NISAとETF

著者:矢口 新
投稿:2014/07/14 11:08

私は、JPX日経インデックス400のETFが、NISAに最も適した投資対象だと見ている。

・NISA非課税枠の倍増検討、年200万円に

菅義偉官房長官は11日の記者会見で、少額投資非課税制度(NISA)に関し、年100万円の非課税枠を年200万円に増やす方向で検討する意向を示した。また、個人投資家に時間をかけて資産を増やす「長期投資」を促すため、非課税枠以外でも制度の使い勝手を良くする拡充策に意欲を示した。

NISAは、上場株式や投資信託などに年100万円以内で投資して得た売却益や配当金に5年間税金がかからない制度だ。
参照:NISAってなに
http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201306/3.html

もっとも、非課税枠は年100万円以内1回切りなので、一度利益を確定し、非課税枠を使い切ってしまったなら、再投資分には課税される。つまり、短期のトレード益は事実上対象外なのだ。使い勝手の良い制度とはいえない。

株価のトレンドは上にも下にも長く続き、短中期的にも常に上下動を繰り返すことを鑑みると、長期保有が短期トレードよりもリスクが小さいと考えるのは単なる思い込み、あるいは、投資家は企業と心中しろということに等しい。

とはいえ、米S&P500株指数が量的緩和を受けた2009年の始めから、ほぼ一本調子で上昇してきたように、量的緩和が長期上昇トレンドにつながる可能性は高い。長期保有は私の投資スタンスからは外れるが、それでも今なら、日本株の長期保有には前向きだ。

・JPX日経インデックス400

長期保有の恐さは、最悪その会社が潰れてしまうことだ。日本を代表する企業でさえ、潰れないまでも、長期保有で安心とは言い切れないのが悲しいところだ。

大手銀行、大手証券、最大手航空会社、最大手電力会社、大手メーカーと枚挙に暇がない。量的緩和で日本株全体が長期上昇トレンドに入ったとしても、たまたま出会ったその時の最優良銘柄が、5年後、10年後におかしくなっていないとは限らないのだ。

その点、日経平均株価やTOPIXに連動するETFは量的緩和の恩恵をそのまま受ける可能性が高い。これらは日銀が直接に買い入れる対象でもあるからだ。ここに、JPX日経インデックス400に連動するETFが加わる見通しとなった。

日本経済新聞は「日本銀行は今年から算出が始まったJPX日経インデックス400に連動するETFについて、市場流動性が高まれば買い入れ対象とすることを検討する。関係者への取材で明らかになった」と報道した。

「日銀が現在、量的・質的金融緩和政策の下で買い入れ対象としているETFは、日経平均株価とTOPIXに連動する2種類のみ。関係者によると、11月末に予定されているJPX日経インデックス400先物の上場後の取引の厚みや、同指数に連動したETFが市場で数多く組成されて市場流動性が十分増えた段階で、新たに買い入れ対象とするかどうかを検討する。」

JPX日経インデックス400は株価指数としては極めて異色だ。通常の株価指数は、市場全体を代表させたり、一部業種を代表させたりするもので、時価総額や流動性が選考基準となる。何かを代表させるのだから、中立に機械的に選ぶのが普通だ。

それに対し、JPX日経インデックス400は財務や収益など、ファンダメンタルズが比較的に良いものを選んでいる。特に海外の投資家にアピールすることを狙ったことが見て取れる。そして、銘柄入れ替えにより、常に「良い」ものをキープすることができるのだ。


○JPX日経インデックス400の概要(以下、全文引用)

名称 JPX日経インデックス400(JPX-Nikkei Index 400)
(略称:JPX日経400(JPX-Nikkei 400))
構成銘柄数 400銘柄
対象銘柄 東証上場銘柄 (市場第一部、市場第二部、マザーズ、JASDAQ)
銘柄選定及び
銘柄入替え方法 【選定基準】
以下の手順及び基準に従い、銘柄選定を行います。

(1)スクリーニング
① 適格基準によるスクリーニング
下記のいずれかに該当する場合は銘柄選定の対象としない。
・上場後3年未満(テクニカル上場を除く)
・過去3期いずれかの期で債務超過
・過去3期すべての期で営業赤字
・過去3期すべての期で最終赤字
・整理銘柄等に該当

② 市場流動性指標によるスクリーニング
上記を除く全対象銘柄の中から、以下の2項目を勘案し、上位1000銘柄を選定。
・直近3年間の売買代金
・選定基準日時点における時価総額

(2)定量的な指標によるスコアリング
(1)により選定した1000銘柄に対して、以下の各3項目にかかる順位に応じたスコアを付与します(1位:1000点~1000位:1点)。その後、各3項目のウェイトを加味した合計点によって総合スコア付けを行います。(ROEと営業利益はスコア付けに際しての取扱いあり)
・3年平均ROE:40%
・3年累積営業利益:40%
・選定基準日時点における時価総額:20%

(3)定性的な要素による加点
(2)のスコア付けの後、以下の3項目を勘案してスコアの加点を行います。
この加点は、(2)の定量的な指標によるスコアリングに対する補完的な位置づけです※。
・独立した社外取締役の選任(2人以上)
・IFRS採用(ピュアIFRSを想定)または採用を決定。
・決算情報英文資料のTDnet(英文資料配信サービス)を通じた開示
  ※(2)の総合スコアのみによって選定を行った場合との差異が最大でも
    10銘柄程度となるような加点規模です。

(4)構成銘柄の決定
(3)の加点の後、スコアが高い順に400銘柄を選定し、構成銘柄とします。

【バッファルール】
前年度採用銘柄に優先採用ルールを設けます。

【銘柄入替え】
毎年6月最終営業日を選定基準日とし、毎年8月最終営業日に銘柄定期入替えを実施します。
算出方法 浮動株調整時価総額加重型(1.5%キャップ付き)
算出開始予定日 平成26年1月6日(月)
東京証券取引所の相場報道システムからリアルタイム(1秒毎)で配信
起算日・基準値 平成25年8月30日・10,000ポイント
(全文引用ここまで)

参照:JPX日経インデックス400の狙い
http://www.tse.or.jp/market/topix/jpx_nikkei.html

参照:7月1日時点での採用銘柄は以下の400種
http://www.tse.or.jp/market/topix/b7gje6000003yz26-att/b7gje6000003yzsl.pdf


・投信残高、6月末83兆円5000億円と過去最高

公募投信の資産残高が6月末に約83兆6000億円と、昨年末の81兆5232億円から約2兆円増え、これまでで最高だったリーマン・ショック前の2007年10月の82兆1518億円を上回った。日経平均株価は今年に入り7%安だが、投資信託への資金流入が昨年7月からプラスで続いているためだ。

金融庁686の銀行や証券会社など全金融機関調査では、NISAを通じた個人投資家による株式などの購入額が3月末時点で1兆0034億円に達した。日本証券業協会による証券会社経由のNISA投資額は6080億円だった。総口座数は650万3951で1月の制度開始時から37%増えた。

商品別では、投資信託が6212億円、個別上場株式投資は3645億円。ETFは91億円、REITは86億円だった。NISAを通じた投資が1~3月期と同ペースで続いた場合、2014年年間では4兆円が投信や株式市場に流れ込む。

NISAの非課税枠は年100万円以内1回切り。4兆円となると最少で400万人が投資することになる。NISAを個人が自分自身で将来のために積み立てる株式投資枠だと考えると、非課税枠はもっと大きくていい。

投信で最も買われているのは、信用力が低く金利が高い米国企業の社債などに投資するジャンク債ファンド、米国REITファンドなど、利回りこそ比較的高めだが、為替、信用、価格変動リスクが最も高いとされるハイリスクものだ。日本の個人投資家は今年に入っても日本株を売り続けているが、決してハイリスクが嫌いとは言えないかと思う。

・投資信託とETF

それにしても、NISAにおけるETFは、投信の1.5%でしかない。もっとも、商品の品揃えが違うので、単純には比較できないが、それにしてもETFの認知度は低い。米国の株式投資信託であるミューチュアルファンドは主に個人投資家の投資対象とされる。一方、株式ETFは主に機関投資家の投資対象とされ、規模は相応に大きなものだ。

投資信託協会のホームページでは、投資信託を以下のように説明している。

(引用ここから)
「投資信託(ファンド)」とは、一言でいえば「投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品で、その運用成果が投資家それぞれの投資額に応じて分配される仕組みの金融商品」です。「集めた資金をどのような対象に投資するか」は、投資信託ごとの運用方針に基づき専門家が行います。

投資信託の運用成績は市場環境などによって変動します。投資信託の購入後に、投資信託の運用がうまくいって利益が得られることもあれば、運用がうまくいかず投資した額を下回って、損をすることもあります。このように、投資信託の運用によって生じた損益は、それぞれの投資額に応じてすべて投資家に帰属します。

つまり、投資信託は元本が保証されている金融商品ではありません。この点は銀行の預金などとは違うところですので注意が必要です。
(引用ここまで)
参照:投資信託ってなんだろう?
http://www.toushin.or.jp/investmenttrust/about/what/

一方、ETFは以下の通りだ。

(引用ここから)
ETFとは、証券取引所に上場し、株価指数などに代表される指標への連動を目指す投資信託で、「Exchange Traded Funds」の頭文字をとりETFと呼ばれています。

たとえば、ETFの代表的な商品として、「東証株価指数(TOPIX)」に連動するETFがあります。TOPIXとは、東京証券取引所によって発表される、東証第1部の全銘柄の動きを反映した株価指数のこと。このTOPIXに連動するETFは、TOPIXの値動きとほぼ同じ値動きをするように運用されます。つまりこのETFを保有することで、TOPIX全体に投資を行っているのとほぼ同じ効果が得られます。

なお一部、投資信託の仕組みを用いていない商品や、日本の法律ではなく外国の法律に基づいて組成された外国籍ETFも、日本の市場に上場していますが、それらも総称してETFと呼ばれることがあります。
(引用ここまで)
参照:ETFの仕組み
http://www.toushin.or.jp/investmenttrust/etf/scheme/


・投資信託とETFのコスト

(引用:投資信託のコスト)
ここでは、投資家が投資信託の取引を行う際に、どのようなコストを負担するのかをみていきます。

まず、投資信託を購入する際、投資家は販売会社に「販売手数料」を支払います。
加えて、運用期間中は信託財産から間接的に「信託報酬」が差し引かれます。これは運用にかかる費用、運用報告書の作成費や発送費、資産の保管のための費用などをまかなうもので、運用会社・販売会社・信託銀行の3者で配分されます。
さらに信託財産からは、「監査報酬」「売買委託手数料」などの費用が差し引かれます。また、換金時に「信託財産留保額」がかかるファンドもあります。

投資信託を取引する際に、どのような費用を投資家が負担するかについては、目論見書などで確認することができます。投資家が投資信託を取引する上で、いくらコストが発生するのか知ることは、とても重要なことですので、しっかりとご確認ください。

投資信託の費用の一覧

販売手数料:購入時に販売会社に支払う費用。申込価額の数%をその費用として支払います(まれに換金時に支払うこともあります)。ファンドや販売会社によってはこの費用がない場合もあります (ノーロード) 。

信託報酬:投資信託を保有している間、投資信託の保有額に応じて日々支払う費用。年率でいくら支払うのか、目論見書などに記載されています。

監査報酬:投資信託は原則決算ごとに、監査法人などから監査を受ける必要があり、その監査に要する費用。

売買委託手数料:投資信託が投資する株式や債券を売買する際に発生する費用。発生の都度、間接的に徴収されます。運用の結果発生する費用ですので、事前にいくらかかるのか示すことはできません。

信託財産留保額:換金する投資家から見れば換金する際に支払う費用で、換金に要した費用に相当します。投資信託によってはこのお金がない場合もあります。
その他、上記の費用以外にも、それぞれの投資信託において発生する費用があります。詳しくは目論見書などでご確認ください。
(引用ここまで)
参照:コストと税金
http://www.toushin.or.jp/investmenttrust/costtax/cost/

(引用:ETFのコスト)
ETFを購入・売却する際、投資家は証券会社に「売買手数料」を支払います。この手数料は、ETFが定めている手数料ではなく、証券会社が定め、徴収する手数料です。株式を証券会社で売買すると、売買手数料がかかりますが、それと同じ手数料です。

ETFが徴収する費用には、「信託報酬」や「監査報酬」があり、信託財産から間接的に支払われています。

ETFの費用の一覧

売買手数料:購入時及び売却時に証券会社に支払う費用。

信託報酬:投資信託を保有している間、投資信託の保有額に応じて日々支払う費用。年率でいくら支払うのか、目論見書などに記載されています。

監査報酬:投資信託は原則決算ごとに、監査法人などから監査を受ける必要があり、その監査に要する費用。

また、証券取引所に上場するために必要になる「上場に関する費用」や、連動させる指数の商標を使用するための「指数の商標使用料」などもかかります。

その他、それぞれの投資信託において発生する費用があります。詳しくは、目論見書などで確認してください。
(引用ここまで)
参照:コストと税金
http://www.toushin.or.jp/investmenttrust/etf/costtax/

これらの比較は、「詳しくは、目論見書などで確認してください」となるので、はっきりしない。

しかし、一般的な例としては、100万円を購入、10年間保有した場合の手数料比較というものがあった。
ETF(国内):販売手数料=1000円、信託報酬=年0.2%、合計=21000円
インデックス投信:販売手数料=0%、信託報酬=年0.5%、合計=50000円
参照:手数料比較
http://www.index-toushin.com/2008/09/vsetf.html

私は、JPX日経インデックス400のETFが、NISAに最も適した投資対象だと見ている。

配信元: みんかぶ株式コラム