業績見通し底堅い電線大手各社に注目

著者:冨田康夫
投稿:2016/06/21 12:52

<話題の焦点>

 世界的な景気後退懸念や、外国為替市場での急速な円高進行で、輸出関連の製造業を中心に業績見通しに不安が取りざたされるなか、堅調な需要動向を背景に電線製造各社の業績の底堅さに注目してみたい。

 電線の需要は、自動車用ワイヤーハーネス(電線の集合部品)や、フレキシブル配線板(FPC)、海外需要や無電柱化など情報通信関連向け、半導体製造関連部品などの各部門で順調な需要拡大が見込まれている。

 電線業界トップの住友電気工業<5802>は、主力のワイヤーハーネスの需要が今期も高水準で推移する見通し。FPCはやや波乱含みも、中国軸に光ファイバーの続伸が予想される。さらに、前期伸び悩んだ電力ケーブルは改善する見通しだ。また、日新電機<6641>住友電設<1949>の上場2社の好業績も貢献する。

 古河電気工業<5801>は17年3月期の連結業績を、売上高こそ8600億円(前期比1.7%減)と小幅減益予想ながら、経常利益は255億円(同36.3%増)と見込む。さらに、自動車用ワイヤーハーネスや、子会社古河電池<6937>でのハイブリッド車やアイドリングストップ車向け鉛蓄電池の販売好調が予想される電装・エレクトロニクス部門の伸びが牽引役となる。

 フジクラ<5803>は5月に、21年3月期までを対象とした5カ年中期計画を発表した。前回計画を継承しながら、高い収益力と新規事業創出の加速によって成長を図る。エネルギー・情報通信、エレクトロニクス事業など柱とする分野への投資を重視する。数値目標は、売上高を16年3月期実績の6785億円から3割増の9000億円に伸ばし、営業利益率7%以上(16年3月期実績4.8%)、ROE10%以上(同5.2%)と営業利益率を重視し、収益性の向上を目指す。成長に向けた重点施策としては、戦略的に重要な顧客の深耕、新規事業創出の加速、オープンイノベーション、経営改革・事業構造改革の4点を掲げた。

 昭和電線ホールディングス<5805>は5月に、19年3月期までの3カ年を対象とした中期経営計画を発表。構造改革と成長分野への取り組み強化で16年3月期に14億6000万円の赤字だった経常損益を20億円の黒字に浮上させ、約35億円分の損益改善を目指す。構造改革では事業会社の再編や組織のスリム化などを実施。成長分野では建設・電販向けを中心とする電線材事業を基盤に自動車や鉄道、道路関連の分野に経営資源を投下する。

 13年に旧日立電線と合併し、電線材料カンパニーを新設した日立金属<5486>は、5月31日、中国における鉄道用電線事業の強化を目的に、新たに独自技術を用いた鉄道・産業用ケーブル製造ラインを導入し、17年3月期上期から量産開始すると発表した。同社電線材料事業では、本製造ラインの導入をはじめとする成長戦略の実行で、19年3月期までに鉄道分野における売上収益を、16年3月期の90億円から140億円へと拡大させる方針だ。日立金属は、電線材料事業の成長ドライバーの一つとして鉄道分野を位置付けており、中核的な市場である中国事業を伸長させ、製品競争力を高めることにより、鉄道用電線事業をグローバルに強化していく。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想