■5月20日(月)■コラム 危機の中、下がらない株式市場

著者:堀篤
投稿:2019/05/20 08:43

最悪の状況を一旦回避し、ボックス圏を形成する市場

■最悪の状況を一旦回避し、ボックス圏を形成する市場

 先週、日経平均株価は、危機のトリガーとなる20000円台前半への下落を、寸前(20751円)で回避することに成功した。引き続き、緊迫した局面は続くが、危機感は共有され始めており、この水準を維持できれば、官製相場になったとしても、まずはボックス圏の動きへ移行させることはできるだろう。3月中に推移したように、20700円~21700円程度の狭いボックス圏が再現される可能性が高いと考える。しかしその為の重要な条件は、今後待ち受ける様々なマイナス材料に対して、なんとか今回の下値に近い20700円、そして最悪でも2月の安値20315円をキープすることだ。
 先週の下落に歯止めをかけたのは、米中通商問題を巡る新解釈だろう。
「米中間の関税が25%となったとしても、米中景気は強さを維持できる」
この見方が、市場の雰囲気を楽にさせた。
IMFによれば、米中関税を25%とした場合のGDPへの影響は米国で最大0.6、中国で1.5となっている。この数値は決して小さなものではないが、それでも投資家は底知れぬ恐怖心をもっていたがために、「不安が限定された」ことにより、逆に市場には安心感が出てきたようだ。

■5月下旬から6月中旬の日程に注目

このボックス圏維持のためには、景気指標の数値がより重要になり、FRBの緩和的姿勢もより重要になってくる。そして今後、東京市場の関心ごとは、日米貿易物品問題に、本格的に移るだろう。6月28日29日の大阪G20に向け、先制口撃を得意とするトランプ氏と、融和戦略に長けた安倍政権の激しいやり取りが佳境に入ると思われる。日経平均がボックス圏を抜けるのは、米中問題が解決に向かうか、米中問題が悪化せず、欧州危機や地政学リスクも表面化せず、日米問題に解決の見通しがついたときだろう。
これらの問題については、G20までの期間においての実務者協議あるいは首脳会談で、大きく事態が変化する可能性がある。投資家のメインシナリオは、これらの調整がうまくいく、という楽観的な見方にある。また、欧州経済危機は、本来、より深刻な状況ではあるが、いまはまだ、その危機は表面化せず、ユーロ安のドル高、という一面を通して、東京市場には目先ではプラスの影響とさえ映っている。多くの投資家はこのリスクには、まだ眼を瞑っている、と言って良いだろう。

■内需大型+材料株

 これらの要素を考慮してか、株式市場は、焦点を絞れない展開が続いている。
先週の上昇セクターは、1.不動産、2.資源、3.運輸・物流、4.食品といったセクターで、下落セクターは、1.医薬品、2.鉄鋼非鉄、3.銀行、4.自動車だ。特に先週、市場を引っ張ったのは、4.2%と断トツのパフォーマンスを上げた不動産セクターだったが。この動きが続くとも考えづらい。
 自社株買いを発表したソニーや、DeNAの株価は急騰し、市場では個別の材料を探す展開となっているが、ファーウェイに対する制裁により、これから半導体銘柄などに影響が出てくる可能性がある。中小型銘柄の材料、好業績銘柄と、日経平均が21000円割の水準での内需大型株、という投資対象の選別が当面続きそうだ。
堀篤
日本マネジコ、東京スコットマネジメント代表取締役
配信元: 達人の予想