Q&A:インフレ発生時に、株式投資の根拠が理解できない

著者:矢口 新
投稿:2015/06/15 12:34

Q:矢口先生が講義された「日本株がこれから上がる4つの理由」を拝聴いたしました。その中で、理解できない以下の点についてご教授をお願いいたします。

ハイパーインフレになれば円の価値が暴落することにより、株式市場も暴落すると思います。株価が暴落時に、手元に資金があれば、より多くの株式を取得できます。そして、株価は、いずれ暴落前の株価、もしくはそれ以上の株価に戻ることが期待できるため、株式投資は有効な資産拡大、自分の人生を守る有効な手段であると理解しています。

しかし、暴落時に自分の資金を株式に変換していれば、株式資産価値は暴落して、資産を失うことになります。

そして、ハイパーインフレが起きれば、経営活動をできない企業が起こり、数多くの倒産も起きると考えられます。

ご講義の中では、ハイパーインフレ発生及び円の資産価値暴落時に資産を増やし、自分を守る手段は株式投資であるという根拠が理解できません。

つまり、ハイパーインフレが起きることを前提に、所有している株式は、しっかり損切価格を指値しておき、株式をキャッシュ化して、そのような事態が起きた時は、即”攻めの行動”を起こせるように、普段から株式トレードをしないさいということでしょうか。

A:私は日銀による量的緩和というインフレ政策、年金の株買い、外貨買い、貯蓄から投資へという一連の政策などが、円安、日本株高に繋がると言い続けています。

とはいえ、相場では、常に買い手に対して正反対の見方や事情を抱える売り手がいて、しかも、その差は1銭や1円、10円という狭い値幅で向き合っています。従って、私は他の人の見方を頭から否定するよりも、できるだけ理解しようと努めています。自分が買いだと思っていても、売りだと思う人の見方や事情を知ることは、市場価格だけでなく、市場を取り巻く環境の理解にも役立つからです。

しかし、それは自分なりの見方を捨てることではなく、むしろ補強するためのものといえます。そして、相場が学問や他の多くの事と違うのは、正反対2つの意見が何々派として、並立的に存在することはなく、相場の上げ下げという形で、どちらの見方が正しいかが証明されることです。正しい、間違いという正誤や、善悪、白黒という表現が誤解を生むとすれば、「損得」に置き換えておきます。

私の見方は「インフレ政策時に自分を守る手段は株式投資である」ということで、幸い、これまでのところ、株式投資でインフレ上昇率の何十倍もの利益を上げることができています。

Q様のご意見の前提は、「ハイパーインフレになれば円の価値が暴落することにより、株式市場も暴落する」ことかと思いますが、私は、そうは見ていませんので、前提からして食い違っています。

経済が悪化し、株式市場が暴落し、その結果、円が暴落して、ハイパーインフレになるというシナリオならば、同意できます。株価暴落=ハイパーインフレという部分だけを見れば同じですが、インフレ→株価暴落とは見ていません。

また、ハイパーインフレの基準が物価上昇率で何パーセントになれば、「経営活動をできない企業が起きる」のかも、把握していません。そもそも、それほどの物価上昇が起きるとは見ていません。

私が申し上げているのは、通貨の大量供給は通貨価値の下落に繋がるが、通貨以上に供給力のあるものの価格が高騰することは考えにくいということです。一例を挙げれば、原油価格です。

ここ数年間、米中英日欧といった主要国が、これまでにないほどの通貨供給を行っていますが、ハイパーインフレどころか、それほど物価は上げていません。

チャートをご覧下さい。エコノミストが何を言っているかは知りませんが、量的緩和で顕著に値を上げているのは債券価格と、株価、不動産、美術品などの資産価格と呼ばれるものです。これらに共通しているのは、通貨以上の供給力が到底望めないものだということです。

価格が数年で何倍かになることをハイパーインフレと呼ぶならば、株価はすでにハイパーインフレになっており、その結果もあって、経営活動ができない企業が増えるどころか、企業倒産件数は激減し、増益企業が増加しています。

先のことまでは分かりませんが、私は少なくとも次の消費税率引き上げまでは、株式保有で自分を守ろうと思っています。

私の解説が理解不能でしたならお詫び致します。私がQ様に助言できるとしましたなら、私を含め、相場関係者、経済学者、エコノミスト、あるいは理論や書物に惑わされることなく、実際の値動きに注目することかと思います。そうすればデフレ対策としての量的緩和政策、インフレ目標を定めた通貨供給時に行う株式投資が「損か得」かが、簡単に判明すると思います。

配信元: みんかぶ株式コラム