■業績動向
1. 2018年12月期第2四半期の業績動向
クロス・マーケティンググループ<3675>の2018年12月期第2四半期の業績は、売上高8,608百万円(前年同期比5.7%増)、営業利益459百万円(同11.6%増)、経常利益409百万円(同20.3%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益187百万円(371百万円増益)となった。主力のリサーチ事業において外注費が増加して売上総利益を圧迫したが、ITソリューション事業の好調な売上と前年同期に計上したのれん償却費がなくなったことにより、営業利益は2ケタの増益となった。また、持分法による投資損失の縮小や前年同期に発生した減損損失がなくなったことなどにより、経常利益は営業利益を上回る伸びとなり、親会社株主に帰属する四半期純利益は大きく黒字転換した。なお、期初の業績予想と比較すると、売上高で89百万円未達だったものの、ITソリューション事業が好調に推移したことなどにより、営業利益で30百万円、経常利益26百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益で15百万円の超過達成となり、全体として順調な業績だったと言えるだろう。
セグメント別業績では、リサーチ事業が売上高7,260百万円(前年同期比3.2%増)、営業利益1,023百万円(同1.7%減)となった。国内では、主力事業会社であるクロス・マーケティングを中心に、グル—プ連携による海外調査の対応力強化や新サービスの開発・提供により、直接販売となる大型案件の受注が拡大した。海外でも、Kadenceグループでの大型案件の受注が継続しており、売上拡大につながった。一方、営業利益については、国内外で受注した大型案件への対応で外注費が増加したため、前年同期を下回る結果となった。
ITソリューション事業は売上高1,321百万円(同30.6%増)、営業利益110百万円(同67.8%増)となった。金融業界中心に既存顧客との良好な関係を構築してきたことにより、継続的に開発案件を受注できた結果であり、システムの受託開発を行う(株)クロス・コミュニケーションと、エンジニア派遣を行う(株)クロス・ジェイ・テックがともに収益をけん引した。その他の事業は売上高284百万円(同12.8%減)、営業利益1百万円(同95.7%減)となった。プロモーション事業を展開するディーアンドエムが、現在、業務提携などによるサービスの裾野の拡大や顧客の開拓を推進しているが、売上構成の変化や事業拡大に向けた先行的人員採用などにより、売上高・営業利益ともに前年同期を下回ることとなった。
期初の業績予想比ではリサーチの苦戦を販管費抑制でカバー
2. 各事業の計画差異と課題
2018年12月期第2四半期業績は、全体として順調な進捗と言えるが、セグメントや収益・費用の間では大きな入り繰りが発生した。連結全体では、外注費の増加などにより売上総利益が想定に届かなかったもようだが、先行的に確保する予定だった人員採用を抑制、やや保守的に見積もっていた各種経費を削減することで営業利益を確保した格好である。
国内リサーチ事業において、通期で大幅増収を見込んでいた売上高が第2四半期で横ばいにとどまった。これは、営業を強化したことで大手顧客に対する直接販売が増加したものの、一部既存顧客が同業他社の傘下に入るなど間接販売が減少したこと、つまり顧客ポートフォリオが変化したことが背景にあると考えられる。直接販売は企画や提案からレポート作成までフルラインに近い作業が求められることが多い上、案件が大型化すればカバーする以上のエリアを調査する必要が生じる。このため、従来のリサーチデータを直接または加工して調査会社に提供するだけの間接販売と異なり、直接販売では調査内容・サービス提供範囲が広がるため外注が増えることにより原価を押し上げる。
2018年12月期第2四半期は、国内リサーチ事業ではグローバルの大型案件が増加したため外注費も増加、原価率が上昇して営業利益も計画を下回ったと推測される。海外リサーチ事業においても原価率が上昇した背景は同様で、売上高こそ営業施策により1ケタ後半の伸びを確保したものの、拠点の整理や統合など組織体制を整備中のところに、大型案件が増えて外注費が増加し売上総利益率が低下したのである。こうした顧客ポートフォリオの変化に対して、下期以降、内外リサーチとも原価のコントロールが大きな課題になったと言えるだろう。
ITソリューション事業では、既存顧客との良好な関係を背景に、開発案件の受託やエンジニアの派遣が好調で利益が大幅に増加した。しかし、大型案計を継続するためにも、エンジニアの確保が課題となってきた。その他事業では、グーグルやヤフーの検索アルゴリズムの変更などの影響をクリアし、足元で営業組織の強化が奏功して収益が改善しているところだが、下期以降の成長トレンド入りへ向けて、データ連携や提携の拡大が課題になってきたと言えそうだ。なお、ITソリューション事業とその他事業のトータルでは、わずかとはいえ売上未達が売上総利益の未達につながった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
<MH>
1. 2018年12月期第2四半期の業績動向
クロス・マーケティンググループ<3675>の2018年12月期第2四半期の業績は、売上高8,608百万円(前年同期比5.7%増)、営業利益459百万円(同11.6%増)、経常利益409百万円(同20.3%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益187百万円(371百万円増益)となった。主力のリサーチ事業において外注費が増加して売上総利益を圧迫したが、ITソリューション事業の好調な売上と前年同期に計上したのれん償却費がなくなったことにより、営業利益は2ケタの増益となった。また、持分法による投資損失の縮小や前年同期に発生した減損損失がなくなったことなどにより、経常利益は営業利益を上回る伸びとなり、親会社株主に帰属する四半期純利益は大きく黒字転換した。なお、期初の業績予想と比較すると、売上高で89百万円未達だったものの、ITソリューション事業が好調に推移したことなどにより、営業利益で30百万円、経常利益26百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益で15百万円の超過達成となり、全体として順調な業績だったと言えるだろう。
セグメント別業績では、リサーチ事業が売上高7,260百万円(前年同期比3.2%増)、営業利益1,023百万円(同1.7%減)となった。国内では、主力事業会社であるクロス・マーケティングを中心に、グル—プ連携による海外調査の対応力強化や新サービスの開発・提供により、直接販売となる大型案件の受注が拡大した。海外でも、Kadenceグループでの大型案件の受注が継続しており、売上拡大につながった。一方、営業利益については、国内外で受注した大型案件への対応で外注費が増加したため、前年同期を下回る結果となった。
ITソリューション事業は売上高1,321百万円(同30.6%増)、営業利益110百万円(同67.8%増)となった。金融業界中心に既存顧客との良好な関係を構築してきたことにより、継続的に開発案件を受注できた結果であり、システムの受託開発を行う(株)クロス・コミュニケーションと、エンジニア派遣を行う(株)クロス・ジェイ・テックがともに収益をけん引した。その他の事業は売上高284百万円(同12.8%減)、営業利益1百万円(同95.7%減)となった。プロモーション事業を展開するディーアンドエムが、現在、業務提携などによるサービスの裾野の拡大や顧客の開拓を推進しているが、売上構成の変化や事業拡大に向けた先行的人員採用などにより、売上高・営業利益ともに前年同期を下回ることとなった。
期初の業績予想比ではリサーチの苦戦を販管費抑制でカバー
2. 各事業の計画差異と課題
2018年12月期第2四半期業績は、全体として順調な進捗と言えるが、セグメントや収益・費用の間では大きな入り繰りが発生した。連結全体では、外注費の増加などにより売上総利益が想定に届かなかったもようだが、先行的に確保する予定だった人員採用を抑制、やや保守的に見積もっていた各種経費を削減することで営業利益を確保した格好である。
国内リサーチ事業において、通期で大幅増収を見込んでいた売上高が第2四半期で横ばいにとどまった。これは、営業を強化したことで大手顧客に対する直接販売が増加したものの、一部既存顧客が同業他社の傘下に入るなど間接販売が減少したこと、つまり顧客ポートフォリオが変化したことが背景にあると考えられる。直接販売は企画や提案からレポート作成までフルラインに近い作業が求められることが多い上、案件が大型化すればカバーする以上のエリアを調査する必要が生じる。このため、従来のリサーチデータを直接または加工して調査会社に提供するだけの間接販売と異なり、直接販売では調査内容・サービス提供範囲が広がるため外注が増えることにより原価を押し上げる。
2018年12月期第2四半期は、国内リサーチ事業ではグローバルの大型案件が増加したため外注費も増加、原価率が上昇して営業利益も計画を下回ったと推測される。海外リサーチ事業においても原価率が上昇した背景は同様で、売上高こそ営業施策により1ケタ後半の伸びを確保したものの、拠点の整理や統合など組織体制を整備中のところに、大型案件が増えて外注費が増加し売上総利益率が低下したのである。こうした顧客ポートフォリオの変化に対して、下期以降、内外リサーチとも原価のコントロールが大きな課題になったと言えるだろう。
ITソリューション事業では、既存顧客との良好な関係を背景に、開発案件の受託やエンジニアの派遣が好調で利益が大幅に増加した。しかし、大型案計を継続するためにも、エンジニアの確保が課題となってきた。その他事業では、グーグルやヤフーの検索アルゴリズムの変更などの影響をクリアし、足元で営業組織の強化が奏功して収益が改善しているところだが、下期以降の成長トレンド入りへ向けて、データ連携や提携の拡大が課題になってきたと言えそうだ。なお、ITソリューション事業とその他事業のトータルでは、わずかとはいえ売上未達が売上総利益の未達につながった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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