インテリックス 山本卓也代表取締役社長インタビュー

著者:櫻井 英明
投稿:2013/10/23 12:24

良質な社会ストックの提供を理念に
リノベーション・マンションで不動産市場を変革する!

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インテリックス
代表取締役社長
山本卓也(やまもと・たくや)

1954年、島根県生まれ。74年大洋興業入社。三越商事、秀和恒産サンクホーム勤務を経て、86年にセントラルプラザを設立し代表取締役に就任。95年にインテリックスの前身であるブレスタージュを設立し、セントラルプラザを吸収合併。97年に同社代表取締役となり現在に至る。
 


 日本と欧米の不動産、住宅市場の最も大きな違いは、ストックの生かし方だと言われる。わが国ではすでに膨大な住宅ストックがありながら、人々の関心は新築物件に偏りがちで、反面、中古流通市場は未整備な状態が続いている。とは言え、少子高齢化の人口減少社会を迎えた現在、欧米同様に良質な住宅ストックを活用することは社会的課題ともなっている。特に耐久年数の長いマンション市場ではなおさらのことだ。そこで今回は、中古マンションの「リノベーション(再生)」ビジネスを積極展開し、この分野のリーディング・カンパニーであるインテリックスの山本卓也社長に話しを伺った。

━━御社の業態についてご説明ください。

 当社は中古マンションを1戸単位で取得し、良質な内装を施してリノベーション(再生)した後、アフターサービス保証をつけて販売する事業を行っています。中古マンションのアフターサービス機能は業界に先駆けて採用し、「リノヴェックスマンション」というブランドを用いています。前期(2013年5月期)の販売戸数は1124戸。累計では1995年の設立から2013年までで1万3500戸を超えています。
 先日、日本経済新聞でも報道されましたが、最近では都心部での再生マンションに多くの期待がかかっています。この記事では新築分譲大手の三菱地所レジデンスが年500戸から600戸を販売するという動きが報じられましたが、併せて当社がすでに年1000戸以上を販売しているとも書かれています。この記事の通り、中古マンションの再生市場では当社が紛れもなく最大手ですし、これまでに蓄積したノウハウなどは他社の追随を許さないものと自負しています。

━━現在の中古マンション市場についてどうお考えですか?

 全国の分譲マンションのストック数は、昨年末時点で593万戸に達しています。その半数以上、52%は首都圏の1都3県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)にあり、その数は309万戸になります。そのうち築20年以上のストックは153万戸。これが2025年には272万戸(現在の約1.7倍)にまで増える見通しです。
 一方で分譲マンションの建て替え実績は、これまでのところ全国でわずか183棟あまりと一向に進んでいない状況です。欧米の動向を見れば、中古住宅の流通が主流ですし、人口が減少していく国では新築住宅の販売にも限界があります。今後は、立地が良い場所の中古物件の再生という事業が、ますます拡大していくに違いありません。そのためには中古マンションをピカピカに再生するノウハウが必要でしょうし、当社はその最前線を走っています。
 また、今年に入ってからの中古マンション市場の動向ですが、首都圏においては非常に好調です。東日本不動産流通機構によれば、成約件数は8月までで12ヵ月連続で前年同月を上回っていて、成約価格も今年1月から8月まで8ヵ月連続で前年同月を上回っています。東日本大震災直後から約2年間に渡って中古マンション価格は下落基調が続いていたのですが、昨年末に底打ちし、年明けからは上昇基調が続いているのです。
 このように、データから見ても市況は好転していることは確かですが、当社が目指しているのは市況に左右されない経営体制です。振り返ってみれば、中古マンション市場はバブルの頃に右肩上がりの市況を謳歌しました。当時は転売利益などを見込んで数多くの業者が参入してきましたが、後のバブル崩壊でそれらの多くが痛手を負ったのはご存知の通りです。
 しかし現在は、中古マンションそのものの存在意義が高まってきています。新築マンション市場は現在でも景気に左右されやすい傾向がありますが、それに対して中古マンション市場は、安定した需要が見込める。こうした時代背景を糧にして、良質なリノベーション・マンションを供給していくことによって、安定した経営体制を目指していきたいと考えています。
 現在、首都圏の中古マンション販売の成約件数は年間3万件を超えていますが、いずれ新築と中古の市場規模の逆転が起こる可能性は高いと読んでいます。新しいカテゴリーとしてリノベーション・マンション市場が新たに創出され、マンション流通市場の活性化が促進されてくる。すると当社のようなリノベーション・マンションを供給する事業への注目度も高まるに違いありません。


━━では次に、現在の業績面についてご説明ください。

 東日本大震災以降の市況低迷の影響を受けた時期もありましたが、この苦境の時期を乗り越え、前期(2013年5月期)は業績の転換期となりました。今年の春先からは完全回復基調に転じています。今期(14年5月期)については先日、中間期の業績予想の上方修正を行いましたが、通期では売上高で前期比3.9%増、経常利益で同2.5倍、当期純利益で同2.8倍を見込んでいます。

━━東京オリンピック開催が決定し、不動産市場にも再び世間の注目が集まっていますが、この点はいかがお考えですか?

 2020年に東京オリンピックが開催されますが、多くの人々が期待するように、7年後に向けて、首都圏の不動産市場や住宅市場はますます活性化していくだろうと私も考えています。しかし、それよりも重要なのは今年6月に閣議決定された「日本再興戦略」でしょう。重点施策は「良質な住宅ストックの供給と不動産流通システムの指針の策定」の項目で、ここでは目標として「中古住宅の流通市場、リフォーム市場を倍増(20兆円)へ」と掲げられています。内訳は中古市場8兆円、リフォーム市場12兆円です。これまでの「新築重視」の住宅政策から「ストック重視」の住宅政策への大転換です。
 住宅を作っては壊す社会から、良いものを作って、きちんと手入れして、長く大切に使う時代がやってくるということです。ということは、当社の役割はこの国策に沿った形で、良質な中古住宅を継続的に供給していくことに他なりません。

━━省エネルギーを実現するパネル工法「エコキューブ」に注力されていますね。

 当社独自のリノベーション新工法が「エコキューブ」です。リノベーションで初めてプレカット工法を採用し、工期の短縮と安定した品質の提供が可能になりました。六面断熱リノベーションによって冷暖房費を45%も軽減することができるとともに、間取りの可変性を確保しました。また、高性能インフラの導入によって長期メンテナンスも可能です。これまで長い間暮らしてきたマンションも、これからずっと暮らしていきたいマンションもさらに快適な空間になることができるでしょう。
 これは豊富なマンションリノベーション経験を持つ当社だからこそ生み出すことができた新工法で、快適性と品質を追求した結果だと考えています。このエコキューブによって当社はマンションリノベーションの総合商社を目指していく方向です。これまでの実績を生かして、自社物件だけでなく、個人や同業他社など当社グループ外からのリノベーション内装工事の受注強化も図っていく方向です。
 従来のオンバランス・ビジネスを基盤にしながら、オフバランス・ビジネスへの事業展開を拡充するということです。オフバランス・ビジネスを強化するということは、当社のエコキューブシステムの対象がかなり大きく拡大するということですから、ビジネスチャンスとビジネスフィールドがますます広がることになるでしょう。

━━最後に全国の投資家の皆さんに向け、事業の抱負についてお話しください。

 中古マンションは土地資源の少ない我が国において、貴重な社会ストックです。しかしながら、中古マンションを一つの住宅供給事業として捉えた場合、商品内容にしても、また法的にも、まだまだ未整備な状況であり、多くのユーザーが安心して選べる環境ではありません。ですから中古市場を本当の意味で活性化させるためにも、この分野の最大手である当社が、業界を牽引する力を持たなければならないと考えます。
 そのためにも「良質な社会ストックの提供=顧客満足度の向上=事業の永続性」という企業理念のもとに、中古マンションの品質向上と、これによる市場の活性化を目指して、今後も邁進していきたいと思います。

《編集後記》
 同社は日本で中古マンションを再生して供給している最大の企業。その供給数は、昨年度の新築マンションランキングに組み込めば8~9位になる。中古マンションをリノベーションすると、部屋の中は新築と一緒だし自分の好みにできる。しかし中古と新築は違ったマーケット。中古は場所や時期が限定されていて「ココしかない、コレでしょ」が最優先される世界だという。
 供給が増えている安定したマーケットとはいえ「リーマンも大変だったが東日本大震災はもっと大変だった」と山本社長。「当社は不動産業を、投機や投資ではなくビジネスとして行っているので、常時買い入れ、常時販売している。値上がりするから買うのではないし、値下がりするから買わないということもない」という言葉が印象に残った。
 同業他社にとっての参入障壁は「目利き」だという。同社は月1200~1300件の物件情報から90~100件の仕入れを行っている。もちろん、買わないという決済もあるので、物件を見分けるという点では相当なノウハウが蓄積されている。このノウハウによって、仮に供給戸数が2000戸になっても、それに見合う適切な仕入れを行うことができるという。
 以前、同社に中古マンションを売却された方が、リノベーションしたその物件を見て「買い戻したい」と言ったことがあったという。それほどの魅力を持つ「リノヴェックスマンション」。現在、不動産のメーンストリームは新築から中古に移行しつつある。ここにマーケットはまだ気が付いていない。ビジネスモデルが地味に感じるかもしれないが、今後、ますます同社の存在感は高まるに違いない。


(櫻井英明)

[ 会社概要 ]
社名:株式会社インテリックス
市場:東証2部
コード:8940
設立年月日:1995年7月17日
上場年月日:2005年4月14日
決算月:5月
 
☆連結業績見込み(2014年5月期)
売上高●268億3200万円
営業利益●12億6800万円
経常利益●8億2700万円
当期純利益●5億800万円
 
☆トピックス
 首都圏を中心に、中古マンションを買い取り、内装や配管などをリノベーションし再生マンションとして販売。独自のパネル工法による、省エネルギー仕様の「エコキューブ」が好評。最長10年間の保証を実現するなど、業界最大手として、今後の成長が期待される中古マンション業界の革新をリードしている。

配信元: みんかぶ株式コラム