7月27日、安倍晋三首相は8月2日に閣議決定する経済対策について「事業規模で28兆円を上回る総合的かつ大胆な経済対策をまとめたい」と表明した。事業規模としては2009年の56.8兆円、08年の37兆円に次ぐ規模になる。
同日、経済対策に盛り込む低所得者への現金給付について政府・与党は、1人あたり1万5000円にする方針を固めた。現金給付の対象は住民税が非課税の低所得者約2200万人となる見通しで、単身者の場合は年100万円未満の所得が目安となる。事務費なども含めた必要経費は約3500億円を見込む。
7月26日には、厚生労働省の中央最低賃金審議会の小委員会が、2016年度の最低賃金を全国平均で時給24円引き上げ、822円にする目安を決めた。5年連続で2ケタの引き上げとなり、第2次安倍晋三内閣発足以降の4年間で70円以上、上がったことになる。
矢継ぎ早の経済対策だが、こうした巨額のバラマキは効果的なのだろうか? そこで、37兆円つぎ込んだ2008年(平成20年)、56.8兆円に達した2009年を含む、日本経済の規模の推移を見てみた。
参照:日本の名目GDPの推移
出典:財務省ウェブサイト(統計データより筆者が作成)
名目GDPは2007年4月~2008年3月期から、2期連続で減少した。経済対策の効果で2010年3月に終わる年度には増加したが、2007年度には遠く及ばない。では、これら約94兆円もの経済対策はたんなる無駄遣いだったのだろうか? では、政府の歳出と税収とを見てみよう。
参照:日本の財政収支
出典:財務省ウェブサイト(一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移)
2008年から2009年にかけて確かに支出は急増するが、その一方で、税収は急減する。また、その後にも目立った回復が見られないことから、この経済対策で使った資金は、政府には戻っていないことが分かる。これでは投資ではなく、浪費だ。94兆円のうち、実際に資金を支出する「真水」の部分はその何割かだが、それでも大量の資金はどこに消えたのか? 税収の内訳をみれば、企業に消えたことが見て取れる。そういえば、7割もの法人が税金を払っていないことの資料は、以前にご紹介した。
参照:税収の内訳
出典:財務省ウェブサイト(一般会計税収の推移)
景気対策の効果だろう。2010年4-6月期にはリセッションから抜け出すことができた。とはいえ、先のGDPに見るように、景気拡大は緩やかで、税収も増えていない。
今回の経済対策は28兆円で十分なのだろうか? これらの資料を見る限り、その倍の56兆円でも足りないかも知れない。おまけに、「真水」の部分は6兆円だと言われている。28兆円の景気対策でも日本経済のカンフル剤になるかどうかは疑わしいが、財政が更に悪化することは間違いがなさそうだ。つまり、これらも無駄遣いに終わる可能性が高い。
私は日本経済の規模がピークをつけた1997年度以降の対策は、ナンピン買いに等しいと見ている。歳出増という買い下がりによりリスクだけが増大しているが、経済の回復はまだ見えない。ナンピン買いの行き着く先の多くは、破綻だ。
問題は根っこを絶たねば駄目だ。私は消費税率を0-3%に戻す以外に、日本経済は立ち直れないかも知れないと見ている。
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