳を発注機関別で見ると、中央省庁が前期比19.0%増、都道府県が同22.8%増、市町村が同17.5%増、民間が同2.5%減、海外が同118.6%増となった。海外については2018年5月期からストップしていたJICA経由のプロジェクトが2018年末より復活したことで、2期ぶりの増加に転じている。民間向けは前期に高速道路運営会社向けを中心に2ケタ増と拡大したこともあり、当期は伸び悩む格好となった。
また、地域別の受注状況ではすべての地域で増加したことが特徴となっている。なかでも中部が前期比39.0%増、近畿が同23.5%増、中国が同19.7%増と高い伸びを示した。受注残高についても前期末比29.7%増の18,354百万円と過去最高水準に積み上がっている。
同社が重点事業分野と位置付ける5分野の受注状況について見ると、合計で前期比30.4%増の11,959百万円(会社計画10,000百万円)と2期ぶりに増加に転じ、会社計画も上回った。受注全体に占める構成比率では、前期の35.7%から39.4%に上昇している。分野別で見ると、自然災害リスク軽減分野が同59.1%増の5,764百万円と急拡大した。このうち、西日本豪雨災害による災害支援業務が約15億円含まれている。そのほか、環境・エネルギーやインフラマネジメント、情報・通信分野がそれぞれ増加し、前期に大きく伸張した都市・地域再生分野のみ減少した。
また、高付加価値型の技術提案型業務の受注額は会社計画の10,396百万円を下回ったものの、前期比15.2%増の9,489百万円と2期ぶりに増加した。提出件数が同2.7%増の1,154件に対して採択件数が同2.5%増の249件となり、採択率で前期比横ばいの21.6%となり、会社計画の28.3%を下回ったことが下振れ要因となっている。競争が激しいためだが、採択率の向上が今後の課題と言える。
(2) 売上高の動向
売上高を発注機関別で見ると、中央省庁が前期比7.8%増、民間が同3.2%増となったものの、市町村が同3.8%減、海外が同17.8%減と減少し、都道府県も横ばい水準にとどまった。災害支援業務に優先的に取り組んだことで、納期が延伸したプロジェクトが発生したことが、伸び悩みの要因となっている。
地域別の売上げ状況を見ると、近畿が前期比20.4%増、中部が同13.3%増、中国が同5.4%増となった以外は、すべて減少した。近畿や中部については道路・橋梁関連のプロジェクトが、中国では災害支援業務がそれぞれ売上増に貢献した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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