売り買い拮抗でもみあい、売買代金の乏しさに警戒感

著者:冨田康夫
投稿:2016/06/07 18:46

明日の東京株式市場見通し

 8日の東京株式市場では、手掛かり材料不足のなか、売り買いが拮抗する地合いとなりそうだ。日経平均株価は小幅なレンジでのもみあいが予想される。前週末の米雇用統計ショックで急速に進行した円高が一服状態にあることを好感して、輸出関連の主力銘柄を中心に買い戻しが継続している。

 市場関係者からは「日経平均株価がきょうの終値で、25日移動平均線(1万6628円=7日)と75日移動平均線(1万6614円=同)の両線を上回ったことは評価できる。ただ、東証1部の売買代金はきょうで3日連続2兆円を割り込む薄商いとなっており、不安感を抱えた相場からの脱却には時間がかかりそうだ」との見方が出ていた。

 7日の東京株式市場は、海外株高や原油価格上昇、外国為替市場での円高一服を受けて買いが先行する展開となったものの、市場エネルギーの乏しいなか上値を買い進む動きは限定的だった。日経平均株価終値は、前日比95円42銭高の1万6675円45銭と反発。東証1部の売買代金は1兆7798億円にとどまった。

7日の動意株

 アキュセラ<4589>=10日ぶりに大幅反発。
5月26日早朝に、ドライ型加齢黄斑変性治療薬候補「エミクススタト塩酸塩」の臨床第2b/3相試験で有効性を示すことができなかったと発表し、株価は暴落。この日、株価が反発すれば終値ベースでは暴落後、初となる。株式市場でiPS関連株が脚光を浴び、バイオ株に物色のホコ先が向かったことも同社株には追い風となった様子だ。

 竹内製作所<6432>=急反発。
小型建機メーカーで欧米を中心に売上高の98%を海外で占め、為替動向が同社の収益に与える影響は大きい。外国為替市場では、前日のイエレンFRB議長の講演で、緩やかな利上げ方針を維持する考えが示されたことでドルが買い戻され、足もと1ドル=107円台後半の推移と円安傾向に振れており、つれて同社株も買い戻される流れとなった。同社の17年2月期の想定為替レートは1ドル=107円で設定、実勢はそれよりやや円安水準にある。

 コロプラ<3668>=3連騰。
引き続き3日に配信を開始したスマートフォン向け新作アクションRPG「ドラゴンプロジェクト」(通称ドラプロ)の滑り出し好調を好材料視した買いが入っている。「ドラプロ」は、仲間と気軽に楽しめるアクション性の高いRPG。6日午前の時点では、iPhone版、Android版ともに無料ゲームランキングでトップとなっており、事前登録者数20万人を突破するなど期待の高いタイトルだったが、前評判に違わぬスタートが評価されているようだ。

 ピジョン<7956>=急騰。
同社は6日取引終了後、17年1月期の第1四半期(2~4月)連結決算を発表し、売上高は227億4600万円(前年同期比4.3%増)、営業利益は37億3200万円(同3.8%増)と増収増益だったことが好材料視されている。為替レートが1ドル=115円35銭(前年同期119円15銭)、1元=17円60銭(同19円08銭)と円高になった影響で海外事業は苦戦した。ただ、国内ベビー・ママ事業は哺乳びん、乳首、ベビーカーカテゴリーの伸長に加え、訪日外国人観光客のインバウンド消費で拡大し、業績を牽引した。

 フォーシーズホールディングス<3726>=一時ストップ高。
同社は6日取引終了後に、子会社のクレイトン・ダイナミクスにおける取引の実態および不正の有無などを含めた調査について、外部調査委員会から不正行為はなかったとの報告を受けたと発表。これが買い手掛かりとなっているようだ。同社は調査結果を踏まえ、回収に遅延が生じているクレイトン・ダイナミクスの一部の売掛金に係る貸倒引当金の見積もりを行い、確定次第速やかに公表するとコメント。

 リプロセル<4978>=ストップ高。
理化学研究所などが6日、他人のiPS細胞から育てた細胞を目の難病患者に移植する臨床研究を始めると発表したことを受けて、iPS細胞関連銘柄の一角として物色人気が波及しているもようだ。また、6日の取引終了後、英国の連結子会社2社を合併させるとあわせて発表しており、グループ再編に伴う収益力強化にも期待が高まっているようだ。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想