[資源・新興国通貨6月の展望]トルコリラ:米国とトルコの関係改善への期待が浮上
トルコリラ
トルコ政府やTCMB(トルコ中銀)は、3月の統一地方選前からトルコリラを下支えする措置を相次いで講じてきました。投機筋の空売り阻止や一部の外為取引への課税の再導入、1週間物レポオークションの中止(オークションは5/21に再開)、市中銀行が外貨預金について中銀に預け入れる準備率の引き上げなどです。ただ、それらの措置は、その場しのぎの策に過ぎないと考えられます。
市場では、米国とトルコの関係が改善に向かうとの期待が浮上しました。エルドアン大統領が5月29日のトランプ米大統領との電話会談で、“S-400(ロシア製の地対空ミサイルシステム)”の影響を共同調査する作業グループの設置を提案し、両大統領は6月28-29日のG20サミットに合わせて会談を行うことで合意したためです。G20サミットに向けて、両国の関係改善への期待がトルコリラを下支えする可能性はあります。
ただ、トルコがS-400の購入を撤回するか、少なくとも見直す姿勢を示す必要があると考えられます。そうでなければ、トルコリラにはいずれ下落圧力が加わる可能性があります。
豪ドル
RBA(豪中銀)の政策会合が6月4日に開催されます。その結果が豪ドルの動向に影響を与えそうです。
4日の会合では0.25%の利下げが決定されそうです。市場は利下げをほぼ確実視しており、関心は声明で“追加利下げが示唆されるのか”へと移りつつあります。
市場では、8月にも追加で利下げが行われるとの観測があります。声明の内容がその見方を補強するものになれば、豪ドルには下押し圧力が加わるとみられます。一方、声明がそれほどハト派的な内容にならなければ、豪ドルは上昇する可能性もあります。
米中の貿易摩擦や通商協議に関する報道にも引き続き注意が必要です。6月28・29日のG20サミットに向けて、それらに関する報道が出てくる可能性があり、その場合には豪ドルが反応しそうです。米中貿易摩擦への懸念が後退すれば、豪ドルの支援材料になりそうです。
NZドル
6月のNZドルは、20日のNZ1-3月期GDPが最大の独自材料になりそうです。RBNZ(NZ中銀)は5月8日の会合で0.25%の利下げに踏み切りましたが、市場では追加利下げ観測があります。GDPが軟調な結果になった場合、利下げ観測は一段と強まり、NZドルに対して下落圧力が加わる可能性があります。
NZドルは豪ドルと同様、米中の貿易摩擦や通商協議に関する報道にも引き続き注意が必要です(上述)。
カナダドル
米国は5月、カナダとメキシコに対する鉄鋼・アルミニウム関税を撤廃しました。それらの関税がカナダとメキシコにおいてUSMCA(米国・カナダ・メキシコ・カナダ協定)批准の大きな障害となっていました。鉄鋼・アルミニウム関税の撤廃によってUSMCAの批准に向けて一歩前進したと見なすことができ、カナダドルの支援材料になりそうです。
ただし、原油価格の動向にも注意は必要でしょう。米WTI先物(原油価格の代表的な指標)は5月30日に約2カ月ぶりの安値を記録しました。米中貿易摩擦の影響によって世界景気が減速するとの懸念があり、それが原油価格への下押し圧力となっています。原油価格が下落を続ける場合、カナダドルは上値が重くなることが考えられます。
南アフリカランド
ラマポーザ大統領は5月29日、新内閣を発表しました。市場からの信認が厚いムボウェニ財務相やゴーダン公共企業相を留任させ、閣僚の数を36から28に減らすなど、経済改革を進める姿勢を示しました。そのことは、南アフリカランドにとってプラス材料と考えられます。
ただ、マブーザ副大統領が留任したことは、今後南アフリカランドの重石となり得ます。マブーザ副大統領の不正疑惑があるためです。ランドについては、南アフリカの政局の動向に注意が必要かもしれません。
米中の貿易摩擦や通商協議に関する報道にも引き続き注意が必要です。両国の貿易摩擦への懸念が後退した場合、南アフリカランドは上昇する可能性があります。
メキシコペソ
トランプ米大統領は5月30日、「不法移民の流入が止まるまで、6月10日からメキシコからの輸入品すべてに対して5%の関税を課す」と表明。「不法移民の問題が解消されるまで、関税率は徐々に引き上げられ、10月には25%に達する可能性がある」としました。
米国はメキシコの輸出全体の8割強を占める最大の輸出先です。そのため、米国がメキシコに対する関税を引き上げることは、メキシコ経済はもちろん、メキシコペソにとってもマイナス材料です。
メキシコペソは、米国とメキシコの通商政策に関する報道に注意が必要です。メキシコが報復関税を発動するなどして両国の貿易摩擦が激化した場合、ペソには下落圧力が加わる可能性があります。
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