「弱気形状が継続、上昇局面は戻り売りポイント」

著者:黒岩泰
投稿:2016/07/09 10:04

「いよいよ参院選、まさかの与党敗北なら・・・」

 金曜日の日経平均は169.26円安の15106.98円で取引を終了した。朝方は堅調スタートとなったものの、買い戻し一巡後は上値の重い展開。後場に入ってからは徐々に下落幅を拡大し、結局はほぼ安値圏で終了した。基本的に買い手掛かり材料が乏しかったほか、その後に米雇用統計の発表を控えている。新興市場の一角に暴落するものもあり、投資家心理が徐々に冷え込んでいった。
 日経平均の日足チャートでは、上影陰線が出現。上方の窓(15434.46円-15602.73円)を拒否する動きとなっており、典型的な「軸下向き」の形状となっている。上方の窓を埋めなければ、かなり大きく軸は下向きに傾いていることになる。もし、下値支持線である15000円付近を明確に割り込めば、一気に下落スピードが加速する恐れもある。

 ただ、日経平均15000円のラインは、前回、年金資金の投入などで何とか買い支えた水準。ある意味、政府による「防衛ライン」でもあり、簡単に割り込むことはできない。年金資金の買い余力も数兆円程度残っていると思われ、株式保有比率を調整する名目で、このラインを死守してくることだろう。なので、15000円が壁として機能することになる。

 しかし、この壁はあくまでも「一時的な壁」である。「窓・壁・軸理論」でいえば、「テクニカルの壁」であり、中長期的に影響が及ぶものではない。一時的な下値支持帯にはなるものの、いずれは消滅する運命。ダムは決壊することになる。なので、売り方は特に気にする必要のない壁となる。軸の傾きが下である以上、着実に売りポジションを積み上げ、来たるべき「セリング・クライマックス」まで待てば良い。特に小難しいことをする必要もなく、弱気形状の銘柄を順次売って行けば良いのだ。

 足元の米10年物国債利回りは、ブレグジット・ショック以降、低下が続いている。全世界的に国債利回りが低下しており、中央銀行に対する金融緩和期待が根強い。

 本来ならば、米国は利下げではなく、利上げの可能性が高い国であった。しかし、足元では長期金利が「利下げ」を示唆しており、米利上げ観測は急速に後退している。これではドル・円相場も円高に向かわざるを得ないというものだ。いずれ1ドル=100円の節目を明確に割り込み、1ドル=90円台に突っ込むことになるのだろう。もちろん日本株は円高に弱いため、日経平均は1円の円高で300円~400円程度下落することになる。先の日銀短観では企業の想定為替レートは1ドル=111円付近。さらなる円高で企業業績の悪化がより鮮明になるということだ。

 そして明後日はいよいよ参院選である。相変わらずマスコミは都知事選の候補者ばかり追っかけているが、本日にいたっては石田純一氏の出馬が話題となっていた。私から言わせれば、「その前に参院選だろ!」といった感じである。
 もし、今回の参院選で与党が改憲勢力である3分の2を確保することになれば、憲法改正へと動くことが確実視されている。日本を戦争のできる国に、そして場合によって基本的人権を蔑ろにする徴兵制などにも踏み込むかもしれない。当然、その先には「米国のための対中戦争」が視野に入っているわけだが、これは株価にとっては大きなマイナス要因。売り方にとっては願ってもいない悪材料だが、株式投資ができるのは命あってのもの。尖閣戦争なんて容認できるはずがない。
 もし、イカサマ世論調査の結果通り、与党が圧勝することになれば、それは株価にとってプラス要因だろう。なぜならば、「アベノミクスは信認された」ということになり、日銀によるさらなる金融緩和が期待できるからだ。

 逆に、与党が敗北することになれば、株価の急落は避けられない。国民は「アベノミクスにNOを突きつけた」ということになり、一連の株式・債券バブルは崩壊。海外勢を中心に一気に日本売りに傾く可能性が高い。もちろん、与党敗北の定義は難しい。それでも改選前より議席を減らすようであれば、それは「不信任」という認識で良いだろう。そのとき名実ともにアベノミクスは終焉を迎えることになる。もしかしたら、足元の株価の弱さは、その動きをいち早く察知したものかもしれない。

 なお、注目の米雇用統計は市場予想を上回る28.7万人増。NYダウは年初来高値を更新しており、週明けの日経平均は買い先行で始まりそう。ただ、チャートは依然として弱気形状であり、どうしても売りを浴びやすい。「絶好の戻り売りポイント」と認識したい。
黒岩泰
株式アナリスト
配信元: 達人の予想