楽観禁物も、現状での“下攻め期待”はナンセンス…!?

著者:武市佳史
投稿:2017/04/11 10:59

◆根強いリスク回避志向 - 一時111円半ばへ上昇も、再び軟化

※ご注意:予想期間は4月12日と表示されていますが、本日(4月11日)の東京・欧州・NY市場の値動きを想定した記述となります。


後退したかに見えたリスク回避(地政学的リスク)姿勢でしたが、依然として根強いものがあります。

昨日は“シリア動静”に加えて、「米空母が南太平洋に配備」「北朝鮮国境付近に中国軍が集結(こちらはあくまでも噂)」との報をキッカケに緊張感が高まりました。
米雇用統計に続き、米労働市場情勢指数が悪かった(0.4、前月比-1.1)ことも、ドル売りを促したと見られるところです。
NYタイム中盤以降はドル売りが優勢となり、米10年国債利回りが2.34%台へと低下すると、ユーロドルは1.06ドル台を回復、そして一時111円半ばへ戻していたドル円は再び110円後半へと押し戻されていきました。

なお昨日は「米経済は非常に健全」「緩やかな利上げが適切」とのイエレンFRB議長発言もありましたが、「バランスシート縮小」への言及がなかったこともあり、大きな反応は見られませんでした。

◆ただし地政学的リスクは“瞬発力”こそ大きいものの…?

“地政学的リスクに要警戒”というマーケット環境ですので、“積極的なポジション形成”は手控えられる可能性が高そうです。
ただ地政学的リスクは“瞬発力”こそ大きいものの、“持続力”はそれほどでもありません。
このため“急落⇒落ち着くとすぐに買い戻し”という特有のフローを描くのが常です。
一方で米金融政策は着々と歩を進めており、押したところは“金利選好のドル買いニーズ”が入りやすくなってきています。
“年金絡みのドル買い”のみならず、新年度入りを背景に“生保の米国債買い”も散見されており、吸収し切るのはそう簡単ではありません。

◆新たなリスク回避要因が跳び出さない限り…!?

もちろんリスク回避姿勢は“全ての材料をなぎ倒す破壊力”を秘めていますので、楽観は禁物です。
しかし地政学的リスクは“発生(勃発)時は下値を窺う要因”となるものの、それ以外は“上値を押さえる要因”でしかありません。
…にもかかわらず、「いつ飛び出すかわからない」という類を背景に下攻めを期待するのはナンセンス。

オーダー状況を見ると、“110.20-109.90円のドル買い”“111.50-70円のドル売り”がガッチリと固める中、“110.60-40円のドル買い”“110.90-121.10円のドル売り”がその間に展開しています。
新たなリスク回避要因が発生しない限り、前記した“レンジ内での揺れ動きは続く”と考えたいところです。

◆ドル円 抵抗・支持ライン

上値5:111.584(4/3高値、4/10高値)
上値4:111.444(20日移動平均線、ピボット1stレジスタンス)
上値3:111.314(週足・一目均衡表先行スパン上限)
上値2:111.202(4/10高値後の61.8%戻し、日足・一目均衡表基準線)
上値1:111.089(4/10高値後の50%戻し)
前営業日終値:110.903
下値1:110.785(4/10安値)
下値2:110.678(4/7~4/10の61.8%押し、ピボット1stサポート)
下値3:110.467(4/7~4/10の76.4%押し)
下値4:110.286(200週移動平均線、ピボット2ndサポート)
下値5:110.104(3/27-28安値、4/7安値)

※ユーロ円やユーロドルなど、他の通貨ペアの抵抗・支持ラインは〔マーケット・チェック15分Webセミナー〕にて公開。

11:11 ドル円 抵抗・支持ライン追加
武市佳史
株式会社マネーパートナーズ チーフアナリスト
配信元: 達人の予想