イベント控えの週末で見送り、円高進行懸念強まる

著者:冨田康夫
投稿:2016/06/09 20:48

明日の東京株式市場見通し

 10日の東京株式市場は、来週に相次ぐ日米の金融政策決定イベントを控えた週末とあって、一段と模様眺め気分が強まりそうだ。株価指数先物・オプション6月物の特別清算指数(SQ)算出で、朝方の売買代金は膨らむものの、その後は見送り商状となりそうだ。

 外国為替市場では、9日午後4時過ぎから円高・ドル安が一段と加速し、対ドル円相場は、前週末3日の米5月雇用統計発表直後の水準を突破して、一時1ドル=106円30銭近辺と、5月4日以来約1カ月ぶりの高水準となっている。

 市場関係者からは「日経平均株価の5日、25日、75日の3本の移動平均線がきょうの終値近辺で、ほぼ45円幅と極めて狭い範囲に集中しており、相場の煮詰まり感を表している」との見方が出ていた。

 9日の東京株式市場は、売り優勢で始まったものの、外国為替市場での円高・ドル安の進行を嫌気して次第安の展開となり、日経平均株価は一時、前日比243円安まで売り込まれる場面があった。ただ、後場後半は下げ渋りをみせ、終値は前日比162円51銭安の1万6668円41銭と3日ぶりの反落となった。

9日の動意株

 日新電機<6641>=急騰。
大和証券は8日、同社株のレーティングを新規「2(アウトパフォーム)」でカバレッジを開始した。有機ELディスプレー製造向けイオン注入装置が新たな成長のけん引役となると注目。また、中国超高圧送電プロジェクトでの受注獲得にも期待している。特に、同社はLTPS(低温ポリシリコン)液晶パネルの製造に不可欠なイオン注入装置で高シェアを誇っているが、有機ELディスプレーの画素を駆動する回路にはLTPS液晶パネルと同様にイオン注入装置が使用される見通し。同証券では、イオン注入装置が主力製品のビーム・真空応用事業の売上高の大幅な伸びを予想。業績も17年3月期の連結営業利益は161億円(前期比30%増)、18年3月期は181億円と連続最高益を見込んでいる。

 エンバイオ・ホールディングス<6092>=一時ストップ高まで買われた。
中国国務院が5月28日に「土壌汚染対策行動計画」」(土十条)を発令したことを受けて、土壌汚染の調査や対策工事を手掛ける同社への関心が高まっているもよう。グループのアイ・エス・ソリューションは中国企業との合弁会社を通じて同国で土壌汚染ソリューションを提供しており、今後の活躍が期待されているようだ。

 Hamee<3134>=大幅高。
同社は8日の取引終了後、ランサーズ(東京都渋谷区)と業務提携することを発表、これを好感する動き。ランサーズの運営するEC事業者向けコンテンツマーケティングサービス「Propag」(プロパグ)を、Hameeの運営するEC事業者向け業務マネジメントプラットフォーム「ネクストエンジン」の新サービスとして提供することなどを含めて、EC事業者向けのコンテンツマーケティングサービス事業の運用・拡大で業務提携する。業務提携に関する具体的な内容については今後両社の協議によって決定する方針。

 ウイルプラスホールディングス<3538>=引け際に一段高。
同社は欧米自動車大手フィアット・クライスラーを中心に輸入車販売を手掛けているが、イタリアの運輸相が7日に「フィアット・クライスラーに排ガス不正はない」との判断を示したことが買い手掛かりとなっているもよう。状況次第では同社の販売にも影響を及ぼす可能性があっただけに、ひとまず安心感が広がっているようだ。

 サカタインクス<4633>=全般軟調地合いに逆行して3日続伸。
食品包装用インキが会社側の想定を上回って好調に推移しており、16年1~3月期の営業利益は25億5400万円と前年同期を約3割上回る水準。「新興国では経済成長に合わせて食品の個別包装向けニーズが高まる傾向にあり、同社の業績に追い風となっている」(市場関係者)という。時価はPER12倍弱と株価指標面からも割安感がある。

 プリマハム<2281>=年初来高値を更新。
いちよし経済研究所では、旗艦ブランド「香燻」を軸にハム・ソーセージの拡大が続いていると指摘。17年3月期は3期ぶりに過去最高営業利益を更新すると予想。17年3月期営業利益予想を88億円から96億円(会社計画は90億円)に引き上げている。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想