トライSTG Research Memo(5):主力のテレビ事業は仕入調整を実施した効果で収益性が回復

配信元:フィスコ
投稿:2019/05/17 15:05
トライステージ<2178>の業績動向

2. 事業セグメント別動向
(1) ダイレクトマーケティング支援事業
ダイレクトマーケティング支援事業の売上高(内部取引控除前、以下同様)は前期比10.1%減の31,946百万円、営業利益は同7.7%減の1,139百万円となった。このうちテレビ事業の売上高は同11.8%減の29,292百万円、営業利益は同2.8%増の1,184百万円と減収増益となり、WEB事業の売上高は同23.7%増の3,158百万円、営業利益は44百万円の損失(前期は82百万円の利益)となった。

a) テレビ事業
テレビ事業は2018年2月期に減収減益となったことを受け、収益力の回復を最優先課題として取り組んだ。具体的には、レギュラー番組放送枠の仕入量を需要に合わせて絞り込み、販売価格の適正化に取り組んだほか、利益率の低い成果報酬型契約を結んでいた顧客との契約条件の見直しを行った。これらの取り組みにより、売上総利益率は前期の10.0%から12.3%に回復、特に第4四半期は13.1%まで上昇するなど想定以上の回復を見せた。仕入量の削減に伴って売上高は2期連続で減少したが、売上総利益率の向上により営業利益は2期ぶりの増益に転じた。

顧客動向について見ると、売上高上位5社は総じて低調に推移し、特に下期において売上高が一段と減少した。一方、新規顧客は34社獲得するなど順調に推移し、第4四半期はモバイル情報機器関連の出稿が好調だったことを受け、前年同期比約2倍の増収となった。

b) WEB事業
アドフレックスで展開するWEB事業については、前第2四半期から連結に加わったため、売上高は増加したものの、前第2−第4四半期との比較では減収となっている。特定顧客からの受注減少が主因だが、四半期ベースで見ると第4四半期は前年同期比24.9%増の944百万円と好調に推移しており、一時的な落ち込みと見られる。営業利益については事業拡大に向けた人材採用を積極に行ったことが減益要因となった(期末従業員数は前期末比16名増)。なお、のれん償却費を66百万円計上しており、のれん償却控除前ベースでは22百万円の利益を確保している。

同社は今後の成長戦略として、デジタルマーケティング領域における先進的なAIツールを積極的に導入し、新規顧客企業の獲得や既存顧客との取引拡大を進めていく方針を打ち出している。その第1弾として、2018年9月に海外で実績があるリスティング広告最適化AIツール「AdScale」※の国内における独占販売権を取得し、拡販に取り組んでいる。従来、リスティング広告の運用は労働集約的で運用担当者の負荷も大きかったが、AI技術を活用することで費用対効果の向上を目指したツールとなる。販売開始以降20社以上で導入が進み、平均で20%以上のCPA(成果1件当たりの広告費用)改善効果が出ており、業界での注目度も高まっている。2019年2月に(株)日本マーケティングリサーチ機構が実施したAIツールを扱う会社のブランドイメージ調査において、「マーケティング担当者が選ぶAIツールNo.1」「導入しやすいAIツールNo.1」「AIに強い会社No.1」の3部門で第1位の評価を獲得するなど、今後の収益貢献が期待できるサービスとして注目される。

※「AdScale」はオランダのAdScaleBV(以下、AdScale)が開発したAIツールで、世界唯一の自動施策レコメンド機能、AsScaleの独自開発した入札・予算最適化アルゴリズムにより、リスティング広告の運用効率向上を図るツールとなる。海外では30カ国で4千社以上の企業に利用されている。同社の売上は導入時のコンサルティング収入のほか、広告クリック数に応じた課金収入が計上されることになる。


(2) DM事業
MCCが展開するDM事業の売上高は前期比7.9%増の18,505百万円、営業利益は同32.2%増の359百万円となり、会社計画をいずれも上回った。発送料金値上げの影響が懸念されたが、逆にメール発送代行事業者の中で大手の寡占化が進み、同社も新規顧客の獲得によりDM取扱通数で過去最高となる年間3億通を達成した。利益面では、増収効果に加えて、既存顧客に対する販売価格の見直しが進んだこと、のれん償却費が前期の110百万円から60百万円に減少したことなどが増益要因となった。のれん償却控除前営業利益率で見ると、前期の1.9%から2.0%と若干ながら上昇している。

(3) 海外事業
海外事業の売上高は前期比2.8%増の1,811百万円、営業損失は422百万円(前期は259百万円の損失)となった。Merdis、JMLを中心にASEAN地域でのテレビ通販やEC、リテール及び卸売を展開しているが、売上げをけん引してきた健康器具等の主力商品のライフサイクルが終盤を迎えるなかで代替するヒット商品が生まれず、各子会社ともに売上高の伸び悩みによる苦戦が続いた。

こうした状況下で、海外事業について事業戦略の見直しを進めており、当第2四半期に棚卸資産評価損114百万円を計上したほか、Merdis、JMLに関するのれんの全額償却を実施、また、2018年12月にはタイの子会社TSMを解散した。子会社別の業績を見ると、JMLは売上高で793百万円(前期は742百万円)、のれん償却控除前の営業損失で166百万円(同34百万円の損失)、Merdisは売上高で1,019百万円(同908百万円)、営業損失で9百万円(同59百万円の利益)、TSMは売上高で9百万円(前期は3百万円)、営業損失で18百万円(同4百万円の損失)となった。

(4) 通販事業
NHAで2017年3月より開始した通販事業の売上高は前期比466.9%増の372百万円、営業損失は271百万円(同237百万円の損失)となった。漢方薬の商品ラインナップ拡充と新聞やテレビ、ラジオを使った広告宣伝効果によりCPO(新規顧客獲得コスト)については想定を上回ったものの、リピート率の向上が課題となっている。リピート率の低い要因としては、漢方薬のため効果を感じるのに時間がかかることや、軽い副作用などが出て医者に止められるケースがある。

なお、NHAに関しては投資時の事業計画から今後の収益見通しに乖離が生じたため、トライステージ単体にて子会社株式の減損損失483百万円を計上している。

(5) その他事業
その他事業の売上高は前期比7.2%増の1,497百万円、営業利益は同91.3%減の1百万円となった。売上高については、日本百貨店が運営する小売事業「日本百貨店」において、既存店舗の売上げが堅調に推移したことに加えて、2018年5月に初の飲食店となる「日本百貨店さかば」(東京・丸の内)、同年11月に食品と雑貨を同時に扱う店舗「となりに。日本百貨店 八王子オーパ店」(東京・八王子)を出店したことが増収に寄与した。期末店舗数は前期末比1店舗増の8店舗となっている。利益面では、新規出店費用や管理体制を強化するための人件費増が減益要因となった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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