2016年5月2日時点での主要市場見通し

著者:馬渕 治好
投稿:2016/05/02 21:40

花の一里塚~市場見通しサマリー

2016年5月2日時点での主要市場見通し

zu0主要市場見通し
 

基本シナリオと見通し数値について

 世界の経済的な基調には、大きな変化は見いだせない。また、世界市場の動向を概観すると、1~2月をボトムに、年央にかけて改善に向かっている、という見解は、変更する必要を感じない。

 ただし、米ドル円を中心とした、外貨相場(対円)の下振れや、それによる日本株の回復のもたつきなどにより、年前半の予想レンジは下方修正の必要があると考える。

 こうした点から、国内長期金利を除く各資産の、2016年の予想レンジを全般に下方修正する。ただし、年前半の予想については、予想レンジの期間末(2016年6月末)までの時間が短くなってきたため、予想レンジをその分狭める、という要因も大きい。

 また、年後半(7~12月)の予想レンジは、前半の修正に応じて微調整するにとどめ、大きなシナリオ(7月頃までは日本株高・外貨高気味だが、年末にかけて再度調整する)に変更はない。

 2016年6月までの予想レンジについて、前月号(4/1(金)時点)から、下記の修正を行なった(下線太字部は変更箇所)。

日経平均株価(円) 15500~21000 ⇒ 15500~19500
10年国債利回り(%) -0.1~0.4 ⇒ 変更なし
米ドル(対円) 112~123 ⇒ 105115
ユーロ(対円) 123~140 ⇒ 120135
豪ドル(対円) 82~100 ⇒ 8095

 2016年12月までの予想レンジについては、前月号(4/1(金)時点)から、下記の修正を行なった(下線太字部は変更箇所)。

日経平均株価(円) 19000~22000 ⇒ 18000~21000
10年国債利回り(%) -0.1~0.5 ⇒ 変更なし
米ドル(対円) 117~125 ⇒ 112~125
ユーロ(対円) 125~145 ⇒ 変更なし
豪ドル(対円) 78~100 ⇒ 変更なし

シナリオの背景

・世界経済、世界市場の大きな流れについては、前月号と見解は変わらない。たとえば米国の週当たり雇用者所得は、前年比でみて、安定した動きを続けている(図表1)。その他諸国についても、1~2月に市場が懸念したころと比べて、さらなる悪化をみせたような事態は見当たらない(中国の景気減速や、ブラジルの政治・経済の体たらくは、よくなってはいないが相変わらずだ)。

・こうした経済実態を踏まえ、1月には新興諸国に対する過度の懸念(中国経済の崩壊や、原油価格下落による産油国経済・財政の極度の悪化などの懸念)から、そして2月には先進諸国に対する過度の懸念(米国経済の失速、欧州主要銀行の経営破たんなどの懸念)から、世界の株価や外貨相場(対円)は、下振れをみせた。しかしそうした行き過ぎた懸念は峠を越し、通貨変動込みの株価の推移は、2月以降持ち直し基調を持続している(図表2、図表3)。すなわち、世界市場の大きな流れは、リスクオフではなく、むしろリスクオンだ。

(図表1)
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(図表2)
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(図表3)
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・足元は、米ドル円相場の下振れにより、他通貨も対円で下押しし、これが(最安値は割れていないとはいえ)日本株の低迷を引き起こしている。足元の材料は、日銀の金融政策決定会合における「ゼロ回答」であるが、だから円安にならない、としても、円高になる要因でもない。米国の金融政策については、連銀が慎重に利上げを行なう旨を表明しているが、これも利上げがゆっくりである、ということであって、利上げしないとか、ましてや利下げするという事態ではなく、米ドルを押し上げる要因としてのスピードが遅くなっている、とは言えても、米ドルを押し下げるような要因ではない。

・米国が日本に対して介入をけん制する態度を強めている、と市場では解釈されているが、それが正しいとして、円高になった場合に介入ができないとしても、米国経済の強さや、世界的なリスクオンの流れで、自然に米ドル高・円安になることを妨げることにはならない。


・中長期的な米ドル円相場の水準を判断するため、購買力平価と実際の相場とのかい離率をみると(図表4)、一時はかい離が20%を超え、過去の推移と比べての警戒信号(やや円安に行き過ぎ)が表れていた(図中の丸印)。しかし最近の円高への調整で、そうした警戒色は薄らいでおり、現水準から大幅な円高が示唆されているわけではない。

(図表4)
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・こうして世界的に市場環境の好転(株高・外貨高含みの推移)が進むと予想するが、日本株については、7月の参議院選挙(ダブル選挙の可能性は、九州の震災により低下)や5月26~27日の伊勢志摩サミットに向けて、政府が経済対策を並べてくることが期待される。ただ、前号の当レポートでも述べたが、そうした経済政策は、もちろん株価上昇の邪魔にはならないが、逆境をすべて跳ね返して株価を暴騰させるようなものではない。あくまでも世界的な市場環境の好転を、最大の材料として踏まえるべきだと考えている。

・なお、相場付きをみるため、日本の大型株指数÷小型株指数の比率をみると(図表
5)、最も低下したのは今年4月4日だった(図中の点線の丸印)。その後、米ドル安・円高が進んだため、よほど輸出系の国際優良株が売り込まれているのではないか、あるいは外国人投資家が日本株の売りを強めて、外国人が多く保有する代表的な大型株が売られているのではないか、と思うと、実際には大型株は足元まで(もちろん大きく上下にぶれてはいるが)相対的に小型株に対し優位に推移していることがわかる。このあたりにも、世界的な投資・経済環境の改善(海外経済環境の好転期待が大型輸出株を支え、外国人投資家も世界的な市況好転のなかで、日本の大型株を売り込みに来ていない)がにじみでているように思われる。また、大型株が崩れなければ、TOPIXが底抜けすることも難しいだろう。

(図表5)
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(図表6)
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・加えて、全くの余談だが、父ちゃんの立場指数(全国百貨店売上高のうち、紳士服売上高前年比から婦人服売上高前年比を引いたもの)と日経平均を並べ(図表6)、そのピーク(図中の△印)とボトム(○印)を比べると、タイミングがよく似通っている。直近では、父ちゃんの立場指数は今年1月に底入れしたが、日経平均は2月の底入れとなっており、またタイミングが符合したようだ。

以上、シナリオの背景。
このあと、前月号(2016 年4 月号)見通しのレビュー。

前月号見通し(2016/4/1 時点)のレビュー

日経平均株価
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日経平均株価は、レンジ内で推移した。ただ、一方で上値が重く、さらに4月末は反落した。予想期間末(年央)までの時間が短くなったことから、予想レンジ上限を引き下げる。

②国内長期金利
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・国内長期金利は、引き続き低水準が続き、時折レンジ下限を割り込むこともあった。ただしさらなる低下にも限界があると考えられる。予想レンジは修正しない。

③外国為替相場
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・米ドルは、米連銀の利上げに対する慎重な姿勢や、日本が円売り介入に入れないだろうとの観測を過度に取り上げ、行き過ぎた米ドル安となった。このため予想レンジを割り込む推移が続いた。
・ユーロや豪ドルは、おおむねレンジ内での推移が続いたが、4月末は割り込んで引けている。
・今後は外貨高・円安に向かうと見込んでいるが、足元の外貨相場の下振れを踏まえて、予想レンジを下方修正する。

(以上)

 

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配信元: みんかぶ株式コラム