■第4次中期経営計画
2. 経営数値目標
中期経営計画における経営数値目標として、2021年5月期に連結売上高で300億円以上、経常利益で21億円以上、親会社株主に帰属する当期純利益で14億円以上を掲げた。また、資本政策としては資本効率の向上及び成長投資による事業拡大で、企業価値の向上を図り、ROEで8%以上の水準を目指していく。
3. 事業戦略
中期経営計画を達成していくために、E・Jホールディングス<2153>では総合建設コンサルタント領域を4つに分けて各領域で事業を拡大していく戦略を掲げている。
(1) 国内建設コンサルタント領域
国内建設コンサルタント領域では、道路や橋梁、河川、港湾、廃棄物処理、再生エネルギー等の分野別で市場を分けると約20分野に分けられるが、このうち売上高で上位5位以内の分野を現状の5分野から2倍の10分野まで拡大していくとともに総合5位以内を目指していく。
同社グループのコア・コンピタンスである「環境」「防災・保全」「行政支援」の差別化できるマネジメント技術をベースに、5つの重点分野(環境・エネルギー、自然災害リスク軽減、都市・地域再生、インフラマネジメント、情報・通信)に注力して、課題解決型の高付加価値業務の受注を拡大していくことで、収益力の向上を図る。
同社では技術提案型業務の受注拡大を目指すため最新のIT技術なども積極的に活用している。具体的な事例を示すと、自然災害リスク軽減分野では、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)技術を地域の防災計画における津波発生を想定した避難シミュレーションに活用している。また、従来より高い実績を有している無電柱化技術においても、ICタグを用いた地下空間管理システムを開発しており、国交省の「新技術情報提供システム NETIS」に登録されている。同システムでは管路埋設と同時にICタグを施設することで管路位置の見える化を実現し、試掘調査の削減や浅層埋設に伴う電線切断事故発生リスクを解消するなど、安全かつ低コストを実現する技術となっており、今後、採用が進むものと予想される。
また、情報・通信分野では、ドローンを活用した災害現場での3次元計測を行っている。豪雨災害による土石流災害等の被害状況をドローンで3次元計測することにより、被害の状況を精緻に把握するほか、今後の被害予測技術の研究にも活用している。現在、ドローンの保有台数はグループ全体で6台となっているが、需要が拡大していることから、増強していく計画となっている。さらに、2018年5月期には無人潜水機を国内のコンサルタント会社で初めて導入した。同潜水機は水中の高精細なデータ計測(位置、地形、水質、流況等)や水中画像を自動的かつ同時に取得することが可能となり、ダムや河川・港湾等の水中で起こっている様々な問題の詳細分析を行うことで最適なソリューション提案が可能となる。
(2) 海外コンサルタント領域
中期経営計画では、海外事業の売上構成比を2021年5月期に10%(2018年5月期は3.8%)まで引き上げていくことを目標としている。売上規模としては2018年5月期の723百万円から30億円程度まで拡大する計算となる。海外拠点の増設やアライアンスの推進(同業他社、現地企業や大学、研究機関等)を積極的に推進し、アジアやアフリカ地域での事業拡大を目指していく。分野的には道路・交通、水供給、廃棄物・再生可能エネルギーなどに加えて、今後の需要拡大が見込まれる防災(地震・洪水対策)、都市計画等の分野にも積極展開していく方針となっている。
(3) インフラマネジメント領域
インフラマネジメント領域の売上高構成比については、2021年5月期に20%水準(2018年5月期は受注ベースで11.3%)まで引き上げていくことを目標としている。2018年5月期の受注高で2,889百万円の水準を、2021年5月期には売上高で60億円規模まで拡大していくことになる。社会インフラについては道路や橋梁等の老朽化対策の需要が旺盛で、特に橋梁ではドローンを活用した調査ニーズが拡大している。また、相次ぐ豪雨災害によって頻発している土砂災害を背景に、道路法面に設置されたグラウンドアンカー工の維持管理のための健全度調査の需要も今後増加していくものと予想される。また、官公庁だけでなく民間工事の施工管理、発注者支援、計測・調査・解析及び計測機器のレンタルから施設管理まで、民間(高速道路運営会社含む)をターゲットに受注拡大を目指していく。
(4) 事業開発領域(新規事業の確立)
周辺領域における新規事業開発として、クリーン開発事業やアドバイザリー事業の拡大を推進していく。商社等の異業種との連携により、主として民間事業を中心に、インフラ関連事業の運営・管理の案件開発、地方創生に向けた地域活性化事業等への事業投資を行い、事業領域を拡大していく方針だ。
事業投資案件としては、地方創生などのパイロット事業に関係子会社を通じて携わっている。2012年以降では地方創生プロジェクトの一環として、岡山県や秋田県、徳島県において現地の地方公共団体や企業等との共同出資により、アグリ事業における6次産業化に取り組んでいる。
岡山県の(株)エンジョイファームでは、農園での青果物の栽培や食育農作業の体験施設「水車の里フルーツトピア」について、2013年4月から5年間の指定管理業務を完了し、新たに5年間の継続契約を締結した。指定管理3年目より黒字経営に転換しており、2018年5月には軽食コーナーの新設やイチゴハウスの増設も行うなどリニューアルオープンを行い、入場者数も増加傾向にある。
また、秋田県の(株)ストロベリーファームでは夏イチゴ農業の6次産業化に取り組んでいる。夏イチゴは現在、9割を輸入に依存しており流通価格も通常の4~5倍と高価格で販売されている。ストロベリーファームでは希少品種である「なつあかり」の栽培を行っており、安定的に収獲できるようになったことから、ネット通販での販売を2017年より開始、2018年には需要拡大に対応するためハウスを2倍に増設する計画となっている。収益モデルが構築できれば現地企業に株式を売却して、同社は施設の運営管理のみを行う予定にしている。また、2018年度まで国立研究機関と共同研究を継続し、大量生産モデルを構築できれば、当該モデルの拡大・広域化フェーズに移行する計画となっている。
徳島県の(株)那賀ウッドでは林業の6次産業化に取り組んでいる。木材利活用推進・地域振興事業の一環として徳島県産の品質の高い木粉を土木・建設資材である「ウッドプラスチック」や「塗壁」等の原料として販売しているが、顧客であるハウスメーカーからの価格・品質要求が厳しく現在は、ネコ砂用などニッチな用途向け、並びに公共施設のウッドテーブルやウッドデッキとして販売している。今後も行政機関や関連事業団体と連携して、林業6次産業化の推進に取り組んでいく方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. 経営数値目標
中期経営計画における経営数値目標として、2021年5月期に連結売上高で300億円以上、経常利益で21億円以上、親会社株主に帰属する当期純利益で14億円以上を掲げた。また、資本政策としては資本効率の向上及び成長投資による事業拡大で、企業価値の向上を図り、ROEで8%以上の水準を目指していく。
3. 事業戦略
中期経営計画を達成していくために、E・Jホールディングス<2153>では総合建設コンサルタント領域を4つに分けて各領域で事業を拡大していく戦略を掲げている。
(1) 国内建設コンサルタント領域
国内建設コンサルタント領域では、道路や橋梁、河川、港湾、廃棄物処理、再生エネルギー等の分野別で市場を分けると約20分野に分けられるが、このうち売上高で上位5位以内の分野を現状の5分野から2倍の10分野まで拡大していくとともに総合5位以内を目指していく。
同社グループのコア・コンピタンスである「環境」「防災・保全」「行政支援」の差別化できるマネジメント技術をベースに、5つの重点分野(環境・エネルギー、自然災害リスク軽減、都市・地域再生、インフラマネジメント、情報・通信)に注力して、課題解決型の高付加価値業務の受注を拡大していくことで、収益力の向上を図る。
同社では技術提案型業務の受注拡大を目指すため最新のIT技術なども積極的に活用している。具体的な事例を示すと、自然災害リスク軽減分野では、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)技術を地域の防災計画における津波発生を想定した避難シミュレーションに活用している。また、従来より高い実績を有している無電柱化技術においても、ICタグを用いた地下空間管理システムを開発しており、国交省の「新技術情報提供システム NETIS」に登録されている。同システムでは管路埋設と同時にICタグを施設することで管路位置の見える化を実現し、試掘調査の削減や浅層埋設に伴う電線切断事故発生リスクを解消するなど、安全かつ低コストを実現する技術となっており、今後、採用が進むものと予想される。
また、情報・通信分野では、ドローンを活用した災害現場での3次元計測を行っている。豪雨災害による土石流災害等の被害状況をドローンで3次元計測することにより、被害の状況を精緻に把握するほか、今後の被害予測技術の研究にも活用している。現在、ドローンの保有台数はグループ全体で6台となっているが、需要が拡大していることから、増強していく計画となっている。さらに、2018年5月期には無人潜水機を国内のコンサルタント会社で初めて導入した。同潜水機は水中の高精細なデータ計測(位置、地形、水質、流況等)や水中画像を自動的かつ同時に取得することが可能となり、ダムや河川・港湾等の水中で起こっている様々な問題の詳細分析を行うことで最適なソリューション提案が可能となる。
(2) 海外コンサルタント領域
中期経営計画では、海外事業の売上構成比を2021年5月期に10%(2018年5月期は3.8%)まで引き上げていくことを目標としている。売上規模としては2018年5月期の723百万円から30億円程度まで拡大する計算となる。海外拠点の増設やアライアンスの推進(同業他社、現地企業や大学、研究機関等)を積極的に推進し、アジアやアフリカ地域での事業拡大を目指していく。分野的には道路・交通、水供給、廃棄物・再生可能エネルギーなどに加えて、今後の需要拡大が見込まれる防災(地震・洪水対策)、都市計画等の分野にも積極展開していく方針となっている。
(3) インフラマネジメント領域
インフラマネジメント領域の売上高構成比については、2021年5月期に20%水準(2018年5月期は受注ベースで11.3%)まで引き上げていくことを目標としている。2018年5月期の受注高で2,889百万円の水準を、2021年5月期には売上高で60億円規模まで拡大していくことになる。社会インフラについては道路や橋梁等の老朽化対策の需要が旺盛で、特に橋梁ではドローンを活用した調査ニーズが拡大している。また、相次ぐ豪雨災害によって頻発している土砂災害を背景に、道路法面に設置されたグラウンドアンカー工の維持管理のための健全度調査の需要も今後増加していくものと予想される。また、官公庁だけでなく民間工事の施工管理、発注者支援、計測・調査・解析及び計測機器のレンタルから施設管理まで、民間(高速道路運営会社含む)をターゲットに受注拡大を目指していく。
(4) 事業開発領域(新規事業の確立)
周辺領域における新規事業開発として、クリーン開発事業やアドバイザリー事業の拡大を推進していく。商社等の異業種との連携により、主として民間事業を中心に、インフラ関連事業の運営・管理の案件開発、地方創生に向けた地域活性化事業等への事業投資を行い、事業領域を拡大していく方針だ。
事業投資案件としては、地方創生などのパイロット事業に関係子会社を通じて携わっている。2012年以降では地方創生プロジェクトの一環として、岡山県や秋田県、徳島県において現地の地方公共団体や企業等との共同出資により、アグリ事業における6次産業化に取り組んでいる。
岡山県の(株)エンジョイファームでは、農園での青果物の栽培や食育農作業の体験施設「水車の里フルーツトピア」について、2013年4月から5年間の指定管理業務を完了し、新たに5年間の継続契約を締結した。指定管理3年目より黒字経営に転換しており、2018年5月には軽食コーナーの新設やイチゴハウスの増設も行うなどリニューアルオープンを行い、入場者数も増加傾向にある。
また、秋田県の(株)ストロベリーファームでは夏イチゴ農業の6次産業化に取り組んでいる。夏イチゴは現在、9割を輸入に依存しており流通価格も通常の4~5倍と高価格で販売されている。ストロベリーファームでは希少品種である「なつあかり」の栽培を行っており、安定的に収獲できるようになったことから、ネット通販での販売を2017年より開始、2018年には需要拡大に対応するためハウスを2倍に増設する計画となっている。収益モデルが構築できれば現地企業に株式を売却して、同社は施設の運営管理のみを行う予定にしている。また、2018年度まで国立研究機関と共同研究を継続し、大量生産モデルを構築できれば、当該モデルの拡大・広域化フェーズに移行する計画となっている。
徳島県の(株)那賀ウッドでは林業の6次産業化に取り組んでいる。木材利活用推進・地域振興事業の一環として徳島県産の品質の高い木粉を土木・建設資材である「ウッドプラスチック」や「塗壁」等の原料として販売しているが、顧客であるハウスメーカーからの価格・品質要求が厳しく現在は、ネコ砂用などニッチな用途向け、並びに公共施設のウッドテーブルやウッドデッキとして販売している。今後も行政機関や関連事業団体と連携して、林業6次産業化の推進に取り組んでいく方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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