ブレグジットに関する各国政府、国際機関、格付け会社、大手メディアが取り上げる意見の大半はネガティブなものだ。私に離脱を主導した英国の政治家たちの資質を知るすべはないが、離脱に投票した人々は、双方の意見を聞いて決めたはずだ。意見の大勢が残留支持だったことを鑑みれば、離脱に投票した人々が「騙された」と捉えるのは、単に不透明感を煽る行為に他ならない。それでは前に進めない。
大勢がブレグジットにネガティブだという意味は、世界を動かしたい人々は、ブロック経済圏を望んでいるという見方もできる。確かに、ブロック経済圏がパラダイスだと見なされた時期があった。また、世界が1つになれば、世界から戦争や紛争がなくなると信じられていた時代があった。しかし、現実はどうか?
国連によれば、世界の難民数は2014年末時点でも5950万人と、第二次世界大戦後で最多となった。1日当たりでは平均4万2500人もが避難を余儀なくされているという。この数は5年間で4倍となり、世界中で122人に1人が難民、避難民、庇護申請者になった。また5950万人は世界で24番目に大きな国が出来る規模だという。世界は決して平和ではない。自らが平和を望めば、保証されるというものでもない。
参照:UNHCR Japan – 数字で見る難民情勢 (2014年)
主な難民発生国がシリア、アフガニスタン、ソマリア、スーダンと続くことには、世界を動かしたい人々の影響が感じられるように思うが、ここでは触れない。
では、ブロック経済圏が経済的にはパラダイスかと言うと、ユーロ圏を例に挙げれば、唯一の例外国を除いて、そうでもない。
一方で、EU加盟国でありながら、独立した通貨金融政策を維持し、財政政策も自由だった英国は、上記の例外国に近い存在でいられた。
これらについて、より深く知りたい方々は、以下のコラムと、その内部にあるリンク「イギリス国民を『EU離脱』に追い込んだ、欧州連合とECBの自業自得」をお読み頂きたい。
こういう事実を突きつけられると、私のこれまでの「TPPは日本経済にプラス」という見方が、ぐらついてくる。ブロック経済圏はパラダイスというより、伏魔殿に近いように思えるからだ。
そして、一歩でも踏み出した後に、引き返そうとすれば、ブレグジットのように袋叩きにあってしまう。あらゆる政策、事業や運用には、失敗が付き物だ。それが機能しないと分かれば、損切りが生き残る唯一の術だと、一般的に認識されているにも関わらず、大勢はナンピン買いしか勧めない。消費増税も同じだ。大勢は更なる引き上げというナンピン買いしか勧めない。
ユーロ圏の諸国がどうしてこうも苦境に至ったのか? 上記コラムで述べている様に、金融政策と財政政策という経済政策の2本柱を共に失っただけではない。例えば、ドイツとギリシャとは同じ為替レートを共有しているために、通貨安の恩恵がない。
一方、ブレグジットで、英ポンドは下落、対ドルでは2014年の高い頃から2割以上下落した。対ユーロでは年初からでも18%下落している。これは、関税が2割上げられても耐えられることを意味する。
ウォールストリート・ジャーナル紙は、「英離脱は米国に好機、欧州への関与復活を」との見出しの記事を載せた。つまり、英国の欧州離れは、米国の英国接近、欧州接近には好機なのだ。このことは、日本や中国、ロシア、その他世界中の国々にも、何十年来の好機が訪れていることを意味する。
短期的な不透明感や混乱は避けられない。しかし、ガチガチのブロック経済圏にはなかった好機が、不透明感や混乱のなかにあることを忘れてはならない。
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