サイオス Research Memo(2):AI、クラウドサービス、Fintech領域に注力するIT企業

配信元:フィスコ
投稿:2019/04/01 15:22
■会社概要

1. 会社沿革
サイオス<3744>はLinuxに代表されるOSSを活用したITシステム開発領域での事業展開を目的に1997年に設立された。その後、国内外でM&Aを活用して事業領域を拡大してきた。2006年には米国のIT企業の株式を取得し、海外への進出を果たしたほか、2008年にクラウドサービスの開発販売を行う(株)グルージェントを子会社化、また、2015年には金融市場への事業展開を目的にKPSとPCIを相次いで子会社化した。2017年10月には持株会社体制に移行し、既存事業に関しては新たに設立したサイオステクノロジー(株)に承継している。

従来、同社の金融業界向けの売上構成比は数%程度にとどまっていたが、KPS、PCIを子会社化したことで構成比が約2割に上昇し、成長が見込まれる国内Fintech領域への事業基盤を構築したと言える。2018年12月末時点における主な連結子会社数は5社、持分法適用関連会社は2社、連結従業員数は440名となっている。

2. 事業内容
事業セグメントは、オープンシステム基盤事業とアプリケーション事業に区分されている。各事業の概要については以下のとおり。

(1) オープンシステム基盤事業
オープンシステム基盤事業は、ITシステムの障害時のシステムダウンを回避するソフトウェア「LifeKeeper」や、Linux OSで世界標準となっている「Red Hat Enterprise Linux」(Red Hat, Inc.の主力製品である企業向けサーバーOS)を始めとしたRed Hat, Inc.関連商品、OSS技術に関するサポートサービスやOSS関連商品のほか、「SIOS iQ」や「SIOS Coati」、各種情報システム向けのコンサルティングサービス等が含まれる。このうち、「LifeKeeper」「SIOS iQ」は米子会社が開発した製品で、国内だけでなく海外でも販売されている。

(2) アプリケーション事業
アプリケーション事業は、MFP向けソフトウェア製品や、G Suite及びMicrosoft Office 365に連携した業務用クラウドサービス「Gluegentシリーズ」のほか、2015年に子会社化したKPS、PCIの事業が含まれる。KPSは主に証券会社を顧客とし、業務用アプリケーションの開発販売を行っているほか、従業員のモチベーションを「見える化」するITツール「Willysm(ウィリズム)」のサービスを提供している。また、PCIは地方銀行やネットバンクを主要顧客とし、主にALMシステム※の開発、導入・運用支援サービスを行っている。地方銀行向けのALMシステムでは同社のほか、3社(新日鉄住金ソリューションズ<2327>、データ・フォアビジョン(株)、日本ユニシス<8056>)で寡占状態となっている。

※ALM(Asset Liability Management):銀行の資産・負債を総合的に管理するソフトウェア製品。


3. 同社の特徴と強み
同社の特徴と強みは、国内で先駆してOSSをベースとした事業展開をしてきたことで、OSSに関する技術や運用ノウハウなどの知見が深いことが挙げられる。OSSに携わる技術者のレベル、あるいは運用サポート体制は顧客企業からも高く評価されており、競合他社の追随を許さない。同社の主要顧客としてNTT<9432>グループやトヨタ自動車<7203>など日本を代表する大企業が名を連ねていることからも、その評価の高さがうかがえる。競合はNEC<6701>富士通<6702>など大手IT企業となるが、これら企業は自社開発製品が主力でOSS関連製品は傍流となるため、あまり注力していない。また、OSS分野を専門にサポートしている競合はほとんど見当たらない。

Linuxディストリビューション企業(商用Linuxの配布・サポートを行うことに特化した企業)として世界最大のRed Hat, Inc.とは創業時より緊密な連携関係にあり、「Red Hat Enterprise Linux」を始めとする関連商品の販売で同社は国内最大規模の代理店となっている。Javaを使ったシステム開発も設立当初より手掛けており、その技術基盤をベースとして、リコー<7752>のMFP向けソフトウェア製品を開発した。同事業は2009年に販売を開始して以降、MFPへの搭載率の上昇によって順調に成長を続けている。

なお、同社の商流はOSSのシステム開発やサポートサービス、子会社のKPSやPCIを除けば、間接販売が大半を占めており、主に大塚商会<4768>などのSI事業者を経由して最終顧客に販売されている。2018年12月期実績で見ると、大塚商会向けの売上構成比率が全体の27.0%を占めている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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