円高警戒で売り優勢に、業績先行き見通しに不安感

著者:冨田康夫
投稿:2016/07/05 19:42

明日の東京株式市場見通し

 6日の東京株式市場は、外国為替市場での円相場の動向を気にしながらの神経質な推移となりそうだ。7月に入って1日、4日とほぼ102円台後半の狭いレンジで推移していた円相場が、きょうは101円台後半に上昇するなど円高・ドル安方向に進行しはじめたことに懸念が広がっている。買い手控え姿勢が強まるなかで、日経平均株価は続落となりそうだ。

 市場関係者からは「現在発表が続いている2月期決算の第1四半期(3~5月)の企業は小売り、外食、サービスなど内需系が多いため、比較的円高に伴うマイナス影響は少ないが、今月下旬から本格化する3月期決算会社の業績見通しには不安感がつきまとう」との見方が出ていた。

 5日の東京株式市場は、日経平均株価が前日比106円47銭安の1万5669円33銭と7日ぶりに反落した。東証1部の売買高は、15億7847万株と連日で今年の最低を更新するなど、薄商いが際立った。

5日の動意株

 免疫生物研究所<4570>=後場ストップ高。
この日正午ごろ、アルツハイマー病特有のアミロイドβ立体構造に特異的な抗体を開発したと発表しており、これを好材料視した買いが入っている。今回の開発は、京都大学農学研究科入江一浩教授、千葉大学大学院清水孝彦准教授、および京都府立医科大学大学院医学研究科徳田隆彦医学研究教授らとの研究グループと共同で、アルツハイマー病(AD)の原因物質と考えられているアミロイドβタンパク質(Aβ42)において、神経細胞に対して毒性を持ちやすい立体構造を標的とする抗体「24B3」を開発し、その成果が英国の学術誌「Scientific Reports」に掲載されたというもの。

 トリドール<3397>=後場一段高で新値追い。
同社はきょう、6月度の月次売上高を発表。全業態の既存店売上高は前年同月比8.7%増となり、前月の伸び率(5.3%増)から拡大したことが好感されているようだ。主力の丸亀製麺の既存店売上高は同9.2%増(5月は5.8%増)と堅調に推移。公式アプリをリニューアルし、限定クーポンの無料配信など販促を強化したことで、客数が5月の1.9%増から9.3%増と大きく伸びたことなどが寄与した。

 日本エンタープライズ<4829>=急騰。
同社子会社の会津ラボは4日、日産自動車<7201>と共同で電気自動車をドローンへの給電設備として活用する仕組みを開発し、業務用ドローンへの実用を検証する取り組みを開始したと発表。これが材料視されているようだ。具体的には、会津ラボが会津大学と共同で開発を進めているドローン制御技術「Dronet」を搭載した有線型ドローンを、日産自の「e-NV200」の電源プラグに接続。「e-NV200」の離発着基地からドローンを離陸させ、一定の作業後に帰還させる仕組みを開発する。

 前沢工業<6489>=急伸。
同社は4日の取引終了後、集計中の16年5月期の連結業績について、売上高が288億円から288億3300万円(前の期比0.7%減)へ、営業利益が6億2000万円から8億7300万円(同23.7%増)へ、純利益が1億1000万円から4億4200万円(同12.5%減)へ上振れて着地したようだと発表しており、これを好感した買いが入っている。JV(共同企業体)物件で決算が確定し利益が向上したことに加えて、継続して行ってきた原価低減や経費削減努力で、想定以上の効果があったことなどが要因としている。

 アクセルマーク<3624>=ストップ高。
同社は4日、対戦RPG「ワールドクロスサーガ ―時と少女と鏡の扉―」が300万ダウンロードを突破したと発表。業績への寄与などが期待されているようだ。このゲームは今年4月15日から配信を開始し、6月30日には初の大型アップデートを完了。きょうからは、最強ユーザーを決定するワクサガ最高峰のオンラインバトルリーグ「ワールドクロスリーグ」が開始される。

 グラファイトデザイン<7847>=ストップ高。
きょう日本経済新聞が「ジャパンドローンズ(軽井沢町)は従来の小型無人機(ドローン)より10倍の距離を航行できる垂直離着陸機を開発した」と報じた。記事のなかでエンルート(埼玉県ふじみ野市)が機体を製作したとされており、エンルートにドローン機体のフレーム部品を供給しているグラファイトDに思惑買いが流入しているようだ。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想