米景気拡大は2017年、18年まで続く?

著者:矢口 新
投稿:2015/01/16 10:34

世界の株式市場が乱高下を繰り返している。商品市場は概ね下落基調である一方、債券市場は多くの国々で最高値を更新している。

こうした(狂った?)値動きは、米連銀が量的緩和を終了したためだとする見方がある。
参照:Market madness started with end of Fed’s QE
http://www.cnbc.com/id/102337679?trknav=homestack:topnews:18

私は、そうは見ていない。ほとんどのものの値上りに繋がる、未曾有の資金供給の方が異常(狂気?)で、最適な投資物件を求めて、資金が右往左往しながら移動し続けるのが自然な姿なのだ。

売られている商品は概ね供給過剰のものだ。債券が買われるのは、インフレ懸念がなく、景気が不透明だからだ。各国の金融当局が低金利を維持、あるいは積極的に緩和政策を採っていることも大きい。株式は、高値圏での懸念材料で売られ、それでもカネ余りで買い戻されている。そう考えると、最近の値動きはそれなりに理に叶ったものであることが分かる。

15日のスイス中銀による対ユーロでの上限撤廃で、欧州株は軒並み上昇したが、米株は5日続落した。目先の株価は上値の重さを感じさせる値動きだが、中長期の見通しは明るい。14日付けの米紙の記事にも、「アメリカンドリームの復活」や「賃金の大幅上昇が近い」などという景気の良いものが目についた。

「アメリカンドリームの復活」には、以下の主要因が挙げられている。
1、雇用市場の改善
2、家計のバランスシートの改善
3、消費者信頼感の向上
参照:The American Dream is coming back
http://money.cnn.com/2015/01/13/news/economy/american-dream-coming-back/index.html?iid=HP_River

もっとも、上記の記事は「不均衡の拡大」を問題視している。

「賃金の大幅上昇」は、景気回復で求人が2001年来の高水準にあるため、高報酬の提示なしには人材を集められなくなったとある。米国では景気後退時には安定雇用を求めてフルタイムの仕事を求めるが、景気回復が進むにつれて自由度や報酬の高い仕事に移っていく。下の記事のチャートをみても、明らかに景気回復が進んでいる。賃金の大幅上昇は間もなくだとの見方だ。

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参照:After six years of stagnation, bigger paychecks appear on way
http://www.marketwatch.com/story/after-six-years-of-stagnation-bigger-paychecks-appear-on-way-2015-01-14?dist=tbeforebell

では、景気拡大はいつまで続くかというと、米連銀が景気過熱を冷ますために、金融引き締めを行うまで続くと言う。1850年以降に米景気の拡大局面は33回あったが、1945年の武装解除による景気後退など5回を除いては、すべて当局が引き締めるまで続いたという。つまり、米景気が失速するのは、米連銀が政策金利を上げ過ぎた時で、中国の景気後退や、欧州のデフレ、ロシアなどの地政学的リスクではないという。早くても2017年、18年くらいまでは景気拡大が続くとの観測だ。
参照:158 Years Signal U.S. Expansion to Last Until Yellen Stops It
http://www.bloomberg.com/news/2015-01-14/158-years-signal-u-s-expansion-to-last-until-yellen-stops-it.html

私も基本的に同じ見方だ。また、利上げが始まると、この低水準での債券保有ができなくなるので、債券市場から株式市場への資金移動が再開する。利上げが2015年の秋だとして、そこからの2、3年が株式の最後の上げ相場かと思う。

配信元: みんかぶ株式コラム