円高進行警戒し下値模索、企業業績の下方修正を懸念

著者:冨田康夫
投稿:2016/06/16 19:24

明日の東京株式市場見通し

 17日の東京株式市場は、きょう午後3時以降に外国為替市場で1ドル=103円台半ばまで円高・ドル安が進行していることなどから、日経平均株価は下値模索の展開が続きそうだ。

 円相場が1ドル=103円台半ばと、2014年8月以来約1年10カ月ぶりの円高・ドル安水準となってきた。輸出関連の主力企業の多くは、17年3月期の想定為替レートを1ドル=110円としており、現状の円相場が持続すると、今期の業績予想が大きく下方修正されかねない状態となってきた。

 中堅証券の投資情報部からは「市場関係者の多くが、日米の金融政策決定イベントについて“現状維持”と予想し、実際にその通りになったにもかかわらず、外国為替市場で想定以上の円高・ドル安が進行し、それを嫌気して日経平均株価が急落したことでサプライズが増幅したようだ。来週23日に英国の欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票が控えているのを念頭に、投機筋が“円買い・日本株売り”のプログラム売買を仕掛けたのではないか」との見方も出ている。

 16日の東京株式市場は、徐々に下落幅を広げる推移で前場を終了。後場に入ると一気に下げが加速し、一時前日比500円超の下げを見せる場面もあった、日経平均株価終値は、前日比485円44銭安の1万5434円14銭と急反落し、2月12日以来約4カ月ぶりの安値水準となった。

16日の動意株

 サイオステクノロジー<3744>=後場ストップ高。
同社は午後1時ごろ、発表を延期していた16年12月期の第1四半期(1~3月)連結決算について、売上高32億8100万円(前年同期比56.3%増)、営業利益2億2300万円(同8.6倍)、純利益1億2900万円(前年同期2900万円の赤字)と大幅営業増益で着地したと発表しており、これを好感した買いが入っている。前期に子会社化したキーポート・ソリューションズやProfit Cubeが寄与しアプリケーション事業が大幅に伸長したほか、主力のオープンシステム基盤事業の収益が改善したことが牽引役となった。

 インフォテリア<3853>=後場に入りストップ高。
きょう付の日経産業新聞で「テックビューロ(大阪市)は共同で、仮想通貨などの基盤技術である『ブロックチェーン』をマイクロファイナンス(低所得層向け金融サービス)に応用するミャンマーでの実証実験に成功した」と報じられたことを受けて、この日は朝方から買いが入っていたが、前引け後に会社側が正式に発表したことで、改めてこれを評価する動きとなっている。

 富士通コンポーネント<6719>=ストップ高。
同社は15日、車載用静電容量方式タッチパネルを開発したと発表。これが材料視されているようだ。この製品は、車載用タッチパネルに要求される高耐環境性に対応。16年下期から量産を開始する予定だとしている。

 生化学工業<4548>=急伸。
同社は15日取引終了後に、フェリング・ファーマシューティカルズ(スイス)と腰椎椎間板ヘルニア治療剤「SI-6603」の海外でのライセンスに関して基本合意書を締結したと発表。米国を中心とした海外での独占的な販売などのライセンス契約を両社で締結することを前提としたもので、正式契約は17年3月期上期中を予定している。

 森下仁丹<4524>=一時ストップ高。
同社は午前10時ごろ、アンジェス MG<4563>との間で、アンジェスが保有する子宮頸部前がん病変治療ワクチン(CIN治療ワクチン)の独占的開発・製造・販売に関する権利の許諾で基本合意したと発表しており、同社とアンジェス双方に買いが入っている。同ワクチンは東京大学大学院医学系研究科産婦人科学講座・川名敬准教授(東京大学医学部附属病院女性外科副科長)のグループにより、医師主導臨床研究として進められているもの。子宮頸部の前がん病変を退縮~消失させ、経口投与で子宮頸がんへの移行を回避できる世界初の治療ワクチンとして期待されている。

 インスペック<6656>=ストップ高。
同社は15日に16年4月期の決算説明会資料を公表。これを機に改めて成長期待などが高まっている。資料では、精密FPC(フレキシブルプリント配線板)が急成長するなか、同社製品の需要が拡大。また、ほかの分野でも、4K液晶TABテープ向け検査装置などの受注が増加していることを示した。なお、同社が10日に発表した中期経営計画では、19年4月期の連結営業利益目標7億5000万円(16年4月期実績は1900万円の赤字)を掲げている。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想